ホテル・旅館が宿泊拒否できるケースとは?

最近では感染症蔓延の予防や、ひどい迷惑客が増加していることを受けて「宿泊拒否」を選択せざるを得ない場面が多くなってきているのではないでしょうか。しかし、サービス業である以上、相手はお客様。宿泊拒否の判断は非常に困難です。実際にそのような判断が迫られた場合、何を基準に決断すれば良いのか解説します。

事前に宿泊拒否で対応したほうが良い場合がある

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新型コロナウイルスによって従業員を含め、お客様が館内に入る際は体温を測るホテル・旅館がほとんどですよね。感染症の蔓延を防ぐため、37℃以上の熱があるお客様の宿泊を拒否するなどの対策に追われていることでしょう。

しかし、感染症の蔓延を予防する以外にも宿泊拒否の対応をとったほうが良いケースもあります。

近頃はカスタマーハラスメントを略して「カスハラ」と呼ばれる、お客様からの理不尽な言いがかりや暴言、暴力行為などが増加しています。ただのクレームとカスハラは異なり、カスハラは従業員や他のお客様の安心・安全が脅かされる可能性があるのです。

ホテル・旅館にやってくる泥酔客も無理に受け入れてしまえば、他のお客様の迷惑になる可能性があることため宿泊を拒否することができます。

不測の事態に備えて、どのようなお客様が宿泊拒否に該当するのかを考えていきましょう。

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宿泊拒否の判断はどうすればいい?

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宿泊拒否の判断基準は、旅館業法の第5条に明示されており、以下の場合は宿泊拒否をしても問題ないとされています。

(1)宿泊しようとする者が伝染病の疾病にかかっていると明らかに認められるとき

(2)宿泊しようとする者が賭博、その他の違法行為又は風紀を乱す行為をするおそれがあると認められるとき

(3)宿泊施設に余裕がないときその他都道府県が条例で定める事由があるとき

以上の3項目に該当するケースは宿泊拒否ができますが、ホテル・旅館によって法解釈もそれぞれ可能であるといっても過言ではありません。ですので、ホテル・旅館ごとの良識ある判断が求められます。

(3)に関しては、ホテル・旅館がある都道府県の条例ごとに内容が異なるので、それぞれの条例を確認してみましょう。

参照:旅館業法概要/厚生労働省

参照:旅館業法/厚生労働省

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ホテル・旅館側が宿泊拒否できるケース

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宿泊拒否をするといっても相手はお客様であることには変わりありません。宿泊拒否できる最低限のラインを紹介しますので、実際にホテル・旅館側が宿泊拒否できるケースをみていきましょう。

迷惑客

迷惑客を宿泊拒否するには、他のお客様の安心・安全を脅かすおそれがあるという前提が必要です。

不満を大声で叫んでいたり、他の宿泊客に迷惑をかける行為などを注意しても埒が明かない場合は、旅館業法の「風紀を乱す行為をするおそれがある」にあてはまるので、宿泊拒否をすることができます。

従業員に対して暴言や暴力行為などが見受けられる場合は、すぐに警察や弁護士に相談してください。

ペット同伴

ペットを同伴しているお客様を宿泊拒否できるかは、各都道府県の定める条例によっても異なります。

ただ、いくら訓練・しつけられていると言っても、家庭で飼われているペットです。全てのペットがしつけや衛生管理が徹底されているとは考えにくいでしょう。そのため、ホテル内の備品などに損害がでるリスクもあり、他のお客様の迷惑になるかもしれません。

いまでは、ペット同伴に対応できるよう設備を整え、ペット同伴を見越して営業しているホテル・旅館もあります。ですので、館内でペットの受け入れができそうになければ、宿泊を拒否しても支障はありませんよ。

反社会団体の構成員

反社会団体の構成員かどうか、事前に把握されているときもありますよね。その場合は、旅館業法の「違法行為又は風紀を乱す行為をするおそれがある」に該当するので、宿泊拒否を選択することは差し支えありません。

ただ、実際に宿泊拒否の理由を正直に話してしまうとトラブルが発生し、従業員やお客様に危害が及ぶことがあります。ですので、「客室がご予約で満室なので」という理由を伝えるようにしてください。

また、反社会団体の構成員のおそれがある宿泊客も、場合によっては宿泊を拒否することができます。しかし、見た目からしてそのように見えても、実際には反社会団体の構成員ではない可能性もあるので、安易に宿泊拒否することは不要なもめごとを起こす原因にもなります。

宿泊拒否できるのは、あくまで「賭博、その他の違法行為又は風紀を乱す行為をするおそれがあると認められるとき」であることを年頭におきましょう。

不払い客

不払い客を宿泊拒否できるか否かは、旅館業法には明記されていません。

しかし、宿泊客はホテル・旅館のサービスを受ける代わりに、規定の宿泊料を支払う義務があります。ですので、宿泊料の支払いを受けられないと判断できるお客様に関しては、ホテル・旅館側が宿泊拒否を独断しても問題ないでしょう。

ホテル・旅館側が宿泊拒否をしてはいけないケース

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宿泊拒否できるケースとは反対に、ホテル・旅館側が宿泊拒否をすると違法になってしまうケースもあります。事前に把握し、間違いを起こさないように注意してくださいね。

身体障害者補助犬を連れた宿泊客

盲導犬など、身体障害者補助犬を連れていることを理由に、宿泊拒否をすることは違法となってしまいます。

身体障害者補助犬法の第9条では、「不特定かつ多数の者が利用する施設を管理する者は、当該施設を身体障害者が利用する場合において身体障害者補助犬を同伴することを拒んではならない」と定められています。

ただし、身体障害者の補助犬がホテル・旅館に損害を与えてしまった場合や、また損害を与えるおそれ、その他やむを得ない事情がある場合は宿泊拒否をすることができます。

しかし、ホテル・旅館側としては、できるだけ協力する方向で行動するべきでしょう。補助犬は法律によって衛生管理や訓練が義務付けられた、特別な犬です。受け入れに不安があるといったホテル・旅館は補助犬を連れたお客様に対応できるよう、事前に対応策を練っておくことが重要です。

参照:身体障害者補助犬法/厚生労働省

クレーマー

暴言、暴力行為が見受けられる迷惑客は宿泊拒否することが可能ですが、ただのクレーマーに関しては宿泊拒否することが許されていません。

たとえ、そのホテル・旅館で有名になっているクレーマーであっても旅館業法を侵していない限り、宿泊は受け入れるようにしてください。

宿泊拒否をするには「他の宿泊客に迷惑を及ぼす可能性がある」と判断された場合のみです。

外国人宿泊客

実際に起きた事件ですが、外国人であることを理由に宿泊拒否されていたケースがあります。

ホテル・旅館側が外国語に対応していないからということから宿泊を拒否したようですが、そのような理由は人権侵害・人種差別にあたります。

英語表記の応対マニュアルを用意するなど、すぐさま外国人宿泊客の受け入れ態勢を整えておく必要があるでしょう。

ホテル・旅館の宿泊拒否は慎重な判断を

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ホテル・旅館にとってはできれば宿泊を拒否したいお客様もいることでしょう。ですが、実際に宿泊拒否をしてしまうと、かえってホテル・旅館に損害が生じてしまうこともあるのです。

宿泊拒否の判断をするには旅館業法が基準となりますが、だからといって旅館業法はホテル・旅館の都合のいいように解釈して良いというわけではありません。

しかし、信頼できるホテル・旅館であるには、場合によってはお客様を宿泊拒否しなければならない場面があるのは事実です。

あきらかに宿泊拒否をしても良いケースは問題ありませんが、判断が分かれるケースは一度弁護士に相談したほうが賢明でしょう。

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