盛り上がりを見せるインバウンド事業 現状と課題について

最近よく耳にする「インバウンド」という言葉。この言葉は、海外から日本国内に旅行などでやってくる人のことを指します。インバウンド客をターゲットにしたインバウンド事業は、現在成功のチャンスが大きい分野と言われています。インバウンド事業の事例や課題について触れていきます。

インバウンド事業とは

インバウンド対応

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インバウンドとは、英語の「Inbound」が由来です。単語の意味は「外から内に向かう」「内向きの」といった意味で、日本では海外からやってくる人を指す言葉として使われています。このような訪日旅行者をターゲットにした事業を「インバウンド事業」と呼びます。

今、日本ではあらゆるビジネスでインバウンド対応が必要とされています。少子高齢化により日本国内の消費者が減少しているため、インバウンド客の消費を増やすことが日本経済を救うと期待されているのです。

観光庁の調査によると、2013年の時点では、年間で14167億円だったインバウンド消費額が、2019年は上半期だけで24326億円に達しています。わずか6年の間にこんなに伸びているのですね。

また、インバウンド客の1/4を占めるのが中国から来る人々です。それだけ消費額も大きく、インバウンド事業を成功させるには中国の人々に特にアピールすることが重要といわれています。

観光業界での様々なインバウンド事業

忍者

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それでは現在、どのようなインバウンド事業があるのでしょうか。事例を見ていきましょう。

外国人向け体験プログラム

全国各所で、外国人向けの体験プログラムを考案する自治体が増えています。

東京都の西多摩エリアでは、130年前に建てられた武家屋敷を活用した「忍者体験」コースでインバウンド客を呼び込んでいます。忍者の衣装を着て、手裏剣や吹き矢を体験します。単なるコスプレで終わらず、忍者について深く学べることが人気の理由です。

この西多摩エリアの取り組みに限らず、忍者を観光資源にしようという動きは全国に広まっています。伊賀、甲賀や小田原など、忍者ゆかりの地を通訳ガイド付きで巡るインバウンド客向けのパッケージツアーも始まっています。

また、和紙の紙すき体験やそば打ち体験など、日本の特産品を作る体験ツアーも人気です。

やはり今、旅行のトレンドは「見る」ことではなく「体験すること」なのでしょう。日本でしかできない体験を織り込んだインバウンド向けのツアーは、これからも増えていきそうですね。

温泉にインバウンド客を呼び込む

インバウンド客には、温泉に入ることを楽しみにやってくる人が多いです。日本が誇るべき温泉文化をもっと広めるため、積極的に海外へのプロモーションを行っている温泉地があります。

兵庫県豊岡市にある城崎温泉は、国際的な旅行イベントに出展したり、海外の旅行会社にアピールするなどの方法で海外での知名度を上げました。そのうえで、外国語に対応した宿泊予約サイトを設け、インバウンド客を増やしたのです。

また、体験型の消費や、日本らしい街並み、日本らしいコミュニケーションなど、インバウンド客のニーズをしっかり把握したサービスを提供していることも成功要因です。

今では豊岡市のインバウンド客のうち、なんと9割が城崎温泉を訪れるほどの人気スポットに発展しました。

小売業での免税販売

数年前、中国人インバウンド客による「爆買い」が話題になりました。今でも日本で大量に買い物をして行くインバウンド客は多いです。

日本製のモノは品質が良く、安心なので購入するということもありますが、もっと大きな理由は日本の免税制度にあります。観光庁のデータによると、日本全国の免税店の数は2012年時点で4173店舗でしたが、2019年には50198店舗まで増えています。7年間で12倍もの数になっているのですね。

この急激な増加の背景には、2014年に施行された、免税対象品の拡大があります。これまでの日本の免税制度は、1店舗での購入金額が1万円以上で免除の対象とされていました。そこに、消耗品は5000円以上で対象になるという、別枠が設けられたのです。

この改正によって、化粧品や食料品が以前よりもインバウンド客に売れるようになり、免税店が増えました。

今、インバウンド客を狙った小売店を経営するのであれば、免税販売をすることは必須と言っても過言ではありません。免税店になるには、税務署への申請が必要です。まずは国土交通省のHPなどを参考に、申請について調べてみてはいかがでしょうか。

参照:免税店の店舗数について/観光庁

参照:免税販売の許可について/国土交通省

インバウンド事業成功の鍵は?

無料wifi

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インバウンド事業を成功の鍵は、現代のテクノロジーを有効に活用することです。

  • SNSを活用 多言語で情報を発信する
  • ホームページを多言語化する
  • 無料wifiを提供する

成功したインバウンド事業の多くは、上記のような取り組みを行っています。

府をあげてのインバウンド誘致を成功させた大阪府には、無料wifiが利用できるスポットが多数あります。

また、SNSで企業のアカウントを取得し、常に最新の情報を発信し続けることも重要です。多言語で情報を発信したことにより、インバウンド客の人気スポットとなったカフェの事例もあります。

インバウンド事業という新しい取り組みには、やはり新しいテクノロジーを使ったPRがマッチするのですね。

インバウンド事業が抱える課題

大荷物

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ここ数年の間で、急激に活発になったインバウンド事業。新しいことを始めれば、新しい課題に直面するものです。今、インバウンド事業が抱える課題はどのようなことなのでしょうか。

宿泊施設の人材不足

2020年の東京オリンピック開催が決定した当初、ホテルの客室数が不足することが懸念されていました。それに対処すべく、新しい宿泊施設の建設ラッシュが続いています。

客室が不足する懸念は大幅に緩和されたそうですが、もっと深刻な問題は宿泊施設の人材の不足です。インバウンド誘致よって宿泊客数が増加しても、宿泊施設の就業者数は横ばいの状態が続いています。

東京オリンピック開催前の2019年時点でも、人手不足に悩む宿泊施設が多数あります。この課題を解決するために、AIやロボットの導入が進んでいます。顔認証システムや、自動チェックイン機を使って、人間の仕事を減らすことで対処するのですね。

労働環境を改善し、人材確保に力を入れる取り組みもあります。

また、空き家や空き部屋を個人的に貸し出す「民泊」も、東京オリンピック期間中の救世主になり得ると言われています。基本的には部屋を貸すだけのサービスなので、人手が無くても運営できる点がメリットです。

観光客の荷物の輸送

海外旅行の際は、どうしても大荷物になってしまいますよね。身軽に観光するためにはまず、どこかに荷物を預け無ければなりません。

コインロッカーを利用したり、いったんホテルに荷物だけ預けに行く人が多いのではないでしょうか。しかし、インバウンド客の増加によってコインロッカーは不足しているのが現状です。また、ホテルに荷物を預けに行くとなると観光を楽しむ時間が減り、消費金額も少なくなってしまいます。

この課題を解決するために、異業種の企業同士が協力し合う輸送事業が開始されました。空港のカウンターで荷物をあずかって、その日のうちに宿泊先のホテルに届けるというサービスです。旅行会社、運送会社、電化製品メーカーがそれぞれのテクノロジーを持って歩み寄ることで実現されたサービスですね。

このサービスによって、大きな荷物を抱えて公共交通機関に乗るインバウンド客が減り、混雑が緩和されるというメリットもあります。

従来のサービスだけでは対応が難しくなっている現在の旅行業界では、この事例のように異業種間での協力が、ますます必要になるのではないでしょうか。

リピーターの確保

国内消費が冷え込む日本の経済を活性化させるには、今後も継続してインバウンド客を得ていかなければなりません。そのためには、繰り返し日本を訪れるリピーターが必要です。

リピーターとして訪れたインバウンド客は、初めて日本に来るインバウンド客よりも滞在日数が長く、消費金額が大きい傾向があるのです。

現時点でも日本旅行に対する満足度は高く、リピーターも増えている状況です。この状況からより伸ばしていくためには、地方の魅力を積極的にアピールすることが有効です。

訪日旅行者は初回は東京や大阪などの大都市を訪問し、2回目、3回目となると地方に行くことが多いのです。地方の経済活性化のためにも、動画などをうまく使って魅力をアピールして行きましょう。

インバウンド事業の今後の展望

招き猫

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大きな盛り上がりを見せるインバウンド事業。今後はどのような展望が見込まれるのでしょうか。

ひとつの節目となりそうなイベントは、2020年の東京オリンピックです。現在、オリンピック開催でさらに増加が見込まれるインバウンド客の対応のため、宿泊施設やレジャー施設がどんどん増えています。これらはオリンピックの終了後に破綻するのではないか?という懸念の声も出ています。

しかしながら、世界各国のオリンピック開催地は、閉幕後に大きくインバウンド客が増えたという観光庁のデータがあります。オリンピック開催と連動して都市のPRを行った結果、イメージがアップして客足が伸びたのですね。

日本でも東京オリンピックを通してさまざまな魅力を発信しています。菜食主義の人でも美味しく食べられる和食や、健康増進効果が期待できる温泉などは特に大きなアピールポイントです。

また、人気アニメのキャラクターを、東京オリンピックの公式ライセンス商品にデザインするなど、サブカルチャーの発信も行っています。

オリンピック後にはこのような日本文化がさらに世界に広がり、開催前よりもむしろ増えるのではないかと言われています。

参照:オリンピック後のインバウンド客増加について/過去のオリンピック・パラリンピックにおける観光の状況

インバウンド事業に求められる人材

採用面接

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インバウンド事業に従事するには、外国語やプロトコール・マナーを身に着けることが必要ですが、求められている人物像は、それだけではありません。

インバウンド事業で活躍するには、積極性と柔軟性を持つことが重要です。文化の違う相手と接するということは、マニュアル通りに行かないことだらけです。

分らない外国語で話しかけられたときにどうするか、どのようなサービスを提供すればより快適に過ごしてもらえるかを自ら考え、行動に移せる人は力を発揮できることでしょう。

現在、ホテルや飲食店などの接客サービスはもちろん、ツアー企画者や外国人向けのホームページ作成など、さまざまなインバウンド事業で人材が求められています。インバウンド事業専門の就職支援サービスもあるようなので、興味のある方はチェックしてみてはいかがでしょうか。

日本の未来を輝かせるインバウンド事業

日の出

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インバウンド事業は、少子高齢化の現代の日本において経済を活性化させるための大きな役割を担っています。日本には、まだまだアピールできることがたくさんあるはず。ぜひ、隠れた魅力を掘り起こし、インバウンド事業の資源にしていきたいですね。

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