ホテル業にもある労働組合とはなんのための組織?
労働組合とは、労働者が連帯して労働環境の改善を目指した活動を、公然と行うための組織です。
日本においては、企業内で結成される「企業別組合」がもっともポピュラーな労働組合です。所属する企業に対して賃上げや雇用人数の増加、雇用の継続といった要望を申し入れて交渉を行い、時には手段のひとつとしてストライキに踏み切ることもあります。
従業員という弱い立場であっても、集団で力を合わせることでより働きやすい職場へと変えるための要望を出しやすくなるのですね。
企業別組合の他、同一産業に従事する労働者で結成される「産業別組合」や、職業や職種を問わず、すべての労働者を組織対象とする「一般組合」といった組織も存在しています。
組織の形態はさまざまですが、労働環境の改善を目的に結成、活動が行われることは共通しています。
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労働組合を結成するにはどうすればいい?
労働組合は雇い主と労働者が、対等な交渉をするための労働組合ですが、結成するにはどのような段階を踏めばよいのでしょうか。ステップごとに確認していきましょう。
結成準備
労働組合を結成しようと決めたら、さっそく準備に取り掛かりましょう。企業組合の場合は従業員2名から結成することが可能ですが、人数が多いほど会社との交渉は有利になります。そのため、過半数の従業員が加入する組織となることが望ましいですね。
勤務時間を避けて、信頼できる人物から順に勧誘活動を進めましょう。そして強い組織にするため、会社の情報収集も必要です。主な株主や財務状況などの他、社長の趣味趣向や役員の力関係なども把握しておくと、組合の活動に役立つことがあります。
また、結成準備の段階で要求事項を整理して活動方針や役員を誰にするかなどの原案を作っておきましょう。
結成大会の開催
ある程度メンバーが集まったら、結成大会を開きます。結成大会は、労働組合が発足する重要な集会なので、メンバーの気持ちをひとつにする演出を工夫し、士気を高めましょう。
ここで原案をもとに、メンバー同士で話し合って正式な活動方針や役員・予算・組合の細かなルールなどを決定します。
結成通告と団体交渉の申し入れ
結成大会を終えたら、労働組合ができたことを企業に通告します。通告後は企業側も、労働組合に対応するための策を練ります。この時点で素早く動き、企業側の体制が整う前に、さらに加入者を増やして力を付けることが望まれます。
ここまで来ればもう、集団交渉ができる段階です。不必要な争いに発展しないよう、紳士的な態度で業務改善の主張にあたりましょう。
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ホテル業の労働組合活動事例
ホテル業においても多くの企業別組合が存在し、活発に活動しています。あるホテルの労働組合の活動によって、非正規社員の待遇が大幅に改善した事例があります。
非正規社員から正社員になれる道が始めから用意されておらず、賃金の差が大きかったホテルにおいて、労働組合が何年にもわたってホテルと交渉を続けた結果、正社員登用制度ができ、賃金の差も減りました。
その分、正社員の年収がダウンするなどの条件もありましたが、最終的には双方が納得できる着地点が見つかったのですね。他のホテルの労働組合でも賃上げや休日の増加、非正規社員へ家族手当の制度の新設などを要求し、活動が行われています。
また、東日本・西日本にそれぞれ宿泊業や旅行業界の労働組合が加盟する連合会が存在しています。お互いの活動の支援や、定期的な勉強会、意見交換会などが開催されている模様です。
ホテルで労働組合を作る必要性
労働者の権利を主張するための労働組合は、どんな企業においても大切な存在ですが、ホテル業界ではとりわけ重要と言えるのではないでしょうか。
働き方改革の推進で改善の兆しは見られるものの、ホテル業界は慢性的な人手不足で、長時間労働など、過酷な労働環境になりがちですよね。従業員同士で協力し、権利を主張することは、事業の健全な存続のために必要なものなのです。
「労働組合=企業の敵」と考える人も居ますが、従業員の満足度を高めるための交渉は、企業にとっても有益なことです。
ホテルへの就職は労働組合の有無も検討材料にしよう
一般的な会社員よりも重労働になりがちなホテル業界への就職を考える際は、労働組合の有無も検討材料のひとつにすると良いですね。
労働組合が公然と活動をしている企業は、従業員の権利について、真面目に考えている可能性が高いためです。また、働き始めて困りごとがあった時、相談に乗ってくれる組織があるのは心強いことです。
もちろん、労働組合の有無だけでは企業の体質を把握することはできませんが、ひとつの目安になるのではないでしょうか。