従来のホテルとは一線を画す、革新的な「デジタルホテル」。近年、ホテル業務をデジタル化する動きが活発になっていますが、具体的にはどのようなデジタルツールがあるのでしょうか。この記事では、ホテルで取り入れられているテクノロジーやデジタルツールの例、導入のメリットなどを解説します。デジタルツールで成果を出したホテルの事例と併せて見ていきましょう。

デジタルホテルとは？

デジタルホテルという名前からは「デジタル技術を活用したホテルでは？」というイメージがわくかもしれません。具体的にどのようなホテルが該当するのでしょうか。

デジタルホテルの概要と、誕生の背景を見ていきましょう。

概要

デジタルホテルは、最新のデジタル技術を活用した宿泊施設です。「従業員による手厚いサービスを提供する施設」というイメージが強いホテル業界ですが、デジタル化による業務効率化を推進するホテルが増えています。

その中でも、多くの業務をデジタルで対応しているホテルが「デジタルホテル」と呼ばれています。デジタルホテルの中には「チェックインからチェックアウトまでデジタル技術で対応するため、特段の事情がなければお客様と従業員が顔を合わせる機会がない」というホテルもあるようです。

誕生の背景

デジタルホテルが誕生した背景には、いくつかの要素があります。詳しく見ていきましょう。

【技術の進化】

インターネット、スマートフォン、IoTといったデジタル技術の進化により、さまざまなサービスやデバイスがネットワークで接続され、リモート操作が可能になりました。

これまで人力で対応せざるを得なかった業務を機械に任せられるようになったことは、デジタルホテルの誕生に大きな影響を与えたといえるでしょう。

【顧客ニーズの変化】

現代の旅行者の多くは、デジタル技術に慣れ親しんでいます。より効率的な宿泊体験をするために「自分のスマートフォンを使ってさまざまなサービスを受けたい」というニーズが高まっているのではないでしょうか。

また「ホテルスタッフのサービスは必要最低限でよいから安く宿泊したい」と考える旅行者もいるはずです。デジタル技術で人件費を削減し、手ごろな価格で宿泊できるホテルには一定のニーズがあるでしょう。

そしてデジタル技術を活用することで、お客様ひとりひとりに合わせたサービスを提供しやすくなります。過去の宿泊履歴や好みに基づいたおすすめ情報の提供や多言語対応をスムーズに行える点は大きなメリットです。

旅行のスタイルが多様化している現代に、マッチしているのではないでしょうか。

【効率化とコスト削減】

デジタル化により、ホテル運営を効率化し人件費を削減できる可能性があります。デジタルツールの導入には、費用がかかるケースがほとんどです。しかし長い目で見れば、コストの削減に役立つのではないでしょうか。

また、単にコストを抑えるだけでなく、人手不足のホテルにおいて円滑に業務を回していく上でもデジタル化は有効です。

【新型コロナウイルスの影響】

新型コロナウイルスの影響によって、2020年ごろから非接触型のサービスに対する需要が急増したことも、ホテルにおけるデジタルツールの導入に大きく影響しています。

感染拡大を防ぐためには人と人との接触を極力避けることが重要とされていました。そのため、ホテルマンが直接お客様に対応せずに宿泊サービスを提供する方法として、デジタルツールを導入したホテルは多いでしょう。

デジタルホテルで活用しているデジタルツール

サービスの大部分をデジタルツールで提供しているデジタルホテル。具体的にはどのような設備や手法が用いられているのでしょうか。いくつかの例を紹介します。

スマートチェックイン・チェックアウト

スマートチェックイン・チェックアウトは、宿泊施設でのチェックインおよびチェックアウトの手続きをデジタル技術で効率化するシステムです。代表的なシステムの例を紹介します。

【オンラインチェックイン・チェックアウト】

到着前にスマートフォンやパソコンを使用してオンラインでチェックインを完了するシステム。氏名、連絡先、パスポート情報など宿泊の際に必要な情報を事前に入力することで、到着時に発生する受付をスキップできる。

チェックアウトも同様にオンラインで完結。クレジットカードや電子マネーでの支払いができるため、フロントに立ち寄らずチェックアウトできる。

【セルフチェックイン・チェックアウト機】

ホテルのロビーに設置された専用端末を利用して従業員を介さず自らチェックインをする。予約番号や電話番号を入力したり、オンラインでの予約時に発行される二次元コードを読み込ませたりする方法が一般的。

この端末でセルフチェックアウトもできる。端末に必要情報を入力して宿泊費を支払う。ビジネスホテルなど料金先払いの施設では、端末の操作も不要でルームキーを返却すればよい場合もある。

デジタルキー

デジタルキーは、一般的なルームキーやカードキーを使わずに暗証番号や二次元コードでロックを解除するシステムです。

オンラインチェックインを完了すると、お客様のスマートフォンに暗証番号・二次元コードが表示されるタイプや、セルフチェックインの完了後に暗証番号・二次元コードが印刷された用紙が発行されるタイプがあります。

デジタルキーを導入することで、カギの紛失によるトラブルを未然に防げます。また、受け渡しの手間も省けるため業務効率化に役立つでしょう。

客室のスマートコントロール

客室のスマートコントロールは、お客様が滞在中にスマートフォンやタブレット、または客室に設置された専用端末を使用して、設備を操作したりサービスをリクエストしたりするためのシステムです。

具体的には、照明やエアコンの調整やカーテンの開け閉め、テレビや音響機器の操作といったことが挙げられます。ルームサービスを頼んだり客室清掃を呼んだりすることも可能です。

翻訳機などのコミュニケーションツール

セルフチェックイン機や客室専用端末などのお客様が使うITツールは、ひとりひとりのお客様に合わせたコミュニケーションが取れるように設計されていることが一般的です。

代表的な例としては、多言語対応機能や翻訳機能が挙げられます。世界各国からやってきたお客様の滞在のサポートに、デジタルツールは大いに役立つことでしょう。

また、お客様が自分の好みや関心のあることなどを入力すると、おすすめの観光地やグルメ情報を教えてくれる機能もあります。

顧客情報の記録・管理ツール

デジタルツールの中には、お客様の情報を詳細に記録するものもあります。

例えば、客室専用の端末で設定したエアコンの温度や、ルームサービスで注文したワインの銘柄などが挙げられます。そうした情報を残しておけば、次回の宿泊時、客室の温度をお客様の好みに合わせて設定したり、ルームサービスのおすすめメニューとして同じワインを提示したりできるでしょう。

ホテルをデジタル化することのメリット

デジタル化の推進は、お客様にとってもホテルにとってもメリットをもたらす可能性が高いといえるでしょう。期待できるメリットの例を紹介します。

お客様にとっての利便性向上

デジタルツールは、お客様に快適な滞在を提供することに役立ちます。

例えば、スマートチェックイン・チェックアウトはフロントでの待ち時間や宿泊カードを記入する手間を削減してくれます。長旅で疲れているお客様は「一刻も早く客室で休みたい！」と思うもの。ホテルに入館してから客室に入るまでがスムーズになることはメリットです。

また、デジタルツールに蓄積されたデータによって、自分に合ったサービスを受けられるようになることも嬉しいポイント。より満足度の高いホテルステイを楽しめるのではないでしょうか。

ホテル運営の効率化

デジタルツールの導入によって、ホテルのオペレーションを全般的に効率化できる可能性があります。

例えば、チェックアウトをデジタル化することで業務負担が減るのは、フロントスタッフだけではありません。ホテル館内の状況を全体的に管理するシステムと連携すれば、どの客室がチェックアウト済みなのかひと目で把握できるでしょう。客室清掃スタッフが効率的に業務を進められるようになるはずです。

デジタルツールをひとつ導入することで、複数の業務を同時に効率化できる可能性があるといえるでしょう。

収益の拡大

デジタルの顧客管理システムの中には、分析機能がついているものが多く見受けられます。お客様の年齢層やグループの構成、ひとりあたりの単価といった情報を集めて分析してくれるので、今後のマーケティングにいかして収益を上げることに役立つのではないでしょうか。

また、宿泊料金は曜日や季節、イベントの有無といった要素で変動させることが一般的です。そうした情報を自動で集め、過去の宿泊データを分析した上で適切な宿泊料金を提案してくれるデジタルツールもあります。

デジタルツールを活用すれば、カンに頼るのではなく事実としてあるデータをもとにした経営戦略を立てやすくなるでしょう。

ホテルにおけるデジタルツールの導入事例

ホテルにデジタルツールを導入することで、お客様の利便性を高め、さらなる利益を獲得できる可能性があるのですね。ここでは、デジタルツールの活用によってよい効果を得られたホテルの事例を紹介します。

スノーリゾートとして有名な北海道のニセコエリアのホテルでは、地域のアクティビティをワンストップで予約できるデジタルツールを導入しました。

地域のスキー教室やリフト券などの予約をホテルが案内し、受付や料金の支払いはデジタルツールを使って代行。収集した予約データはシャトルバスの運行や臨時駐車場の開設といった対応の判断にも役立ったということです。

この取り組みによって、2023年～2024年の冬季におけるニセコエリアのホテルやリフト券、交通手段といった商品の販売総額は70億円以上にのぼりました。

地域のホテルアクティビティ事業者が連携することでアピールの機会が増えたことや顧客にとっての利便性が高まったことなどが、プラスに働いたのではないでしょうか。

参考:観光分野のDX推進に向けた優良事例集～地域一体で進める観光DX～/国土交通省 観光庁

デジタルツールの活用でホテルをもっと快適にしよう

「ホテルにデジタルツールを導入するとお客様に不親切な印象を与えるのでは？」という懸念を抱くかもしれませんが、上手に活用することでさらによいサービスを提供できるはずです。お客様のニーズや負担を削減したい業務などを考慮して、適切なデジタルツールの導入を検討してみてくださいね。

なお、ホテルの採用活動についてはおもてなしHRにご相談ください。おもてなしHRは宿泊業に特化した採用支援サービスです。ホテル業務の経験者や、サービスの仕事に高い関心を持っている求職者が多数登録しています。

おもてなしHRの詳しいサービス内容が気になる方は、資料請求がおすすめです。下のボタンから無料でダウンロードできますので、お気軽にお問い合わせください。