宿泊業界のDX化を考えよう
DXとは「デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)」の略語です。デジタル技術を用いて社会や生活のスタイルを変えることを「DX化」と称します。
似た言葉に「IT化」がありますが、こちらはデジタル技術で業務などの効率化を図ることを意味します。一方、DX化はデジタル技術でビジネスモデルやサービスなどを生み出すことを指す言葉。この違いを覚えておきましょう。
人と人との触れ合いを重んじる宿泊業界においても、DX化が進められています。宿泊施設のDX化によってもたらされるメリットや、課題点を見ていきましょう。
宿泊業界でDX化が進んでいる例についても紹介します。
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宿泊業界がDX化するメリット4選
宿泊業界がDX化を進めることによって、施設やお客様にさまざまなメリットがもたらされます。詳しく見ていきましょう。
人手不足をカバーできる
人手不足は、宿泊業界における大きな課題です。もともと離職率が高い上に、少子高齢化によって労働人口が減少していることによって、今後はさらに深刻化するのではないでしょうか。
しかし、DX化が進めば、人が担当する仕事の量を減らしたり、作業にかかる時間を短縮したりといったことができます。少ない人数で現場を回せるようになるでしょう。
人手不足をカバーすることで、サービスの質を高めることも期待できます。
新しい顧客体験を提供できる
新しいテクノロジーに触れることは、お客様にとっても興味深いことです。DX化が進んだホテルへの滞在は、アクティビティとして面白いのではないでしょうか。
実際に、ロボットが対応する無人ホテルや、フロントや客室の備品としてロボット型スマートフォンを配置したホテルなどが注目を集めています。
ミスや効率の低下を防げる
客室の空き状況や備品・消耗品などの在庫、顧客情報の管理もDX化できます。
発注数を間違えたり、お客様情報を間違えて登録したりといったヒューマンエラーが起こらないため、むだな出費や修正作業の発生を防げます。
また、デジタル技術は故障などのトラブルがない限り、常に同じクオリティで仕事ができることも特徴。疲れやモチベーションダウンによって、仕事の効率が下がることがない点は、経営者にとって大きなメリットではないでしょうか。
感染症対策として有効
新型コロナウイルスに関する厳しい行動制限が解除されても、感染リスクそのものがなくなったわけではありません。
宿泊業界にとって感染症は特に大きな脅威ですが、DX化は感染拡大防止策として有効です。お客様とスタッフの接触を減らすことはもちろん、リアルタイムで混雑状況を分析し、入場制限を設けるなどの工夫にいかすこともできるでしょう。
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宿泊業界のDX化が抱える課題とは?
宿泊業界のDX化にはさまざまなメリットがある一方で、乗り越えなければならない課題もあります。どのような課題があるのか、具体的に見ていきましょう。
セキュリティ面の懸念がある
DX化に用いるツールは、インターネットにつながっていることがほとんどです。しっかりとセキュリティ対策をしていても、ハッキングされるリスクはゼロではありません。
また、DX化が進むほど人間のスタッフは少なくなると考えられます。施設内でトラブルが発生した時や、DXツールが故障した時などに、対応できる人間のスタッフ数が少ない点も、お客様にとっては不安材料のひとつでしょう。
客層に合わないことがある
高級ホテルを利用するお客様は、人間のスタッフによる心のこもったおもてなしを期待しています。「DX化によって便利でスマートな滞在ができる」というだけでは味気なく、使いどころを見極めなければ顧客離れにつながるかもしれません。
また、機械の操作が苦手な人もいれば、科学技術に怖ろしさを感じたり、無機質なものに嫌悪感を抱いたりする人もいるでしょう。
不満の原因になることもある
2023年時点において、DXツールはまだ「なんでもできる」というレベルには達していません。人間の仕事を完全にカバーすることは難しいでしょう。
たとえばAIによるチャット対応は「よくある質問」に回答することはできますが、ピンポイントで聞きたいことには答えてもらえず、役に立たないことが少なくありません。
また、コールセンターに電話した際などは、自動音声による受付ガイダンスが長く、お客様を苛立たせることも。
快適な顧客体験のために導入したDXツールが、不満の原因になることもあるのですね。
導入コストがかかる
DX化を進めることで人件費を抑えたり、時間を効率的に使ったりすることができます。長い目で見ればコスト削減に役立ちますが、導入時には多額の費用がかかるケースもあります。
経営状況が厳しい施設などはDX化に対応できず、時代に取り残されてしまうかもしれません。
宿泊業界で進んでいるDX化の例
メリットも課題もある宿泊業界のDX化ですが、2023年時点ではどのような業務をDX化できるのでしょうか。代表的なDX化の例を紹介します。
チェックイン・チェックアウト
チェックイン・チェックアウトは、ビジネスホテルやカプセルホテルなどを中心にDX化が進んでいます。
無人でチェックイン・チェックアウトの手続きやカードキーの発行、清算といったことができる機械は、すでになじみ深いものになりつつあります。
フロントスタッフの業務負担を軽減し、お客様の待ち時間を削減することに有効なツールと言えるでしょう。
客室の鍵
「客室の鍵」はホテルにとってもお客様にとっても煩わしいものではないでしょうか。お客様は滞在中の紛失に注意が必要で、ホテルは日頃から適切に管理しなければなりません。何かとトラブルのもとになりやすいアイテムですが、そうした問題を解消するのがスマートキーです。
スマートキーは、スマートフォンをかざしたり、チェックイン時に発行したワンタイムキーを入力したりすることでロックを解除できるシステムです。物理的な鍵がないため、紛失などのトラブルを避けられるでしょう。
多言語化
インバウンド客の獲得に力を入れているホテルでは、多言語化にDXを用いる場合があります。
自動翻訳機を導入したり、多言語対応のタブレットを設置したりするなど、バイリンガル・トリリンガルのスタッフがいなくても、最低限の対応ができるように備えているのですね。
国際的なお客様対応は、宿泊業界にとって重要な課題です。DXを取り入れることで、ハードルが下がるのではないでしょうか。
ルームサービス
ルームサービスやレストランサービスにおいても、DX化が進んでいます。
ルームサービスは客室から内線電話を使って注文することが一般的ですが、客室備え付けのタブレットで注文を受け付けているケースも見受けられます。ホテルによっては配膳ロボットが客室の前まで料理を運んでくることも。
また、ルームサービスの提供にドローンの活用を検討しているホテルもあるということです。
宿泊業界はDX化で大きく変わるかもしれない
宿泊業界は長い間「人によるサービス」が当然とされてきた業界です。それゆえに、長時間勤務などの過酷な労働環境が問題になっているのではないでしょうか。DX化の課題点をうまくカバーし、メリットを引き出す使い方をすれば、宿泊業界全体が大きく変わるかもしれません。
今回の記事を参考に、宿泊業界におけるDX化を考えてみてくださいね。なお、ホテル・旅館の仕事を探す際には、おもてなしHRをご活用ください。