ユニバーサルツーリズムとは
ユニバーサルツーリズムとは、すべての人が楽しめるよう創られた旅行です。高齢や障がい等の有無にかかわらず、誰もが気兼ねなく参加できる旅行を目指しています。
2000年代から、政府はユニバーサルツーリズムに関する検討を続けています。2020年には東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催されることもあり、ますますの普及・促進を図っている状況です。
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ユニバーサルツーリズムの効果とは
ユニバーサルツーリズムの普及・促進によって、観光客数の増加が見込めます。日本の観光業界の現状として、
- ・少子高齢化により国内旅行数は今後減少が見込まれている
- ・インバウンドによる観光立国を目指していること
この2点が挙げられます。ユニバーサルツーリズム対策を進めることで、この現状を打破できる可能性が高まるのです。
では、なぜユニバーサルツーリズムが観光客増加につながるのか。その理由を説明しましょう。
観光客増につながる理由1:ユニバーサルツーリズム対象者数が多い
ユニバーサルツーリズムの主な対象者である高齢者・障がい者・乳幼児は、実は国内人口の1/3を占めます。これだけ多くの人が、ゆっくり旅行を楽しめない状況に置かれているのです。
さらに、高齢者や障がい者を介護している家族、乳幼児を育てる保護者も同様に、自由に旅行するのは難しいのが実情でしょう。
ユニバーサルツーリズム対策によりこれらの人々がもっと自由に旅行できるようになれば、大きなシェアを獲得できます。
観光客増につながる理由2:おもてなし意識が高い印象を持たれる
日本では、まだまだユニバーサルツーリズムの取り組みが広まっていません。だからこそ率先して取り組むことで、「観光客目線に立っている」「高品質なおもてなしができる」といったプラスのイメージを持たれやすくなります。
良いイメージのある観光地には、おのずと人が集まりますよね。ユニバーサルツーリズムを推進した結果、ユニバーサルツーリズム対象者だけでなく一般の観光客も増加する好循環が生まれます。
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ユニバーサルツーリズムの課題
ユニバーサルツーリズムというと、どうしても真っ先に思い浮かぶのがハード面でのバリアフリー化。しかし施設内の段差をすべてなくすなど、大がかりな工事が必要な対応はすぐには難しいですよね。
結果的に、「うちのホテル・旅館でユニバーサルツーリズムは無理だ」と決めつけてしまう施設が多いのです。こうした思い込みが、ユニバーサルツーリズムの普及を妨げている大きな要因になっています。
しかし実際には、大規模な工事や莫大な費用をかけなくてもできる対策はいくらでもあります。ではホテルや旅館の場合、比較的簡単に導入できるユニバーサルツーリズム対策はなんでしょうか。
ローコストで!ホテル・旅館でできるユニバーサルツーリズム対策
あまり手間をかけなくとも取り入れられる、ユニバーサルツーリズム対策を紹介します。ホテルや旅館で導入することで、お客様満足度がぐんとアップするはずです。
車いすの貸し出しサービス
普段から車いすを使うほどではないけれど、長い距離を歩くのは大変……そんな高齢者の方など向けに、車いすの貸し出しサービスを始めてはいかがでしょうか。
館内の移動はもちろん、ホテル・旅館の近場を散策するのに使えると喜ばれるはずです。
手すりの設置
段差や傾斜のついた場所などだけでも、手すりをつけると歩行がしやすくなります。必要なときだけ使用できる着脱式の手すりもあるので、客層に応じて設置を考えてみましょう。
拡大鏡を用意
視覚に障がいのある方や高齢の方でも新聞や雑誌、宿泊に伴う書類の文字が見やすいように、フロントや客室内に拡大鏡があると良いですね。
大きなイラストやロゴマークなどで見やすく
小さな文字が読み取りにくい人向けに、「段差あり」「すべりやすい」などの大切な情報はイラストやロゴマークで示すと安心です。これはインバウンド向け対策としても有効なので、積極的に活用していきましょう。
簡易ベッド
高齢の方や足の不自由な方の場合、布団に寝たり起き上がったりする動作が困難になります。そのため、全室和室で布団のみの旅館では、お客様の希望に応じて出し入れできる簡易ベッドを用意しておくと良いですね。
ハード面だけじゃない、ソフト面でもできる対策
ざっと挙げただけでも、比較的簡単に導入できるユニバーサルツーリズム対策がたくさんありましたね。しかし、ユニバーサルツーリズムとはハード面だけの話ではありません。もっと大切なのは、ソフト面の充実です。
例えば全館バリアフリーにしなくても、ホテル内のどこに段差があるのかを公式HPやSNSなどで細かく情報開示する。これも、ユニバーサルツーリズムの1つです。
介助者がいれば、完全バリアフリーでなくとも旅行を楽しめる人はたくさんいます。その他、足が不自由な人や高齢者向けに、ロビーのソファに座ったままでもチェックイン・アウトできるサービスを提供しても良さそうですね。
このように、費用をかけてハードの改修を行わなくても、ちょっとした工夫で対応できる部分は多いもの。むしろこれこそが、ホテル・旅館ならではのおもてなしと言えるのではないでしょうか。