オーバーツーリズムで何が起きている?
オーバーツーリズムは、観光地に受け入れきれないほど多くの来訪者が集まり、自然環境や地域住民、観光資源の価値などに悪影響を与えることを指す言葉です。
格安航空や民泊などが普及し、手軽に旅行ができるようになったことで深刻化していますが、オーバーツーリズムによってどのような問題が起きているのでしょうか。
この記事では、日本国内の観光地におけるオーバーツーリズムの事例や、オーバーツーリズムが与える悪影響について詳しく解説していきます。観光業の未来を考えるための参考にしてください。
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オーバーツーリズムの事例3選
人気の高い観光地ほど、オーバーツーリズムの問題は根深くなりがちです。日本各地で起こっているオーバーツーリズムの事例をいくつか見ていきましょう。
鎌倉市のオーバーツーリズム
神奈川県の鎌倉市は、観光スポットが鎌倉駅を中心とした狭いエリアに集まっているため、駅周辺の混雑が深刻です。鎌倉駅に発着する江ノ島鉄道は、最大でも4両編成の小さな電車で、混雑時には乗車するまでに1時間以上並んで待つこともあるのだそう。
また、人気漫画の聖地として知られる踏切や横断歩道においては、無理な写真撮影を行う観光客がいるなどの危険な行為も発生しています。
美瑛町のオーバーリズム
北海道の美瑛町は小さな農業の町でありながら、色合いの異なる農作物が丘陵地帯に広がるパッチワークのような景観で人気を集めている観光地です。しかし、観光客が農地へ無断で立ち入り農作物を踏み荒らすといった事態が発生し、深刻な問題になっています。
また、同町には水面が青白く見える池もあり、こちらも人気のスポットですが、冬場に凍った池の上を歩く人が多く、氷が割れることが懸念されています。
宮古島のオーバーツーリズム
沖縄県の宮古島は、海外からのクルーズ船が寄港するようになってからオーバーツーリズムが深刻化しています。
入港時間にはタクシーやバスが大混雑することや、観光施設の新規オープンに伴って建物が増え、島の景観を壊しているといったことが問題視されているそう。
小さな島である宮古島に大勢の観光客が押し寄せることで、さまざまな弊害が起こるのですね。
以下の記事では、オーバーツーリズムが特に深刻な京都府で起きている問題について解説しています。併せてご一読ください。
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オーバーツーリズムが与える悪影響とは
全国各地の観光地で、上記事例のようなオーバーツーリズムが起こっていますが、それによってどのような悪影響があるのでしょうか。
地域、地元住民、そして観光客におよぼす悪影響を把握しましょう。
地域が受ける悪影響
地域が受ける悪影響として挙げられるのは、観光資源の魅力が損なわれることです。心無い観光客が施設にいたずら書きをしたり、時には重要文化財を傷つけたりするといった問題は、実際に起こっています。道端にゴミが散乱することもあるでしょう。
また、新たな観光施設がオープンすることで老舗の施設が廃業に追い込まれたり、景観が壊れたりといったことも考えられます。観光施設で働く人の負担も増え、離職者の増加につながる懸念もあります。
観光客の急増は、一時的に地域を盛り上げてくれるかもしれませんが、このような状況が続けばいずれ衰退してしまうのではないでしょうか。
地元住民が受ける悪影響
観光客の消費活動によって地域経済は潤います。しかしその一方で、地元住民に悪影響をおよぼすこともあるでしょう。
例えば家の前の道路にゴミをポイ捨てされれば、片付けざるを得ませんよね。行政が清掃するにしても、その費用には地元住民が納めた税金が使われます。
また、鎌倉の事例のように、交通機関がパンクして通勤・通学に支障が出たり、混雑によって飲食店に入れなかったりといったことも考えられます。
騒音問題や私有地への侵入、事故が起こるなどのトラブルも増加するでしょう。地元住民が受ける悪影響は、非常に深刻なのですね。
観光客が受ける悪影響
オーバーツーリズムは、観光客にも悪影響をおよぼします。「せっかく訪れた旅行先が大混雑で楽しめなかった……」という経験を持つ人もいるのではないでしょうか。
目当てだった観光施設に入場できない、混雑で電車に乗れない、飲食店に入れない。こうしたことで、旅行のプランが大きく崩れる場合があります。また、観光施設のスタッフが対応しきれず、満足のいくサービスを受けられないこともあるでしょう。
さらに、違法民泊や違法タクシーを利用してしまったり、法外に高い飲食店の客引きに引っかかってしまったりと、トラブルに巻き込まれるリスクも高まります。
オーバーツーリズムは無視できない問題
多くの観光客が地域にやってくるのは喜ばしいことですが、キャパシティには限界があるものです。
オーバーツーリズムによる悪影響を緩和するためには、ICTを活用した混雑度の「見える化」や、分散化の促進などが必要です。状況に応じて適切な対策を講じましょう。