関係人口とは

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「関係人口」とは、移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域や地域の人々と多様に関わる人々のことを指します。※総務省より引用
日本ではずっと東京一極集中の状態が続いており、人が増え続けにぎわう都心部と、少子高齢化が進み疲弊する地方との二極化が問題視されて久しいです。こうした状況の中で国は、地方を活性化させる取り組みとして地方創生を掲げています。
地方創生の施策としては、移住・定住の促進がもっとも代表的な例と言えるでしょう。「定住人口」つまりそのまちに住む人を増やすことを地方創生の核ととらえ、それを受けて全国各地の自治体がさまざまなシティプロモーションを行っています。
一方で、地方創生を後押しする「観光まちづくり」も注目されています。ねらいは、まちに訪れる観光客を増やし、経済そしてまち自体の活性化につなげたいというもの。観光目的で訪れる人を「交流人口」と呼び、定住人口と同様に重要視されています。
しかし昨今、定住人口とも交流人口とも違う「関係人口」が注目を集めるようになってきました。国が2019年に示した「まち・ひと・しごと創生基本方針2019」でも、地方へのひと・資金の流れを強化する目的において、関係人口の創出・拡大を重要な取り組みの1つとして位置づけられています。
出典:内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局「まち・ひと・しごと創生基本方針2019について」
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関係人口は5つの属性に分かれる

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「定住」でも「交流」でもないけれど、その地域に深く関わる人を「関係人口」という。と言われても、ちょっとイメージが湧きにくいと感じるかもしれませんね。
実は政府では、関係人口を5つの属性に分けて定義しています。
- 関係深化型(ゆかり型)
- 関係深化型(ふるさと納税型)
- 関係創出型
- 視野拡大型
- 視野拡大(外国人)型
細かい分類はありますが大きく分けると、「その地域に何らかのルーツがある」「これからその地域と関わりを持とうとしている」の2種類と言えそうです。ちなみに「ルーツがある」というのは、例えば、
- 祖父母がそこに住んでいて、子どもの頃よく行った
- 以前通勤・通学・居住していた
などが挙げられます。
この関係人口と地域との関係性を、「現状の地域との関わり」と「地域との関わりへの想い」とで分類した図が「関係人口ポータルサイト」に掲載されています。
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関係人口と一緒に取り組む地方創生の例

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「関係人口ポータルサイト」には、関係人口と一緒に取り組む地方創生の例が多数掲載されています。
例えば北海道上士幌町では、ふるさと納税をきっかけに関係人口を増やす取り組みを進めています。まず「クラウドファンディング型ふるさと納税」を実施し、継続的に上士幌町と繋がりを持つ寄附者を募ります。
町は寄附者に対して、首都圏で開催する交流イベントや移住体験モニターに招待する「リターン」を用意する、というものです。
同じく北海道の夕張市は、人口減少率が日本一、少子高齢化による集落の衰退が進んでいると言われるまちです。そのような中で新しいコミュニティを作るべく考えられたのが、歴史・文化の継承を目的とした「みんなでつくる夕張の記憶ミュージアム」。
夕張に関わりのある人から投稿された懐かしい写真を年代・地区ごとに分類し、バーチャル博物館を構築する取り組みです。
関係人口を増やすには、まずファン作りから

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地方創生、関係人口の創出・拡大といったとき、地域側はつい「外からやってきた人が地方の課題を解決し、助けてくれる」と考えてしまいがちです。しかしこの考え方こそが、地方の活性化を妨げる要因になっています。
関係人口にもいろいろな属性があり、一人ひとりの考え方・想いの強さにはばらつきがあります。地方への移住や地域との関わりに興味を持つ人の全員が、地方創生にも興味を持っているとは限らないことを知っておかねばなりません。
中には、「まちの特産品が大好きなので、そのまちの活動に関わっている」人だっているでしょう。そうした人は、結果的に地方創生に貢献しているだけであって、地方創生のために関係人口になってくれたわけではありません。
これを踏まえると、関係人口の創出・拡大するためにはまず、そのまちに人を惹きつける魅力がなければならないことがわかります。
魅力に惹かれて人が集まり、まちを好きになってもらい、結果的に地域の活性化に貢献してもらう。ファンマーケティングにもつながるこのサイクルが、地方創生には欠かせません。
アイドルのファンを見てもわかる通り、熱狂的なファンは対象を「応援したい」「もっと有名にしてあげたい」という強い思いを持っています。これを地方創生にも活かすことが大切です。
ファンを作るには、まず「give(ギブ)」から。まちに来てくれる人を楽しませる、喜ばせることを第一に考えることが、結果的に関係人口の創出につながるでしょう。