産業観光とは

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産業観光とは農業、モノづくりの現場を見学・体験できるレジャーで、下記のような取り組みがります。
・工場の見学
・発電所や浄水場、ダムなどの見学
・農業、漁業の体験
・企業の資料館などの見学
・鉱山跡地の見学
・食品メーカーのテーマパーク
これらを通して、モノづくりの心に触れるのが産業観光の目的です。
産業観光の歴史と現状

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ここでは、産業観光の歴史と現在の取り組みについて説明します。
負のイメージの強かった工場や鉱山跡を活用
昭和30年代から40年代の日本では、工場の排気や廃液、鉱毒による公害が深刻でした。戦後の経済復旧のための生産拡大を優先し、汚染物質を除去するための設備投資が不充分だったのです。そのため、水や空気の汚染による病人が多発し、工場や鉱山には悪いイメージが染みついていました。
昭和50年代に入ると、経済成長が安定し、公害問題について法制度が整い、工場などでも対策ががなされて次第に公害問題は収束していきます。
そして今、かつて深刻な問題を引き起こしていたモノづくりの現場は、産業観光に積極的に取り組んでいます。実際に稼働している工場で使用される材料、品質点検を行う様子を見ると、安心して商品を購入することができるでしょう。
鉱山についても、跡地を利用したテーマパークが全国各地にあります。砂金取り体験や、謎解きゲームなどのお楽しみ要素を備えながらも、採掘中に出た犠牲者や公害問題などの歴史も学べる施設になっています。
成功の鍵を握るのは行政と企業の協力
産業観光で街が賑わえば、地域の経済も活性化します。そのため、イベントで必要な機材の無料貸し出しや、貸し切りバスの利用料金の助成などの支援を行っている自治体もあります。また、産業観光の資源となる企業を誘致し、流出を防ぐために法人事業税を軽減するなどの措置が取られることもあるそうです。
そして、企業側も行政からの依頼を受けて工房を見学可能にしたり、価値のある所蔵品を展示するなどの工夫で、人通りの少なかった商店街が活性化したという事例があります。
産業観光は、行政にとっても企業にとってもメリットのある取り組みですね。双方の協力が成功の鍵を握っているのです。
東海地方では特に盛んな産業観光

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全国各所でさまざまな産業観光が取り組まれていますが、古くからモノづくりで栄えた東海地方では特に盛んです。ここでは東海地方のモノづくりの歴史と、現在の産業観光について説明します。
愛知県を中心としたモノづくりの歴史
愛知県は、日本列島の中央に位置し、河川にも恵まれた土地です。流通に便利で、江戸時代に名古屋城が建設されたことで職人が集まりました。尾張七宝やつげ櫛、和菓子などが生産され、全国各所に届けられたそうです。
明治時代に入ると、東海道線が全開通し、電気も通って紡績所が設立されます。その後、時計やミシンのメーカー、のちに世界的な陶磁器ブランドとなる企業が立ち上がり、製造業が拡大していきます。
大正時代には日本を代表する自動車メーカーのひとつである企業の前身や、大きな鉄工所などもできました。また、航空機の製造も大正時代に始まります。当時の航空機は基本的に木製で、名古屋には木材が潤沢にあり、加工技術も発達していたため製造地に選ばれたのだそうです。
そして昭和11年、ついに自動車の生産が始まります。その後は電力不足や戦争による甚大な被害、オイルショックなど、順風満帆な時期ばかりではありませんでした。しかし、さまざまな苦難を乗り越え、昭和41年に販売された自動車が大ヒットします。この時代は高速道路の開通などの道路整備が行われ、自家用車への関心が高まっていたそうです。
やがてこのメーカーの自動車は世界各国でも販売されるようになり、今では愛知県を中心とする産業の要を担う企業に発展しました。本社のある豊田市は「企業城下町」と言われています。
現在の東海地方の産業観光
現在の東海地方には100を超える産業観光スポットがあります。
豊田市の自動車工場では団体でも1名でも組み立ての工程を見学できます。また、静岡県浜松市には予約不要で見学できるお菓子工場があります。アクセス良好な立地なので旅の隙間時間に立ち寄ってみるのも良いですね。
その他、老舗のお茶屋さんが経営するカフェや、電気事業者の体験型施設など、東海地方全域に渡って多種多様な産業観光施設があります。
全国各地の人気産業観光スポットを紹介

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全国に多数ある産業観光地。ここでは、人気ランキングの上位に入ったスポットの概要を紹介します。
宮城県のウィスキー工場
仙台市の中心部からアクセス良好な場所にあるウィスキー工場では、随時無料の工場見学ツアーを行っています。
ウィスキーを蒸留している様子や、樽の中で熟成されている様子を見学し、最後にウィスキーの無料試飲もあります。ウィスキーの製造工程や、工場の歴史を学んだあとに飲むウィスキーはきっと格別でしょう。ソフトドリンクも用意されているので家族で行っても楽しめますね。
また、このウィスキー工場は周囲の自然美を活かした設計がされており、景観が良いことも特長です。
愛知県の陶器メーカー本社
愛知県は自動車メーカーのイメージが強いですが、世界的に有名な陶磁器のメーカーの本社もあります。この企業では本社の一部を陶磁器の製造の見学や絵付け体験ができる工房や、企業の歴史を学べる資料館などにして一般公開しています。
カフェやレストラン、限定アイテムが購入できるショップもあり1日中楽しめる産業観光施設です。
福岡県のビール工場
大人の社会見学の場として特に人気が高いのはビール工場です。中でも福岡県にあるビール工場は、ビール造りの工程や企業の歴史について、非常にわかりやすく説明してくれるガイド付きツアーがあります。
そしてツアーの最後にはできたての生ビールを試飲できるお楽しみが付いています。口コミによると、できたての生ビールは3杯までいただけるそうです。
福島県のお人形工場
福島県の小さな町には、日本で一番売れている着せ替え人形の工場があります。お人形の夢の世界を表現したお城の形の工場で、お人形作りの工程が見学できます。
また、過去に販売されたお人形やドールハウスなどの関連商品も展示されています。お子様も大喜びのスポットですが、ここは日本中のドールファンの聖地でもあるのです。お人形本体と服・靴や帽子を数種類の中から選んでオリジナルのコーディネートを作る体験もできますので、童心に帰って着せ替え遊びを楽しんでみてはいかがでしょうか。
売店ではおもちゃ屋さんには並ばない髪型や、ウィンクをしている表情、そしてボーイフレンド人形とは別の男の子のお人形など、珍しいお人形が販売されているのも見どころです。
千葉県のしょうゆ工場
千葉県には1645年から続く、歴史あるしょうゆ工場があります。しょうゆは古くから日本の食卓に欠かせない調味料でしたが、今やフランス料理の隠し味にも使われるほど世界に広がっています。
この工場では、麹やもろみなどが、日を追うごとに変化していく様子のサンプルが見学できます。また、自分が大桶の中に入っているような映像で、しょうゆづくりの過程を学べるバーチャル体験もあります。
自分でおせんべいを焼き、しょうゆをつけて食べられるコーナーやしょうゆソフトクリームも好評だそうです。
工場見学で貰える嬉しいお土産

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工場見学が人気になっている理由のひとつに、お土産を貰えるという点があります。ここでは、どんなお土産が配布されているのかを紹介します。
有名メーカーの商品詰め合わせ
有名なお菓子や、洗剤などの日用品のメーカーでは、自社製品の詰め合わせをお土産に貰えることがあります。トータルで1000円以上しそうな豪華なセットを貰って驚いた、という口コミも多数見受けられました。
楽しく見学した上にたくさんのお土産まで貰えるのはお得ですね。
見学しないと手に入らない限定品
見学をした人だけが入手できる、下記のような限定品をお土産としている企業もあります。
・マスコットキャラクターのストラップや文房具など
・限定フレーバーのお菓子
・ミニチュアサイズの商品
誰もが知っている有名企業の物だったりすると人目を引いて話題の種になりますね。特に嬉しいおみやげではないでしょうか。
その場で食べる手作り・できたてフード
食品工場ではこのタイプも多いです。焼き上がったばかりのおせんべいやクッキー。自分のオリジナルのトッピングをほどこしたアイスクリームなど、その場でしか味わえない楽しみです。
静岡県浜松市にある、有名なパイの工場では、焼き立てアツアツのパイが食べられるツアーが人気だそうです。
産業観光の魅力とは

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産業観光は、モノづくりの工程や歴史を楽しみながら学べます。
単なるレジャーとして行くのではなく、作り手の熟練された技術や情熱を感じ取り、自分にとってプラスの体験となれば素晴らしいですね。