接遇マナーとは
接客業に従事していれば、一度は「接遇マナー」という言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。
接遇マナーとはその名の通り、接客よりもワンランク上、お客様の心に寄り添った接客技術である「接遇」と、礼儀作法の「マナー」が掛け合わさってできた言葉で、特に宿泊・交通・介護の世界で重要視されているマナーです。
接客マナーと同義に捉えられることもありますが、接客マナーは接客の基礎中の基礎で、表面上だけでも見繕えるものとするのであれば、接遇マナーは接客マナーよりも一歩踏み込み、お客様へおもてなしの心を持ち接するためのマナーと表現することができるでしょう。
そんな接遇マナーは、具体的にはどのようなものを指すのでしょうか。接遇マナー5原則とともに、接客の最高峰であるホテルを例に、接遇マナーの理解を深めましょう。
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接遇マナーの5原則とは
接遇マナーには5つの原則があります。どのようなものがあるのかをみていきましょう。
接遇マナー1:挨拶
対人関係を深めるうえで、誰しもが真っ先に思い浮かぶのが挨拶ですよね。接客の世界においてもこれは同様で、笑顔とともにハキハキとした明るい挨拶をするのが接客の基本です。
接遇マナーの観点では、さらに状況に合わせた挨拶が必要となってきます。お客様に挨拶をかけるタイミングや、自身が多忙な時でも視線を相手に向け挨拶を行うことができれば、接遇マナーとしての挨拶ができていると言えるでしょう。
接遇マナー2:身だしなみ
接客業では、商品やサービスのイメージは、従業員の印象に左右されます。どんなに素敵な商品やサービスであっても、提供する従業員の身だしなみが崩れていれば、お客様は安全性や清潔さにどこか不安を覚えてしまうものです。
身だしなみを整えるのは「相手に不快感を与えない」というのが主目的。目的を外れず、爪・髪の毛などの細かい部分まで身だしなみを整えている方は、接遇マナーとしての身だしなみができていると言えます。
接遇マナー3:表情
いくら元気な挨拶、整った身だしなみでも表情が無くては充分な接客とは言えませんよね。
IT化が進む中、接客業ではさらに接遇に力を入れる企業が増えてきています。人の心を動かすために最も重要なのは、感情に訴えかけることであり、接遇マナーの中でも表情は特に重要視されているマナーです。
お客様の感情を読み取って、お客様の気持ちに合わせ喜んだり、悲しんだりという表情を見せることで、お客様は特別感を感じたり、共感を得やすくなる状態になります。お客様との関係性も向上しやすくなるでしょう。
接遇マナー4:態度
接遇マナーの4つ目の原則とされているのは、接客時の態度です。
「クレームの半数以上が接客態度の悪さ」という調査もあるように、接客態度はお客様にとって重要な項目です。安易に捉えていては痛い目を見ることになりますので、注意しましょう。
接遇マナーとして捉えた時の接客態度で大切なのは、基礎以上の立ち振る舞いです。綺麗な姿勢や所作を保つことはもちろんですが、お客様に合わせた速度や、お客様の目線に合わせることができれば、接遇としてのマナーができていると言えるでしょう。
接遇マナー5:言葉遣い
接遇マナーの最後の要素は、言葉遣いです。敬語をはじめ、尊敬語・謙譲語・丁寧語の使い分けが正しくできているかどうかがポイントとなります。
接客マナーより踏み込んだ言葉遣いを使うのであれば、上記に加え、さらに相手の年齢・性別・立場・国籍に合わせた言葉遣いができるということも、ポイントのひとつと言えるでしょう。
「接遇」について、さらに理解を深めたいという方は下記の記事もぜひ参考にしてみてください。
ホテル&旅館業界の就職・転職についての記事
接遇マナーを向上させるためにすべきこととは?
接遇マナーを向上させるためには、どのようなことに気を付けて接客を行えばよいのでしょうか。向上させるための3つのポイントをご紹介します。
観察力を養う
接遇マナーが出来ている人は、観察力が高いという特徴があります。これは、相手がどのような人物で、今どのようなことを考えていて、これからどのような行動を起こすのかということを先読みする力、と言い換えることができます。
相手に合わせた行動をするために、まずはしっかりとお客様の観察を行うことができるのが、接遇マナーが出来ている人と言えるでしょう。
さらにレベルの高い方であれば、観察からの推測を瞬時に行うことができるという特徴もあります。
個客力を上げる
個客力(こきゃくりょく)は、お客様一人ひとりに適した対応を行うことができるという力です。
飲食店に子連れのお客様が来店したのであれば、子ども用の椅子が必要かを両親に伺ったり、年配のお客様に帯同して店内を案内するのであれば歩幅を小さくすることを意識し、体を斜めに向けて歩く、などがその例です。
個客力が高まると、お客様は特別感を覚え「良い接客を受けた」という気持ちが残りやすくなります。
表現力を培う
お客様一人ひとりに適した応対をする個客力を高めるためにも必要なのが、表現力を養うということです。
レベルの高い接遇マナーを身に付けている従業員は、たくさんの表情を持っていたり、たくさんの話題でお客様との会話を弾ませることができます。
記憶に残る接客は、マニュアルから外れた所から生まれるものです。普段から、自身で感動したこと、相手にされて感動したことなどを意識して生活している方は、よりたくさんのお客様の思い出に残る接客ができるようになることでしょう。
ホテルに学ぶ接遇マナー5原則とは?
接客のプロが集うとされて名高いホテルでは、どのような接遇マナーが取られているのでしょうか。ホテルで実際に行われている接遇マナーを、5つの原則に沿ってご紹介します。
時間に合わせた挨拶
ホテルでは、チェックインは夕方から夜にかけて、チェックアウトは早朝からお昼頃になることが一般的です。
特にチェックアウトの時間帯は、未宿泊のお客様が荷物を預けに来たり、飛び込みで何か質問をするというお客様も増えるため、挨拶が難しい時間帯となります。
大半のホテルでは午前10~11時頃には宿泊客に対しての「おはようございます」という挨拶から、「いらっしゃいませ」という挨拶に変更するようですが、昨日の宿泊のお客様を覚えている方はしっかりと「おはようございます」という言葉と使い分けを行うようです。
宿泊し、対応の変化に気付いたお客様に対し「しっかりしたホテルだな」「接客の良い従業員だな」という印象を抱かせることができるのが、接客のプロとしての接遇マナーと言えるでしょう。
統一感のある身だしなみ
一流ホテルでは、男性であれば頭髪、女性であれば靴のヒールの高さや、髪の色まで指定されているということもあります。
従業員からすると、一見働きづらい環境だと思うかも知れませんが、統一感のある身だしなみは、瞬間的にお客様がホテルの品位を感じ取ることできるため、一流ホテルマンはきちっとした身だしなみをすることを誇りに思っています。
自身のオシャレを優先するのではなく、ホテルの印象、ないしはお客様に与える印象ということを理解したうえで身だしなみを整えているホテルマンは、接遇マナーとしての身だしなみができていると言うことができるでしょう。
お客様に安心感を与える表情
お客様へのサービス提供時間が長いホテルでは、有事に対しての意識を強く持っています。停電・地震・火事や、お客様の体調が悪くなった際に従業員があたふたしていては、余計にお客様の混乱を招いてしまいますよね。
有事の際、たとえ内心で焦っていても、表情に出さずお客様を安心させるのが、プロの接客です。まず第一にお客様の安全確認・安全確保を行わなければならない災害時は、特にプロの仕事が目に見えてわかることでしょう。
接客業に従事している方であれば、まずは有事の際どのような行動を起こせば良いのかを、日常的に意識しておくことが重要です。万が一があるということを忘れず、接客にあたってくださいね。
お客様を見た目で判断しない接客態度
業界によっては、小さなお子様には赤ちゃん言葉で話しかけ、年配で慕ってくれるお客様には自身の祖父母のようある程度フランクに応対するということもあるでしょう。
しかし、ホテルでは一定の距離を保ちながら、全てのお客様に敬意を払った接客態度を取っています。
見た目だけでは人を判断できませんので、相手の言動に合わせ、失礼の無いよう先回り行動を起こすのが、ホテルマンの接遇マナーです。
クッション言葉を活用した言葉遣い
クッション言葉を適切に使用しているホテルが多くあります。「恐れ入りますが~」「差支えなければ~」などがその代表です。
クッション言葉はその名の通り、お客様への依頼や謝罪に対し、お客様の気持ちを和らげる効果があり、適切に使用することができる従業員が多いのがホテル業界です。
下記の記事もぜひ参考にしてみてください。宿泊業界とは違う業界で働いている接客業従事者であれば、何か新しい気付きがあるはずですよ。
接遇マナーを身に付けて最高の接客を!
接遇マナーは、挨拶・身だしなみ・表情・態度・言葉遣いの5つの原則から成り立っていますが、そのどれが欠けても満足とは言えない状態になるのが接遇マナーの難しいところです。
しかし、「お客様に寄り添った接客」を行うことを意識していれば、自然と接遇マナーも身に付くことでしょう。
基本的な接客マナーを身に付けている方であれば、さらに接客力を向上するために、日々接遇マナーを意識した接客を行ってみてくださいね。
また、一流の接遇マナーを学びたいという方であれば、ホテル業界へ就職・転職を検討してみてもよいかも知れません。
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