有給休暇の期限とは
有給休暇は賃金が発生する休暇です。雇用形態や勤続年数に合わせて日数が異なり、入社から半年経過すると毎年付与されます。有給休暇は、労働者の心身の疲労回復を目的にされたものです。使用するために、特別な理由は必要ありません。適度に適切に休むことは、心身を健やかに保つために重要なことです。
有給休暇の有効期限
有給休暇には有効期限があります。有給休暇の期限は、労働基準法によって2年間と定められています。その期限内に使用しなければ、自然消滅してしまいます。
入社半年後に付与された有給休暇は、付与日から2年後、入社から2年半後には消えてしまうことになります。付与日数は勤続年数に応じて段階的に増え、最大20日間が付与されます。
有給休暇そのものは、会社が独自に導入する制度ではなく、労働基準法に定められた労働者の権利です。使用者である企業は、休ませる義務があります。そうはいっても、使用することにためらいの気持ちを持つ人や、取りにくい社風ということもあるでしょう。人手不足の中では、思うように休めないのが現実です。
使いたいけれど、使い切れない。知らぬ間に有効期限がきて消滅してしまった……という人も少なからずいるようです。有効期限があるということを、労働者自身も認識しておく必要があるでしょう。
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有給休暇の期限は延長できる?
労基法で定められた2年間という有効期限。これは法定の最低基準です。下回ることは違法になりますが、上回ることに自体は問題ありません。使い切れない有給休暇の期限が延長されることは、労働者にとってメリットのあることです。そうはいっても、有給休暇の保有日数が増えれば管理も煩雑になります。
また、心身の疲労を回復するのが有給休暇の目的であることを考えると、有効期限が伸びることによって、消化率が下がるという懸念があります。実際に、国内の有効期限消化率は50%程度と、高くはありません。有効期限があるということが、使用に対する意識をもたらすこともあるでしょう。そう考えると、期限を伸ばすことは必ずしも有効な手段であるとは限りませんね。
有事など、社内全体が有給休暇を使用することができない環境にある場合に、特例で延長を認めるというのは良いかもしれません。
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労基法の時効期間延長と有給休暇の期限の関係
令和2年4月1日に、労働基準法が改定されました。そこで改正された消滅時効に関する規定。賃金請求権の消滅時効期間が、2年から 5年(当面の間は 3年)に延長されたことは、有給休暇の有効期限に影響はあるのでしょうか。
賃金の消滅期間改正
賃金の消滅期間は、発生した賃金がいつまで有効であるかというもの。労基法の改定により、未払いの賃金や残業代・各種補償があった場合の、その賃金を請求できる期間が延長されました。これまでは2年であったものが、原則として5年に延長されています。
本来発生すべき賃金が受け取れなかった場合、いつまで遡ることができるのか。その期間を延長することで、未払い賃金の発生を防ぎ、労働者は正当な賃金を受け取ることを目的としています。
有給休暇は賃金が発生する休暇です。賃金という点で考えると、この改定は有給休暇にも関係があるように思えますね。有給休暇の有効期限は2年間。2年を経過して使用されなかったものは、消滅してしまいます。つまり、本来受け取れる賃金を受け取れなくなります。有効期限も5年に延長されるのでは?と考えることもできそうです。
有給休暇の目的は、休むことにあります。心身をリフレッシュするという本来の目的を鑑みると、有効期限を延長することは制度の趣旨に沿わないと考えられています。そのため、この改定があっても有給休暇の有効期限は変わりません。
有給休暇は消化することが前提にある
有給休暇に期限が定められているということには、積極的な使用に向けた目的があります。期限が迫ると、間に合うように使わなければ……という心理が働くものですよね。
有効期限の延長は、労働者にとってメリットのあるもののように思えますが、適切に休むということを考えると、決して良い手段とは言えません。有給休暇は心身の疲労を回復することで、ゆとりある生活と補償するために付与されるものです。
有給休暇は、休むこと、消化することが前提にあるものなのです。使い切れないから期限を伸ばすのではなく、使い切るためにどうしたら良いかと考えるのが正解です。労働者は計画的に使用することを、企業は使用しやすい環境や制度作りを目指していくべきでしょう。