観光牧場とは

Tanya-Rusanova- stock.adobe.com
観光牧場とは、名前からイメージできる通り、観光客向けのサービスを提供する牧場を指す言葉です。畜産動物を育てて出荷する作業だけでなく、見て・触れて・食べて楽しめる牧場で、全国各地に点在しています。
牧羊犬によるショーや、搾りたてミルクを使ったソフトクリームなどのスィーツ、乳しぼりや乗馬など、さまざまな楽しみがあり、休日は家族連れで賑わいます。
観光牧場の仕事

Countrypixel – stock.adobe.com
観光牧場での仕事は、畜産動物の飼育をメインとした牧場とはどのような違いがあるのでしょうか。具体的な業務内容を見ていきましょう。
動物の世話・収穫、出荷作業
飼育がメインの牧場と同様に、動物の世話や収穫作業、出荷作業があります。決まった時間に餌を与え、飼育施設を清掃したり、搾乳機を使った乳しぼりや毛刈りの作業などを行います。
普通の牧場と異なるのは、動物たちは観光客にさらされてストレスを感じているため、乳房炎などの病気にかかりやすく、特に健康状態の入念なチェックが必要な点でしょう。
畜産に関する特別な資格が無くても働くことは可能で、のちのち必要になる資格の取得をサポートしてくれる観光牧場もあります。
ガイド・インストラクター
観光牧場では、さまざまな体験型アトラクションを展開しています。乗馬や牛の乳しぼり、バターやアイスクリーム、ヨーグルトなどの手作り体験など。牧場の裏側を見学するツアーも人気です。
こうした体験をお客様に楽しんでもらうには、ガイドやインストラクターの存在が欠かせません。
なるべく動物に負担をかけず、お客様には分かりやすい説明をすることが求められる仕事です。パートやアルバイトでも就業可能ですが、動物のことを積極的に学ぶ姿勢が求められますね。
乗馬のインストラクターについては資格が必要で、観光牧場によっては働きながら取得できるところもあります。
販売・飲食の接客
観光牧場には、レストランやカフェ、おみやげショップなどがあるので販売・飲食のスタッフも必要です。
一般的な販売・接客と異なるのは、飼育している動物にちなんだ商品が多いこと。お客様から「このぬいぐるみは何の動物ですか?」など聞かれた時に、動物の名前や、生態についてすぐに答えられる知識が必要です。
レストランやカフェでは、搾りたてのミルクや産みたて卵を使ったメニューが人気ですね。こちらについても、食材の栄養や特長の知識をしっかりと身につけ、お客様に案内できるようにしましょう。
人気の観光牧場

Grigorita-Ko- stock.adobe.com
全国各地に点在する観光牧場の中には、遠方から訪れる人が後を絶たないほど人気の高いところもあります。どんなサービスを展開して集客しているのかチェックしていきましょう。
冬の「馬そり」が人気の北海道の観光牧場
千歳空港から車で約1時間ほどのところに位置する、馬に特化した観光牧場では、冬限定の「馬そり」が人気で客足を伸ばしています。
冬の間だけでなく、一年を通して体験できるホーストレッキングや観光引き馬、ポニーによるショーも人気です。
引退した競走馬の飼育も行ってるので、競馬ファンの人にも人気が高いスポットです。ここまで馬だらけの観光牧場というのはなかなか珍しいですね。
入場料も駐車場も無料!栃木県の観光牧場
観光牧場は一般的に、入場料や駐車料金が掛かりますよね。しかし栃木県の那須高原にある観光牧場は、なんと入場料も駐車料金も無料で楽しむことができるのです。
この観光牧場は、「あくまでも酪農家」としており、さまざまな遊びやグルメを提供しながらも、安心できる「食」を届けることに尽力しています。一般公開することで、畜産物の安全性を広く知ってもらうのですね。
広大な草原に癒される岩手県の有名農場
岩手県には、全国的に有名な観光農場の牧場があります。このスポットはとにかく広大な土地が特長で、動物と触れ合うだけなくさまざまなアクティビティを提供しています。
透明な球体に入って水上を走る「水上ハムスター」や体にハーネスを付けて、収縮するワイヤーとトランポリンの力で上空7メートルまで飛び上がる「バンジートランポリン」など、珍しい体験が楽しめます。
また、広大な草原でただゴロゴロして癒しのひと時を楽しむ人も多いです。アクティブに遊んでも、ひらすら癒されても楽しめる牧場ですね。
観光牧場の現状と課題

Grigorita-Ko- stock.adobe.com
観光牧場は、昔から一定の人気があるレジャースポットです。しかしながら、今は体験型サービスが多様化している時代です。観光牧場の現状と、事業を継続するための課題に触れていきます。
人気はあるが差別化が困難
自然や動物に癒されて、新鮮なグルメが楽しめる観光農園は定番のレジャースポットとして人気があります。しかし、どの観光農園も提供するサービスが似たり寄ったりではないでしょうか。
乗馬体験も乳しぼりもバターづくりも面白いことですが、何かひとつは「この観光牧場でしかできない」という独自性が欲しいところですね。
前の項目で紹介した、北海道や岩手県の観光農場のように、珍しいアトラクションを導入してみてはいかがでしょうか。
観光客が増えたことによるインフラ整備が急務
インバウンド誘致やニューツーリズムの流行で、観光農場への客足が伸びています。
お客様が増えるのは喜ばしいことですが、増えた分に対応するだけのインフラ整備が追いつかないという課題を抱える観光牧場もあります。
観光バスを誘致したいと考えてはいるものの、インフラ整備が整うまでは実現が難しく、先延ばしにしているというケースもあります。
また、施設の出入口付近の道路の拡大などは、行政との連携が必要です。観光誘致は地域全体で考えなければならないのですね。
動物のストレスをどうするか
観光牧場の動物たちは、毎日観光客に見られたり、触れられたりして大きなストレスを抱えています。特に深刻なのは乳牛です。乳しぼり体験によるストレスで、乳房炎という病気が発生しやすいのです。
あまりにも乳房炎が多発したため、乳しぼり体験を廃止した観光農園もあるくらいです。
また、モルモットやうさぎなどの小動物は「ふれあいコーナー」の人気者ですが、乱暴に扱う人や、大声を出す人が居ると、強いストレスを感じます。ストレスによって死に至ることも少なくない大問題なのです。
お客様の前に出す動物を交代制にしたり、自由に散歩させる時間を設けるなど、ストレスを緩和させるための対策が各観光牧場でされていますが。しかし十分な対策かどうか、本当のところは動物たちにしかわからないことしょう。
人間たちはかわいい動物に癒される一方で、動物たちには強いストレスを与えている可能性が常にあるのです。観光牧場を運営する側も、訪れて楽しむ側も、それを忘れずに思いやりをもって動物に接しましょう。
観光牧場は学習施設としての需要もある

藤木N鮭- stock.adobe.com
動物のストレスや差別化が困難なことなど、課題は多々ありますが、観光牧場は非常に有意義な施設です。
最近、観光牧場を「食育の場」として活用する動きがさかんになっています。動物を育て、畜産物を得る場所である牧場は「命をいただく」こと体感できる施設です。
すっかりお馴染みとなったレジャースポットですが、今後は学習施設としての需要が高まってくるのではないでしょうか。