インバウンド需要とは

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まず「インバウンド需要」とは何か、おさらいをしておきましょう。
インバウンドとは、日本を訪れる外国人観光客のこと。訪日外国人観光客と呼ばれます。つまりインバウンド需要とは、訪日外国人観光客による需要・ニーズのことですね。
外国から日本を訪れる方が、日本に求めているモノ・コトと言い換えてもよいかもしれません。
もともと日本ではアウトバウンド(日本から海外へ出ること)の割合が多かったのですが、政府が観光立国を目指してさまざまな施策を実行してきた中で、インバウンド数がどんどん増加。観光庁の発表によると、2015年にはついに、インバウンド数がアウトバウンド数を上回りました。
日本政府観光局 (JNTO) の発表(2018年)によると、地域別でインバウンドの割合を見たとき、最も多く日本を訪れているのは東アジアからの観光客です(73.4%)。中でも中国(838万人)と韓国(753.9万人)が群を抜いて多く、それぞれインバウンド全体の約4分の1を占めています。
2019年に入ってからは日韓情勢の影響で韓国からの訪問者数が減少していますが、それでも台湾や香港などアジアの占める割合は依然大きいです。インバウンド市場のさらなる拡大を考える場合、アジア圏のインバウンド需要を注視しなくてはならないでしょう。
出典:日本政府観光局 (JNTO)「訪日外客数(2018 年 12 月および年間推計値)」
インバウンド需要と関わりの深い産業・業界

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インバウンド需要と関わりの深い産業には、以下のようなものがあります。
- ・宿泊
- ・交通
- ・飲食
- ・小売り
- ・レジャー など
ホテルや旅館を代表とする宿泊業界は、インバウンドと切っても切れない関係にある産業といえます。その他、現地での移動に欠かせない飛行機や鉄道といった交通産業はもちろん、観光先での飲食やレジャー、ショッピングなどへの需要も大きいです。
インバウンド産業と関わりの深い、こうした業界がけん引することで、さらなるインバウンド市場の活性化につながるでしょう。具体的な対策には、多言語表記に対応したメニューや看板、ホームページや、無料Wi-Fiの準備などが挙げられます。
「外国人観光客が過ごしやすい場所づくり」を意識した対応は大きなインバウンド需要でもあるため、観光客の満足度にもつながるでしょう。
インバウンド需要の地域格差

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内閣府によると、訪日外国人観光客の数、消費額ともに東京都、大阪府に大きく偏っていることがわかります。それに次いで需要が大きいのが、京都や沖縄、北海道などの有名観光地です。
それ以外の地域については、まだまだインバウンド需要をうまく取り込めているとは言えない状況にあり、いわゆる「インバウンドの地域格差」が生じています。
真の意味での観光立国を目指すため、また地方振興のためには、インバウンド需要の地域格差を無くすことが必要とされます。
今後インバウンドを取り込むために必要なこと

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では、地方がインバウンドを取り込み格差をなくすためには、どうしたら良いのでしょうか。そのためには、インバウンド需要についてもっと掘り下げて考える必要があります。
数年前、インバウンド需要といえば中国人観光客による「爆買い」が代表的でした。しかしその傾向は徐々に落ち着いてきており、最近では「体験」にシフトしてきています。いわゆる「モノ消費」から「コト消費」へ、というものですね。
この傾向をふまえると、都市部と比べてアミューズメント施設やショッピング施設が充実していない地方にも、インバウンド需要を取り込むチャンスがあります。訪日外国人観光客のニーズをつかみ、その地域ならではの体験を提供することで、インバウンドを取り込めるはずです。
これには、「地方には観光客を呼び込む魅力がない」「観光の目玉となる何かを新たに作ろう」という考えから脱却する必要があります。外国人観光客が求めているのは、そこに元からある自然や歴史、文化などなのです。
例えば岐阜県高山市では、インバウンド向けに地元食材を使った料理体験や里山のサイクリングをサービスとして提供。これにより、外国人観光客の数が増加した実績があります。
住民にとっての当たり前が立派な観光資源になり得ることを再認識し、地域の魅力を再発見するところから始めましょう。
インバウンド戦略については以下の記事もご参照ください。
インバウンド需要を正しく把握し、対策する

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2018年、日本のインバウンド数は初の3000万人突破を記録しました。今後は2020年の4000万人、2030年の6000人獲得を目指し、さまざまな工夫を凝らしていく必要があります。
さらなるインバウンド需要の拡大は、インバウンドと関わりの深い多くの産業を活性化させます。また地方にはまだまだ知られていない魅力が埋もれており、再発掘して広く情報発信することで、インバウンド需要を取り込む余地は十分にあります。
いずれにせよ、初めにすべきことは外国人観光客の需要・ニーズを把握することです。需要に対してひとつひとつしっかりと対応し、「日本に来て良かった」「また来たい」と感じてもらいたいものですね。