顧客の囲い込み戦略とは?
誰しも、人生で1度は「ポイントカードはお持ちですか?」という言葉をかけられたことがあるでしょう。このポイントカードは、企業が顧客を囲い込むための最も有名な手法と言えます。
このように、顧客の囲い込みはリピーターを増やすため、リピーターのファン化を図るために、マーケティングにおいて重要な役割を持つ戦略のひとつです。
では、顧客の囲い込みを行うことにより、企業は具体的にどのようなメリットを享受することができるのでしょうか。また、他にはどのような戦略が取られているのでしょうか。
顧客の囲い込みについての理解を深め、自社のマーケティング活動に活かしてください。
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企業が顧客の囲い込みを行うメリット
顧客の囲い込みは、企業は様々なメリットをもたらします。一体どのようなメリットを受けることができるのでしょうか。主要となる3つのメリットをみていきましょう。
安定的に収益を確保できる
イタリアの経済学者・パレートは、「会社の売上の80%は、限られた20%の顧客から生み出されている」という統計モデルを提唱をしました。この考えは現代でもビジネスシーンで多く用いられ、「パレートの法則」「80:20の法則」としても知られています。
企業の存続・成長には安定した収益の確保が欠かせません。この安定成長の助力となるのが、約2割の既存顧客なのです。よって、顧客の囲い込みを上手く行うことができれば、安定的に収益が確保できる土台作りができると言えます。
新規顧客獲得よりも低コストで利益が出せる
企業が顧客の囲い込みを行う2つ目のメリットは、低コストで利益が出せるということでしょう。一説によると、新規顧客の獲得は既存顧客のリピートのコストの5~10倍とも言われているほどです。
多くの売上を作るまでに時間・コストがかかる新規顧客よりも、低コストで多くの利益を生み出してくれる既存顧客のフォローを手厚くする企業が多いのも頷けます。
顧客データの蓄積ができる
顧客の囲い込みの手段によっては、自社の顧客データを収集することができます。既存顧客の購入頻度・人気商品・年代や性別の分布などを継続的に収集しておくことで、変化に対し柔軟な対応が可能になりますよね。
マーケティング戦略においてデータの収集・分析は、客観的な戦略・戦術の立案に非常に重要な役割を持つことは言うまでもありません。データ収集を容易にする顧客の囲い込みは、企業にとって大きなメリットがあると言えます。
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顧客の囲い込み施策例
現行の顧客の囲い込み戦略には、どのようなものがあるのでしょうか。身近に感じることができる、顧客の囲い込みの施策例を4つご紹介します。
ポイントカード・アプリでのポイント還元
最も有名な顧客の囲い込み施策は、ポイントカードやアプリを用いたリピーター促進です。
多くの企業がポイントカード利用でのポイント還元や、アプリ利用でのポイント還元・クーポンの配布を行っており、カラオケや漫画喫茶など、一部の企業では利用の際に必ず会員登録を必須とするサービスも存在します。
ポイントカード・アプリは企業として手を出しやすい顧客の囲い込み戦略ではありますが、導入する企業が多いことにより、市場が飽和し、これまでのような効果を出す難易度が高くなっているため、新規参入時は注意が必要です。
クーポンの提供・配信
チラシやメルマガ、インターネットでの会員登録、一部アプリなどでクーポンの提供を行う企業もあります。これも、ポイントカード・アプリ同様、囲い込み戦略として打ち出す企業が多いものとして有名です。
マーケティングリサーチを行うある企業の調査によると、「限定」という言葉に影響を受け、商品を購入した経験があると回答した方は全体の約7~8割という結果となりました。なお、特に女性はこの傾向が強いようです。
「期間限定クーポン」「〇人限定クーポン」「会員限定クーポン」などにより消費者の購買意欲を高めるためには、未だに有効な囲い込み戦略と言えます。
セットでの販売
セット販売もまた、身近に感じられる顧客の囲い込み戦略事例のひとつです。
最もイメージしやすいのは、携帯電話のセット割引でしょう。携帯の機種代金を年単位の分割払いにし、基本料金の一部を割り引くことで機種代金の支払いが完了するまではキャリアを利用し続けてもらうというものです。
サブスクリプションで提供しているサービスもまた、メインで提供するサービスの他に付加価値的なサービスを乗せ、提供している事例も多く見受けられます。
会員限定特典の付与
コアなファン化を図るために取られる囲い込み戦略は、会員の限定特典が有名です。
人気商売で言うところの、ファンクラブ会員のみが手に入れられる限定グッズの販売や、ライブ・イベントの当選確率が向上するなどの特典の付与は、顧客の囲い込み戦略の典型と言えます。
受けられるメリットの価値が上がれば上がるほど会員は増えていき、顧客のロイヤルティが高まっていくため、囲い込みとしては非常に有効な手法と言えるでしょう。
マーケティングから見る顧客の囲い込み
身近でわかりやすい顧客の囲い込み戦略事例をご紹介しましたが、マーケティングの観点から見た場合、どのような手法・ツールを用いれば顧客の囲い込みができるのでしょうか。3つのマーケティング用語と活用例をご紹介します。
リードナーチャリング
マーケティング業界で言うリードとは、「これまでに獲得した見込み顧客」のことを指します。ナーチャリングとは英語で「育成すること」を指し、これが組み合わせった言葉であるリードナーチャリングは、「見込み客の育成」という意味を持つ言葉・手法となります。
最もわかりやすいものが、ダイレクトメール(DM)・メールマガジンなどによって顧客の購買意欲を高めるという手法です。また、SNS・オンラインセミナーなどで定期的に有益な情報発信をすることもリードナーチャリングと言えます。
マーケティングオートメーション(MA)と組み合わせることによって、より効果は高まるとされており、直接の訪問で営業を行わないインサイドセールスに注目が集まる現代において、営業を効率化するための最も重要なプロセスとされています。
CRM・SFA
CRMは顧客管理システム、SFAは営業支援ツールのことを言います。
リードナーチャリングによって育成された顧客を管理するのがCRMであり、その顧客情報を基に営業を行う営業部隊の成果を俗人化させないために、営業全体の案件管理などを行い、営業活動を支援する役割を果たすのがSFAです。
CRM・SFAにそれぞれお互いの機能を持たせ、システムを展開している企業もあります。営業活動の効率化に期待が持たれているため、「戦略的に顧客の囲い込みを行いたい」と考える企業は、導入を検討してみてはいかがでしょうか。
カスタマーサクセス
カスタマーサクセスは、直訳で「顧客の成功体験」という意味になるマーケティング用語です。主にサブスクリプション型のビジネスに対して使用される言葉であり、顧客に使いやすいと感じ続けてもらうことで解約率を下げ、利用を促進する役割を持ちます。
デジタル変革はますます加速の一途を辿っています。モノを所有しないことが望まれるトレンドが今後も続くようであれば、売り切り型のサービスはもはや旧式のビジネスと呼ばれる日が来るかもしれません。
売り切り型のサービスのみを提供している企業は、カスタマーサクセスなどの事例を参考に、自社でも取り入れられる手法を見つけることで、未来の売上を生み出すきっかけが得られる可能性もありますので、ぜひチェックしてみてくださいね。
ホテル・旅館の顧客の囲い込み戦略事例
ホテル・旅館などの宿泊業でも、顧客の囲い込みを行っている企業は存在します。実際に行われている3つの顧客囲い込みの成功事例をご紹介しますので、参考にしてみてください。
独自性のあるコンセプトで稼働率70%をキープ
全国でリゾートホテルを展開するホテルグループでは、各都道府県の地域特性が色濃く反映された客室・イベントを行い、未だ客室稼働率70%以上をキープしています。
観光庁の発表している全国の客室稼働率平均値50%以下と比較すると、この数値がいかに驚異的であるかがわかりますよね。
この数値を支えているのが、リピーターの存在です。リピート率は20%以上とも言われています。決して安価ではないものの、「また行きたい!」と思わせるコンセプト設計に非常に長けている、業界のカリスマ的存在のホテルグループと言えるでしょう。
ロビーグリーターの配置で生の声を収集
クレーマーであれば声を拾うのは容易ですが、小さい不満は表に出さずに飲み込むというお客様が大半です。そのようなお客様の声まで拾おうと考えたとあるホテルでは、ホテルの支配人がロビーに立ち、お客様に話しかけて名刺を渡す取り組みを行っています。
結果として、普段接することのないホテルの支配人を身近に感じてもらうことに繋がり、小さな不満がホテルに届くようになったようです。顧客との信頼関係を築き上げ、サービスに反映させる姿勢は、まさにおもてなしの心そのものと言える好事例です。
生ビールの販売でリピーター増
ビジネスホテルで行われているユニークな顧客の囲い込み事例としてご紹介するのが、生ビールの販売です。
一見そこまで多くのリピーターを獲得する未来は見えませんが、スポーツのテレビ中継が終わった後には客室から生ビールの注文が殺到し、結果として同ホテルのリピート率は平均6割を超えるようになったというのですから驚きですよね。
もちろん、取り組みはこればかりではありません。コインランドリーに並ばずに済む洗濯代行サービスや、夕食の出前サービスを行うことができたりと、お客様に寄り添ったサービスを続々と導入しているのです。
「また来たい」という仕掛けがたくさんある、お客様思いの素敵なホテルですよね。
顧客の囲い込み戦略で気を付けるポイント
顧客の囲い込み戦略を成功に導くためには、どのようなことに気を付けなければならないのでしょうか。気を付けるべきポイントを2つご紹介します。
高すぎる還元率を設定しない
多くのお客様を繋ぎとめるのに最も簡単な手法は、お客様へのメリットを大きくすることです。言い換えれば、現金のキャッシュバックや、ポイント付与など、お客様への高還元をたくさん行えば利用は増えること間違いありません。
しかし、あまりにも大きい還元を行ってしまえば、企業の存続が危ぶまれてしまう可能性が高まります。
実際に誰もが知っているであろう大手飲食チェーンや海外にも出店している世界的なアパレルチェーンでさえ、高還元を行いすぎたことにより、適切な利益の確保が難しくなったことでポイント還元を廃止したという事例もあります。
そのため、あまりにも背伸びをしたポイント還元は行わないよう注意してくださいね。
顧客の「囲い込まれたくない」心理を理解する
企業が顧客の囲い込みを上手く行うことができれば、安定的に収益を確保できる・低コストで売上を積み上げることができるなどのメリットを享受することができます。
しかし、メリットが大きいためどの企業でも似たような囲い込み戦略を取っていることを忘れてはなりません。ポイントカードは、その典型的な例ですよね。
企業が今後、顧客の囲い込み戦略を取る場合には顧客が「囲い込まれることに疲弊している」ということを踏まえたうえで策を講じる必要があります。
顧客自身で簡単に情報収集ができるようになった現代では、押し付けがましい囲い込みは嫌われていくことが予想されますので、あくまで決定権は顧客であるという視点を持ち、戦術を練るようにしましょう。
これからの顧客の囲い込みは「囲みすぎない意識」が重要!
顧客の囲い込みは、企業にとって有用な手法ではありますが、一方的なコミュニケーションは現代にそぐわないという意識は忘れてはなりません。マーケティングと言えど、大切なのはお客様に寄り添う気持ちが主軸になくては効果は見込めません。
よって、リードナーチャリング・MAなどを上手く活用しながら、あくまで顧客に寄り添う形と取り、お客様が「知らず知らずに囲われていた」という状態を目指すのが今後重要になると考えられます。自然に利用を訴求できる方法を突き詰めるようにしてくださいね。
ホテル・旅館などの宿泊業で顧客の囲い込みを行う場合も、一筋縄ではいきません。利用の主目的が「観光の間の宿泊」であれば、リピートを狙うということは難しいからです。顧客の囲い込みには技術が伴います。
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