旅館の後継者募集に応募しても良いのか?
昨今、親族の後継者選出が減っていることや、経営者層の高齢化を理由に、後継者を募集する旅館が増えています。
旅館の後継者募集の情報をインターネットなどで見かけたことはあるものの、実際に応募をしても良いものかと、迷ってしまった方もいるのではないでしょうか。
しかし、旅館・ホテルなどの宿泊業界では、後継者不足が深刻化しているため、挑戦心のある方からの応募を心待ちにしています。廃業をするぐらいなら、と個人に譲渡したいと考える経営者も多いようです。
さらに、男性は物事を長期的・論理的に考えて行動できる傾向が強いため、旅館業界でも男性は活躍できます。
旅館の後継者募集に関する知識をつけ、自身の将来の選択肢を増やしてみてください。
以下の関連記事では、旅館で活躍する男性の特長をご紹介しています。応募をする前に、ぜひお役立てください。
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旅館の後継者募集の方法とは?
後継者を募集された場合、問い合わせたいと決めている旅館があれば問題はありませんが、「応募の意思が固まっていない」「他の旅館とも比較がしたい」という方もいらっしゃるでしょう。
現在、旅館の後継者募集の情報を確認できる場所は、大きく分けて3つあります。旅館・後継者募集の情報が集まる、公的相談施設・インターネット・M&Aサービス、それぞれについて解説します。
公的相談施設での募集
旅館をはじめ、後継者不足は国全体で問題視されています。その背景から、国は2011年から「事業引継ぎセンター」という公的相談施設を各都道府県に設置しました。
事業引継ぎセンターの累計相談社数は約37000社と年々相談件数も増えており、事業引継ぎの成約件数も順調に伸びています。
また、この事業では「後継者人材バンク」という事業主と起業家をマッチングするサービスを提供しています。相談は無料ですので、事業継承までの流れを知るためにも、興味がある方はまず各都道府県の「事業引継ぎセンター」に相談するとよいでしょう。
インターネットでの募集
旅館のホームページ上で後継者を募集していることもあります。しかし、後継者不足が深刻であることが広く知られてしまうため、中規模以上の企業では情報が公開されていること自体が少ないでしょう。
ホームページの他にインターネット上で確認できるのは、移住系のポータルサイトや、M&A事業を行っている一般社団法人や民間企業などのサイトです。
サービスは多岐に渡るうえ、公開情報に制限があり、情報が少ないというリスクもありますので、気になる方はこまめにチェックすることをおすすめします。
M&Aサービスでの募集
企業が企業を買収するというイメージが強いM&Aですが、広義では「第三者への事業引継ぎ」をM&Aと呼ぶため、個人で企業を買収することもM&Aと呼ばれています。
検索エンジンで「M&A+売却情報」などと検索をすると、各企業が提供しているM&Aの売却情報を見ることができますので、辿り着いたページ内で「旅館」や「宿泊業」などと絞り込み、情報を確認してみましょう。
応募元の情報についてもっと深く知りたい、という方は下記の記事も参考にしてみてくださいね。
ホテル&旅館業界の就職・転職についての記事
旅館の後継者募集に応募するメリット
旅館の後継者募集の方法を把握したところで、旅館が出す後継者の募集に応募するメリットとデメリットを今一度確認しておきましょう。
設備に関する初期投資が小さくて済む
旅館経営を始めるにあたり、最もハードルを高くするのは、施設や設備への資金準備でしょう。旅館を建てるには、膨大な資金が必要になります。
しかし、旅館の後継者に応募をすることで、資金準備が最低限で済む可能性があります。M&Aのサービスを利用する場合は、仲介手数料などが発生することもありますのでしっかりと比較・検討を行いましょう。
従業員・取引先をゼロから確保する必要が無い
年中無休で営業をしているという旅館もたくさんあります。自身がどのような経営を目指すかにもよりますが、体一つで旅館を経営することは難しいので従業員の確保は欠かせません。
加えて、飲食・備品・清掃・旅行代理店など、様々な企業との関わりが必要になる旅館経営では、人との関わりも重要です。
ただ、後継者に応募した場合は経営者を経由して取引先を紹介されるので、ゼロから関係性を築く必要はありません。人との関わりを構築する手間が省けるという点は、大きなメリットと言えるでしょう。
経営のノウハウを学ぶことができる
経営の経験がない方が後継者募集に応募をするメリットは、経営ノウハウを経営者から直接学べることでしょう。
たとえ本などで経営のいろはを学んだとしても、実際に現場に出ると想像以上のイレギュラーが発生し、様々な困難に立ち向かわなければならないときがやって来ます。
事業継承を行う場合であれば、経営者も「事業を託す」という気持ちで応募者に接してくれることが大半なので、経営のノウハウを現場で直接教えてもらうこともでき、自身の経営に活かすことができます。
ただし、旅館によっては「売却を行いたかっただけで、後は好きに任せた」という自由奔放な経営者もいる場合もあります。経営ノウハウまで伝授してもらいたいという方は、応募前・応募後ともにしっかりと経営者を見極めるようにしましょう。
旅館の後継者募集に応募するデメリット
旅館の後継者募集に応募するのは、メリットだけではありません。どのようなデメリットが考えられるのか、探っていきましょう。
従業員・取引先から信頼を得るまで時間がかかる
ビジネスホテルなどに比べて、旅館は人との関わりを大切にしている傾向があります。そのため、旅館のエリアや規模によっては、新参者の経営者は煙たがられるということもあるそうです。
「先代の経営者の方が良かった……」と従業員や取引先に思われてしまっては、経営も上手くいかなくなることが考えられるので、必要に応じ「後継者候補」として旅館で数年働いたうえで、事業継承を行ってもらうようにしましょう。
自身の経営を行えるようになるまでに時間がかかる
経営ノウハウもあり、すぐの事業譲渡を夢見ているという志の高い方もいらっしゃるかもしれません。しかし、後継者募集に応募する場合は、自身の思い描く経営を行うまでに時間がかかるため注意が必要です。
と言うのも、旅館は良くも悪くも先代の思いがたくさん詰まっています。あわせて、おおよその経営者が事業譲渡には5~10年の時が必要だと考えているケースが多いようです。
仮に契約を結べたとしても、即座に経営を始めることは難しいと考えて良いでしょう。
他に条件の良い旅館が現れる可能性がある
自身で事業を開始しようと動いた場合、理想とするのは自身の考える最良の立地・設備で旅館を経営することでしょう。
しかし、事業譲渡を検討している旅館には限りがあります。いざ「よし、ここの旅館の事業を継承しよう!」と決めたとしても、数年後により良い条件の旅館が売却になる可能性もあります。
後継者になる場合は自身で全てを決められないため、後悔が残ってしまうことがあります。絶対に譲れないポイントと検討期間を決め、検討期間内で絶対条件を含む旅館が売却にならなかった際には起業を検討しましょう。
旅館の後継者募集求人も選択肢として考えてみよう!
「自身でいつかは旅館を経営してみたい」とお考えの方は、起業以外にも後継者募集に応募するという選択肢も覚えていれば未来の幅が広がります。
起業・後継者募集への応募の両者のメリット・デメリットをすべて把握するのは難しいので、旅館経営に興味がある方はまず「事業引継ぎセンター」に相談をしてみてください。
「旅館後継者へ応募をしてみたい!」と興味が湧いた方は、情報が少ないため、募集の求人情報をこまめに確認することをおすすめします。
中小企業をはじめとして後継者不足に悩みを抱える企業を救うため、また観光資源を守るため、そして自身の夢を形にするため、ぜひ一歩を踏み出してみてくださいね。