メンタルヘルスツーリズムとは
「うつ」をはじめとする心の病が増加していると言われる昨今、メンタルヘルス(心の健康状態)への関心は急速に高まっています。
ストレス社会と言われる現代社会では、知らず知らずのうちに心を疲れさせてしまう人が多くいます。心の病のやっかいなところは、決定的な治療法がないところにあります。
カウンセリングによる早期発見などはありますが、自分で気が付きにくかったり、自主的な行動が取りにくかったりすることも、心の病の難しさと言えるでしょう。
心の病の予防策として「休む」ことが大切
決定的な治療法がないことや、発見が遅くなりがちだからこそ、関心が集まっているのが「予防」です。
心の病の予防策として、休むことは重要です。しかし、ストレス社会の中では休むことすらストレスになってしまうこともあるのが現状です。
周囲からの理解が得られなかったり、休むことへの罪悪感があったり、自らストレスに対処していくことは、決して簡単なことではありません。
だからこそ、心を休ませるために主体的な行動が取れるような取り組みが必要なのです。
メンタルヘルスの維持・向上を目指す「メンタルヘルスツーリズム」
メンタルヘルスツーリズムは、観光や旅行でメンタルヘルスの維持・向上を目指す旅のことで、旅の目的は「心を休ませること」にあります。
- 非日常的な経験や感覚を得ることで「視点の転換ができる」
- 自然の中に身をおくことで得る「自然の癒し効果がある」
- 普段とは異なる感覚を味わうことで「五感を活性化できる」
上記のような旅を通して感じるさまざまな変化が、心に休息を与え、心の病が予防されます。
さらに、メンタルヘルスマネジメントなどの「心理学的視点からの研修」を行うことで、メンタルヘルスに対する主体性も身につけます。
こういった要件を満たした旅が「メンタルヘルスツーリズム」です。
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メンタルヘルスツーリズムに期待できる効果
メンタルヘルスツーリズムの目的は、心の疲労回復です。ツーリズムによって心を疲弊させるものから離れることが、さまざまな効果をもたらすと考えられています。メンタルヘルスツーリズムに期待できる効果について紹介します。
ストレスの軽減
自然豊かな場所や温泉などに行くと、日常生活で溜まったストレスや疲労が解消されると感じたことがある方は多いはずです。
ストレスに対する研究によると、旅行をすることによって、コルチゾールやクロモグラニンAといったストレス物質の値が低下することが証明されています。
旅の中で味わう、非日常の体験がストレス軽減に効果があるとも言われています。
心理的距離の延伸
旅行で移動することは、仕事や家庭などのストレスの原因から距離を置くことにつながります。
距離が離れることで、物事を客観的に見ることができたり、自分自身を見つめ直すことができたりするものです。
これは都心から田舎に出向くことだけでなく、田舎から都心に出向くケースも含まれます。
ポジティブ感情の増加
アクティビティへの参加で楽しい体験ができたり、感動する景色などを味わったりすることで、ポジティブ感情が増加します。
新鮮な食材・人の手が感じられる料理を食べると、幸福度が増すと感じる方も少なくないでしょう。
喜びや幸せなどの感情が持てることで、幸福感や自己肯定感が高まり、ポジティブ感情が増加します。
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宿泊施設によるメンタルヘルスツーリズムの事例
メンタルヘルスツーリズムを導入した宿泊施設の事例を紹介します。サービスの参考にしてみてくださいね。
国内の宿泊施設
長野県にある宿泊施設では、本来持っている自然治癒力を取り戻すことを目的として「身体に優しい食事・ヨガや散歩」など心身のリラックスにつながるプログラムを用意しています。
施設の菜園や地元で採れた野菜を使った食事を提供したり、ヨガや瞑想、森林散歩などのワークショップを開催したり、宿泊者の好みに合わせた滞在ができるよう工夫されています。
穏やかな空間の中で心と身体の声に耳を傾けながら、ゆったりとした時間が過ごせます。
海外の宿泊施設
アメリカにある広大な敷地の中に佇む9室の客室を持つ宿泊施設では、自然の中でのくつろぎの時間を提供しています。
ハンモックに揺られたり、小川で泳いだり、囲炉裏の火を眺めたり、思い思いの過ごし方で、リラックスしながら空間を楽しめるよう工夫されています。
都会の喧騒から離れ、窓から見える牧草地や山々の緑を見ながら、穏やかな時間の流れを楽しむことができます。
メンタルヘルスツーリズムの今後
日本には、温泉や森林などメンタルヘルスツーリズムに適した環境が豊富にあります。
昔からの湯治のように、病気を治したり体調を整えたりするための旅行は、日本にとって馴染み深いものです。日本特有のさまざまな環境が心の湯治場になることでしょう。
メンタルヘルスツーリズムは、観光振興にも大きな影響力を及ぼす可能性を秘めています。日本の資源として、国内外からの旅行客誘致にもつながるかもしれません。
宿泊施設が癒しの場になる「メンタルヘルスツーリズム」
忙しい日々から離れて、静かな場所で休養を取ることは、心の疲労回復に最適です。
非日常が味わえる宿泊施設の設備と、スタッフによるおもてなしはメンタルヘルスツーリズムに欠かせない存在です。
新しかったり刺激的であったりする必要はありません。心が休まることを大切にしたサービスで、お客様の癒しの場になりませんか?