所有と運営の分離でホテルの成長が加速する!管理運営受託方式のメリット、デメリット

ホテルの運営方式にはいくつかの種類があります。国内ホテルの多くは、所有直営方式とつことが一般的と言われてますが、国内観光業の急激な成長を受けて、より効率的に収益を見込めるという理由で管理運営受託方式を選択する所有者が増えてきています。

ホテルの運営形態の分類

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一言にホテルと言っても、シティホテルやビジネスホテル、外資系ホテルなど様々なカテゴリに分類されます。これらは、どのような運営形態であるのかによってもいくつかに分類することができます。

ホテルの運営形態は、土地や建物の所有、経営、運営、それぞれの所在がどこにあるのかによって区分が変わります。

・所有直営方式

・リース方式

・管理運営受託方式(マネジメントコントラクト)

代表的なのものはこの3つの方式です。

これまでは、国内のホテルの多くが所有直営方式が一般的でしたが、外資系ホテルの参入などを理由に管理運営受託方式のホテルも増加しています。最近では、経営の安定化を図る目的で、チェーン化の傾向が見られるとも言われています。

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国内で増加する管理運営受託方式

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国内にある、国産といわれるようなホテルの多くは、所有直営方式をとっています。

流行やニーズに合わせてホテルを増改築するなど、大きな投資を伴う意思決定を迅速に実行できるのが、所有直営方式の強みです。また社会的信用が高いという点も運営においては大きなメリットと言えるでしょう。

デメリットとなるのは、相当な資金力が必要であるという点です。日本で所有直営方式を取っているホテルは、電鉄や航空会社などの資金調達力に優れた企業が運営しています。

三位一体のホテル運営

国内ホテル運営の基本とも言われる所有直営方式は、所有、運営、経営の全ての責任を担うことから、まさに三位一体の状態です。

ホテル業は、リターン回収に時間を要すると言われることがあります。ホテルという装置を用意し、お客様を呼び込む、装置産業のひとつです。

建設時に多額の費用を投資し、装置としての魅力を維持、向上させるためにもまた莫大な経費がかかります。

経営状態の悪化があれば所有、運営、経営に関わる全ての要素に対してダイレクトに影響が出るというリスクがあります。

所有と運営の分離

運営受託方式は、所有と経営が同一会社で、ホテル運営会社に対してホテル運営を一任する方式です。

所有者が、ホテル運営のノウハウを保有していない場合に、運営のプロフェッショナルである運営会社へホテル運営を委託する方式です。

所有者および経営者は、ホテルの売上やホテル運営にかかる経費を負担し、運営者に対して運営委託料を支払います。

運営者は、総支配人などの幹部を派遣し、マーケティングや販促などのノウハウを提供し、集客力を高めるとともに独自の運営ノウハウにより高度なサービスを提供することが可能です。

運営者は資金調達力の代わりに、高いブランド力と集客力が必要です。

所有、経営、運営、それぞれに必要なスキルは異なります。分離させることで、各々が実行すべき業務がより明確になり、合理的な運営方式であると言えます。

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管理運営受託方式が普及した背景

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日本で管理運営受託方式が初めて締結されたのは、1964年に開業した外資系ホテルです。所有者は電鉄、運営は外資系ホテル運営会社でした。

管理運営受託方式には長い歴史がありますが、米国で所有と運営の分離が加速したのは1990年代前半の不動産不況時のことでした。

所有直営型ホテルで自ら投資するのは時間がかかりすぎると考えられており、なるべく早く企業を成長させることが経営命題とされる米国では、一般的な運営方式です。

運営者は自ら投資をせず、運営受託を受けることで運営ノウハウを転用し、大きなリスクを抱えることがありません。

所有者は比較的早くホテル出店を叶え、運営者は効率良くブランド力を向上させることが可能です。

管理運営受託方式のメリット

iStock/LeoPatrizi

管理運営受託方式のメリットは、資金面に対するのリスクの回避や業務効率の面への影響が大きいようです。

リスクを分散する

所有、経営、運営、それぞれを分離することは、それぞれに発生する経費やリスクの分散ができるというメリットがあります。

運営者は自ら投資をせず、運営受託を受けることで運営ノウハウを転用し、大きなリスクを抱えることがありません。

所有者は比較的早くホテル出店を叶え、運営者は効率良くブランド力を向上させることが可能です。

得意分野を分担する

所有者が持つ資金調達力、ホテル運営会社が持つブランド力や運営のノウハウ、ホテル運営にあたって必要とされるスキルが多岐に渡ります。

得意な役割を分担することで、それぞれの役割に注力することが可能であるため、質の高いパフォーマンスが期待出来ます。

管理運営受託方式のデメリット

iStock/seb_ra

所有者と運営者が目指す方向性は、必ずしも同一でないことがあります。所有者と運営者のそれぞれの立場や思惑を考慮した、公平な契約が重要です。

利害の不一致の発生

所有者と運営者の間にある利害が必ずしも一致しない場合があります。

出来るだけ高いリターンを得たいという目標においては、利害は一致するものですが、そこに至るまでの方向性が双方の立場で異なることがあります。

出来るだけ早く運営収益の回収や、ホテル資産の価値を向上させたい所有者と、宿泊客の満足度の向上やブランド価値を高めたい運営者とでは、その目標達成に対して要する期間も異なります。

稼働率が伸び悩んだ場合を例にすると、所有者側は客室単価をディスカウントしてでも宿泊客を多く取り込みたいと考える一方で、運営者側は安売りはブランド価値を損なう原因となると考えることがあります。

ホテル内の備品一つにしても、顧客満足を考慮すると一定周期で交換すべきと考える運営者と、目先の費用対効果を重視したい所有者とでは、必ずも考え方は一致しないことがあります。

これらのバランスの取り方は、管理運営受託方式の課題とも言えます。

権利の所在に関する課題

ホテルマネジメントコントラクトは、基本的に長期の業務委託となります。所有者は、運営者に対してホテル運営を一任することになります。

所有者にとって重要なのは、マネジメントにかかる費用や、ホテルの不動産価値の向上です。

ホテル運営を一任するとはいえ、所有者側がもつホテル運営に関わる権利については明確におく必要があります。

それぞれの利害をコントロールする規約や、人事に関する承認権や、ホテルの経営状態が悪い場合の契約継続、または更新に関する権利は、ホテルの資産価値に影響を与える重要な内容です。

所有、経営と運営の分離は、あくまで実行上の話であり、権利までが分離されるものではありません。

運営受託方式のポイントは分離と合致のバランス

iStock/VioletaStoimenova

所有と運営の分離は、ホテル展開のスピードアップや、ブランド力の向上など、当事者にとってより効率的な業務実行を可能にします。

所有者の利益は運営者によってもたらされ、運営者の利益はお客様からもたらされます。

それぞれの利害ばかりに目を向けてしまうと、サービス業としてのホテルの質がおざなりにされてしまう可能性があります。

ホテルは、お客様への質の高いサービスによって成り立つ、サービス業でもあるということも忘れてはいけません。お客様の満足度、より質の高いービス提供に対する意識は、合致させておく必要があるでしょう。

分離と合致のバランスが、長期的で優良な運営受託方式のポイントになるのではないでしょうか。x

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