パティシエになるのに資格は必要?
パティシエは「子どもが将来なりたい職業ランキング」で、常に上位にランクインする人気職業です。憧れの職業であると同時に、何年も修行を積んでようやく一人前になれる厳しい世界というイメージがありますが、パティシエになるためには特別な資格や免許は必要なのでしょうか。
その答えはNO。資格や免許がなくてもホテルや洋菓子店などで働いて、洋菓子作りに携われば「わたしはパティシエです」と名乗って良いのです。しかし「何年も修行を積んでようやく一人前になれる厳しい世界」であることはイメージ通り。
名実ともに一人前のパティシエを目指すなら、取得したほうが有利に働く資格はあります。パティシエを目指す人・パティシエとしての実力を高めたい人に適した資格や、資格の取得方法を見ていきましょう。
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パティシエに適した資格
民間のものを含めると、お菓子作りの資格には結構な種類があります。民間資格もそれぞれに利点がありますが、プロのパティシエにまずおすすめしたいのは国家資格。パティシエに役立つ4つの国家資格を紹介します!
製菓衛生師免許
製菓衛生師とは、「製菓衛生法」で定められた国家資格。洋菓子・和菓子といったお菓子のジャンルを問わず、さまざまな製菓技術や衛生知識を修得した証明となる資格です。
つまり安心して食べられるお菓子を作れます、正しい製菓技術を持っています、といったパティシエの基本スキルを身に付けた証しなのです。
製菓衛生師の免許を取るにはまず、受験資格を得る必要があります。製菓衛生師の受験資格は、以下の条件を満たす人に与えられます。
1.義務教育を修了し、菓子製造業で通算2年以上の実務経験を積むこと
実務経験として認められるのはもちろん製造業務のみです。たとえばケーキ店で働いていても、事務や経理などの仕事をしていた場合は認められないので注意しましょう。
菓子製造をしていればパート・アルバイトでも実務経験として認められます。ただし、パート・アルバイトの場合は週4日以上、1日6時間以上の勤務が条件です。
また、実務経験の2年間は通算できるという点も覚えておくと良いでしょう。「A洋菓子店で1年半ケーキを作り、Bレストランで半年間デザートを作っていた」といったパターンでも、受験資格を得られます。
2.厚生労働大臣が指定する製菓衛生師養成施設を卒業すること
製菓衛生師養成施設とは、製菓専門学校や調理学校、製菓コースのある高校や短期大学、資格学校といった施設です。
学校によっては1年間で卒業できることや、資格試験の対策までカバーできる点がメリットではないでしょうか。
上記のいずれかの条件を満たせば菓子衛生師の資格試験が受けられます。実務経験を積んだのか、製菓学校などを卒業したのかによって受験申込時の提出書類が異なるので、詳細は「全国製菓衛生師養成施設協会」のホームページで確認しましょう。
試験内容は以下の通り。
- ・衛生法規
- ・公衆衛生学
- ・食品額
- ・食品衛生学
- ・栄養学
- ・製菓理論および実技
筆記試験は4択のマークシート式で、60問の出題です。実技については、和菓子分野・洋菓子分野・製パン分野から選択できます。パティシエだからといって必ずしも洋菓子分野を選ぶ必要はありません。得意分野を選ぶと良いでしょう。原則、60%の正解率で合格です。
また、菓子衛生師試験の合格率は例年70%~80%です。きちんと勉強しておけば十分に合格を狙えるのではないでしょうか。
試験に合格した後は居住地の都道府県知事に、登録と免許交付申請が必要です。
菓子製造技能士
菓子製造技能士とは、働く人の技能を国が検定・証明する制度である「技能検定」に合格した菓子製造業者に与えられる国家資格。和菓子部門と洋菓子部門があります。
菓子製造技能士の資格を取れば「お菓子作りの知識や技能がある」ということを、国から証明されたことになるのです。中級者向けの2級と上級者向けの1級に分かれており、受験資格が異なります。それぞれの受験資格を見てみましょう。
【2級】
職業訓練指導員免許の取得者、製菓の職業訓練を修了した人、各種学校で製菓を専攻し卒業した人は実務経験なしで受験可能です。これらに該当しない人は2年間の実務経験が必要。
【1級】
職業訓練指導員免許の取得者、製菓の職業訓練を修了した人、各種学校で製菓を専攻し卒業している場合は職業訓練や学校の種類によって1年〜6年の実務経験が必要。
ただし、2級に合格すれば実務経験の必要期間が短くなります。例えば、製菓専門学校を出ている場合、通常5年間の実務経験が必要ですが、2級に合格すれば合格後2年間の実務経験で受けられるようになります。
必要な実務経験の年数は、それぞれの経歴によって変動するので、自分がどれに該当するのかをよく確認しましょう。
菓子製造技能士の試験は、筆記試験・実技試験があります。洋菓子部門2級の実技試験ではボンボン・ショコラ2種類の製造とデコレーションケーキの仕上げ、1級の実技試験ではビスキュイ・ア・ラ・キュイエールの製造と3種類のクリーム絞り、デコレーションケーキの仕上げが課題(2021年7月時点の情報)。
合格率は50%以下で、やや難関の国家資格です。受験する場合はしっかりと対策を取りたいですね!
調理師免許
調理師免許は調理や食に携わる仕事全般で、持っていると有利になる資格です。洋菓子に特化した技術・知識が身に付くというわけではありませんが、採用されやすくなったり、良い待遇で働けたりといったメリットがあるのです。
調理師免許については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ、併せてご参照ください。
食品衛生責任者
食品衛生責任者とは事業所で、食品を製造・販売するための資格です。食品を製造・販売する事業所には必ず食品衛生責任者の有資格者を配置しなければなりません。将来、自分で洋菓子店やカフェを開きたい!という人は、ぜひ取得しておきましょう。
なお、食品衛生責任者の資格を取るには通常、数時間の講習を受ける必要がありますが、この記事で紹介した製菓衛生士や調理師の資格を持っていれば、申請のみで取得できます。
ホテル&旅館業界の就職・転職についての記事
ホテルでパティシエの腕を磨こう
ホテルのカフェやレストランは、一人前のパティシエになるための資格取得を目指したり、パティシエとしての腕を磨いたりする場所に適しています。
洋菓子店ではケーキなどを箱詰めにして売りますが、ホテルのパティシエはお皿に美しく盛り付けるところまでが仕事です。お菓子を最大限に楽しんでもらうための空間演出も重要。お菓子作りだけでなく盛り付けや空間演出のスキルを身に付けられる点は、ホテルで働く大きなメリットでしょう。
また、ホテルは洋菓子店よりも求人件数が多く、組織として大きい傾向にあるのでしっかりと修業を積めるはず。フランスやドイツなどお菓子の本場で修業したい!という人にも、ホテルは適しています。福利厚生で外国語を習えたり、研修旅行に行けたりするかもしれません。
また、パティシエはタレント性のある仕事です。お菓子の評判が高ければ、人気パティシエとしてホテルの看板となり知名度が上がるでしょう。有名ホテルの人気パティシエとして知られれば、将来自分のお店を出す際に有利です。
資格取得をゴールと捉えるのではなく、パティシエとしてさらなる高みを目指す心意気で、ぜひホテルで働くことにチャレンジしてみましょう!
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