地域活性化・地域おこしとは?
「地域活性化」や「地域おこし」という言葉を耳にする機会が増えましたね。
これらの言葉は、地域それぞれが特徴を活かし、自律的で魅力のある社会作り、人口を増加、または維持させることを指しています。少子高齢化で衰退が進む地域や、過疎地域では、特に積極的に行うことが必要です。
具体的には下記のような取り組みがされています。
- 地域の特産物のブランディング
- 空き家を移住者に提供
- アンテナショップの営業
- インフラ整備
こういった事業は、地方を活性化させると同時に東京一極集中の改善にも繋がります。都市機能を分散させれば、万が一東京で大規模災害が起こったときの備えにもなりますね。
地方のためだけでなく、都市部にとっても地域活性化は必要なことなのです。
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地域活性化と地方創生の違いは?
地域活性化と似ている「地方創生」という言葉もあります。地域活性化と地方創生はどのように違うのでしょうか。ふたつとも地域が持つ魅力を活用し、持続可能な社会を作ることを目的とした活動を指す言葉です。
意味合いとしては明確な線引きはありませんが「地域活性化」は地域を活性化させる活動全般を指す言葉なのに対し「地方創生」は政策の名前です。2014年の9月3日に発足が発表され「ローカル・アベノミクス」とも呼ばれます。
政策の内容は次のようなものです。
- 地方自治体への新型交付金の交付
- 政府関係機関の地方移転
- 特別区域(国の規制を緩和する特例を適用する特別区域を設けること)
- 高度先進医療の実現のための病床増設
- 公設民営学校の設置
- 高度先進医療の実現のための病床増設
- 路上イベントなどの、道路占用の規制の緩和
他にもさまざまな規制改革があります。地方自治体や民間企業は、こうした制度を活用して地域活性化を進めるというわけですね。
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地域活性化における宿泊業・観光業の役割
宿泊業や観光業は、地域活性化において、よそから訪れる人に地域の魅力をアピールするという重要な役割があります。そのため、観光庁も宿泊施設の生産性向上事業を行っています。
具体的な事業は、以下のようなものがあります。
- 多言語対応の旅館情報サイトの設置
- サービス業の生産性向上を目的としたオンライン講座の実施
- 宿泊と食事を別々にするお客様へ対応や、共同購買などの地域連携についての調査
- 旅館やホテルへのコンサルティング、全国のワークショップで得られた
「カイゼン活動」の好事例をまとめて公開
好事例のまとめや、地域連携の事例は観光庁ホームページで確認できますので、参考にしてみてはいかがでしょうか。
地域活性化に向けた宿泊業界の取り組み
地域活性化において重要な役割を担っている宿泊業界では、すでに積極的な活動をしている企業があります。今現在、どのような取り組みがされているのか紹介します。
町全体をホテルにする
独自の体験をする旅行がトレンドの今、新しい宿泊施設のスタイルとして「分散型宿泊施設」が注目されています。
分散型宿泊施設は、イタリアで生まれた地域活性化の取り組みで、町に点在する古民家などを活用して、町全体をホテルにしようという考えなのです。
日本でいち早く分散型宿泊施設がオープンしたのは、兵庫県の丹波篠山市です。史跡や文化財が残る美しい城下町にある7棟の古民家や、広々とした2階建て住宅をホテルとして活用しています。
兵庫県の他にも、京都府や千葉県にも同様の分散型ホテルがあり、ふつうのホテルに飽きたてしまった人や特別感を味わいたい旅行者に人気の宿となっています。
価値のある建造物をただ保存するのではなく、よその地域の人に土地の魅力を知ってもらい利益を生み出すことに活用できるのは素晴らしいですね。
遊休不動産をシェア型ホテルに改装
使われなくなったオフィスビルなどの遊休不動産を、シェア型ホテルとして活用している企業もあります。2020年1月現在で、東京都に2店舗、北海道、石川県、広島県に1店舗ずつ存在します。
ただ建物をホテルにしただけではなく、それぞれの地域の特色を生かしたワークショップや展覧会、ヨガレッスンなどが開催されています。
総務省の地域活性化大賞
総務省では、「ICT地域活性化大賞」という賞を展開しています。
ICTとは、報通信技術のことです。ICTを活用した人口減少や少子高齢化など、主に過疎地域が抱える問題を解決する取り組みの中で、とりわけ素晴らしい事業に贈られる賞です。
宿泊業界や観光業界にかかわりの深い取り組みで受賞した事例を紹介します。
観光客が地元の情報をもとに観光ルートを設計できるシステム
2014年の大賞のひとつに輝いたのは、青森県の生きた情報をもとに、観光客が自由自在に観光ルートを設計できるクラウドサービスです。
自治体や民間企業、地域住民がクラウド上に観光スポットやおすすめ情報をアップデートし、観光客がそれを閲覧して観光ルート自由に考えらるのです。テレビや雑誌では取り上げられる機会の無い、地域の埋もれた魅力を発信できるシステムですね。
サービスの開始によって県外からの観光客数が10%・宿泊費の消費が19%・域内交通費の消費が24%増加しました。このサービスは青森県内にとどまらず、全国48の地域や団体に展開されるようになりました。
過疎地域に整備されたサテライトオフィス
徳島県のサテライトオフィスプロジェクトも、2014年の大賞のひとつに選ばれました。インターネットの通信網を全県域に整備し、全国屈指の高速ブロードバンド環境を実現させ、過疎地域に多くのサテライトオフィスをオープンさせたのです。
サテライトオフィスとして活用するのは古民家や蔵です。運営費用への補助支援も充実させ、ICTベンチャー系企業の誘致を推進しました。結果、徳島県内に31社の企業が26のサテライトオフィスに進出して56名の雇用の創出に成功したのです。
また、サテライトオフィスをオープンさせてから3年間で76世帯113名が移住してくるという大きな成果を上げています。サテライトオフィスは移住だけでなく、旅行と仕事を同時に行う「ワーケーション」で働きたい人を誘致させ、観光業の活性化も期待できる取り組みです。
地域連携型駐車場シェア
2017年の大賞のひとつには、観光の課題を解決する地域連携型駐車場シェアを導入した日本全国展開の取り組みが選ばれました。
花火大会やお花見などの大規模なイベントの際は、駐車場が埋まりがちで違法駐車の問題が出てきます。そこで、地元の住民や地元企業、自治体が自分の駐車場を有料で提供できるシステムが開発されたのです。
もともとある駐車場を利用するのでコストがかからず、個人宅の遊休ガレージや、法人が定休日などで使っていない状態の駐車場を有効活用できます。
駐車場不足の問題を解決するとともに、地域の経済を活性化させる効果のある取り組みですね。
地域活性化の課題とは
さまざまな角度から積極的な取り組みが行われている地域活性化ですが、課題もあります。
例えば、過疎地域が人口を奪い合ってさらに疲弊する恐れがあります。これを防ぐためには、地域の実態に合った取り組みをすることが必要です。無暗やたらに箱物を作ったり、他にすぐ模倣されてしまうB級グルメや、安直なゆるキャラを使ったPRに頼りすぎるのはかんがえものです。
また、地元の住民が本当に活性化を望んでいるのか、本当に移住者を受け入れたいと思っているのかを見極めることも重要です。市区町村の上層部だけで盛り上がって進めても、失敗に終わる可能性が高いでしょう。
特に移住者の受け入れについては、せっかく移住してきた人が地元住民に馴染めなくて結局出ていく、というケースが非常に多いのです。
地元の特長や住民の性質に合わない対策に、時間とお金を費やすことは避けましょう。
地域活性化は今後どうなる?
今後の地域活性化やインバウンド政策で地方に注目が集まっている今は、地域活性化をはかることに有利なタイミングです。特に、今回事例で紹介した、もともと地域が持っている資源と、ICTを上手に融合させることによって驚くべき効果が出る可能性もあります。
地域に伝わる古き良きものを大切にしながら、新しい技術にもアンテナを張って取り組みましょう。地域活性化はこれからが本番です。