OJTのメリット・デメリット
OJTとは「On the Job Training」の略語で、実務を通してトレーナーが指導を行う教育方法です。
外部講師に依頼する場合や、社内トレーナーが行う場合がありますが、即戦力を育成するポイントをインプットする前にOJTのメリットとデメリットを確認していきましょう。
メリット
最大のメリットは、実務を行ううえで必要なものを分かりやすく教えられることです。こればかりは、座学だけではできないことかもしれませんね。
さらに大人数で行う座学とは異なり、トレーナーが個人のレベルや特徴に合わせて指導できるので、スキルが身につくスピードも早くなります。
また、OJTを社内の人材に任せて経験を積んでもらうことにより、トレーナーを任された人材の指導力もアップすることでしょう。結果、社員のレベルが底上げされ、企業全体が成長する可能性もあるのです。
ただし、OJTの活用には、職種の向き不向きがあります。ルーティンワークなど単純作業が大半の職種は効果が薄れてしまいますが、臨機応変な対応が求めらえる接客業や営業などはOJTのメリットを十分に得ることができます。
ですので、ホテル・旅館などの新人研修でOJTをうまく活用すれば、即戦力を育成できるチャンスがきっと多く訪れるでしょう。
デメリット
外部の講師を呼ぶようなOJTは別ですが、「先輩」や「上司」がトレーナーになると、その担当者には多大な労力が発生します。
たとえば、仕事を教えるだけでなく、教えたことがしっかりと実践されているのかを見守ったり、仕事へのフィードバックを行ったりと、座学よりも教育する効率が悪くなってしまうのです。
さらなる問題は、知識の偏りが浮き彫りになってしまうことです。OJTは体系的な知識を教えることには向いておらず、トレーナーによっては教育効果にばらつきが出てしまう可能性もあるでしょう。
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「OJTは意味がない」と言われてしまうのはなぜ?
OJTが、「意味がない」と言われてしまうのは、第一にその企業のなかで業務が標準化されていないということが挙げられます。
そもそも「何をどう教えるか」「どのような手順で業務を行うのか」ということが標準にないので、人によって教え方が異なってしまいます。
それぞれのトレーナーが “わが道を行く” ような仕事のやり方を指導すれば、一定の効果として現れないのは不思議ではありません。
OJTを活用する本来の目的は、最低限の業務知識とスキルを短期間で身に付けてもらうことです。その目的を達成するには、少なくとも以下のような前提条件を満たしていることが重要なのです。
- ・実務で必要な知識やスキルが標準化されている
- ・「業務の標準」に沿って実務が行われている
- ・OJTの対象となっている業務には、現場の誰もが同じ知識とスキルを持っている
以上の前提がない企業がOJTを導入すると、大半が無意味に終わってしまいます。前提を無視したままではOJTを成功させることはできないでしょう。
それだけでなく、社内トレーナーに指導内容を任せきりにした企業では、指導力と指導に割ける余裕も異なります。ですので、最終的には教育もされず現場に放置されてしまい、名ばかりのOJTとなってしまったケースもあります。
会社の業務を標準化しておくこと、そしてトレーナーへの教育を欠いてしまうと、せっかくのOJTの意味がなくなってしまうので注意しましょう。
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OJTの効果を生むために必要なポイント
OJTに必要な前提が理解できたところで、即戦力の育成に成功するOJTのポイントを解説します。それでは早速みていきましょう。
教える内容と業務手順をはっきりさせる
OJTは「何を教えるのか」「指導をどう行うのか」という点がはっきりしていなければ、成功することはありません。
担当のトレーナーは「何をどのように教えるのか」「なぜそうするのか」という点を、具体的に把握しておく必要があります。
基礎知識は事前に共有する
OJTを効率よく行うには、受講者には前もって基礎知識を学んでもらうと良いでしょう。
知識やスキルをOJTの期間内で学んでもらうのは限界があります。そのため、事前にマニュアルなどを学んでもらったうえで実務を行うことにより、スキルが身に付きやすくなるのです。
最近では、現場の社員が常に基礎知識をチェックできるように「動画マニュアル」が流行しているようなので、参考にしてみても良いかもしれませんね。
社内のトレーナーは事前に教育しておく
直属の先輩・上司になる人が、すべて良いトレーナーなのかと言うと、必ずしもそうと言い切れません。
社内トレーナーを用いる際は、担当者にそのまま任せきりにするのではなく、社内で「どのような指導を行えばよいか」「会社がOJTで何を期待しているのか」をきちんと伝えることが大切です。
場合によっては、社内トレーナーを育成するために、外部の講師を呼んで指導してもらうことも考えたほうが良いかもしれませんね。よりよい指導法が身に付けば、社内トレーナーも自信を持って指導にあたることができるでしょう。
OJTをうまく活用するには評価基準も必要
OJTを活用するには、評価基準を設けることも必要です。複数人で指導していると、どうしても目線や評価がズレてしまったり、一人のトレーナーが指導していたとしても同じようなことが起こる可能性があります。
このままでは受講者は戸惑うばかりで、全員の成長にはつながりません。一人ひとりにしっかりとした基準で評価するためにも評価基準を作成し、「意味のあるOJT」で即戦力をしっかりと育成しましょう。