東京から地方へ移住する人が増えている
昨今、東京都からの転出者が増加傾向にあるようです。総務省統計局が発表した、転出者前年比のデータを下表にまとめました。
2021年 | 2020年 | |
4月 | 55,362人 | 55,033人 |
5月 | 29,196人 | 23,594人 |
6月 | 29,807人 | 27,371人 |
前年と比較し、転出者が増えていることがわかります。
その一方で、「東京から地方への就職は難しいのではないか」という懸念を抱く声も、少なからずあるようです。
果たして、本当に東京から地方への就職は難しいものなのでしょうか。
データ参照:統計局ホームページ/住民基本台帳人口移動報告
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東京から地方への就職は難しい?
東京から地方への就職が難しいとされる理由として、企業や求人の数が少ないことがよく挙げられます。
しかし、有効求人倍率に注目してみると、東京と地方の間に目立った隔たりはなく、地方によっては東京よりも倍率が高い場合もあります。
独立行政法人労働政策研究・研修機構が発表している「都道府県別有効求人倍率」によると、有効求人倍率が一番高かったのは福井県(1.79倍)、低かったのは神奈川県と沖縄県(0.80倍)でした。
確かに、やりたい仕事や労働条件を第一の軸として東京から地方に就職するのは、少々難易度が高いかもしれません。
しかし、「地方で働く」ことを軸にして就職先を探すなら、東京から地方への就職が極端に難しいということも無いのではないでしょうか。
また、移住について本格的に検討するなら、仕事だけでなく暮らしの面でのミスマッチが起きないか、という点についても注意しなければなりません。
次の項目では、東京から地方へ就職した人のエピソードを、成功例と失敗例に分けてご紹介していきます。
ご自身の性格と照らし合わせながら、移住に向いているのか否かを慎重に見極めましょう。
データ参照:職業紹介-都道府県別有効求人倍率:主要労働統計指標|労働政策研究・研修機構(JILPT)
ホテル&旅館業界の就職・転職についての記事
東京から地方へ就職した人のエピソード
東京から地方へ就職した方の体験談を、二例ご紹介していきます。
たとえ同じ地方に移住したとしても、その選択が成功だったと感じるか、はたまた失敗と捉えるかは、各々の性格によって大きく変動するでしょう。
移住したい地方の特徴を調べるのはもちろんのこと、こういった体験談も参考にしながら、移住について考えてみてくださいね。
成功例
以前より九州地方への移住に興味があったため、転職を機に思い切って移住をしてみることにしました。
慣れない地で不安も大きかったのですが、幸いにも近所に親切な人が多く、また地域の催しにも積極的に参加するようにしていたため、思っていたよりも早く馴染めたように思います。
また、寒いのが苦手な私にとっては非常に過ごしやすい気候で、新鮮で美味しい食材も簡単に手に入り、日々充実した生活ができていると感じています。
東京に比べると遊べる場所はガクンと減りましたが、アウトドアが趣味なのであまり苦に感じません。むしろ、気軽にレジャーを楽しめるようになったことへの嬉しさの方が強いです。
元々お試し感覚の移住ではありましたが、居心地がいいのでこのまま定住しようかと検討しています。
(30代後半/男性)
失敗例
田舎での生活に憧れて東京から移住したのですが、今ではその選択を後悔しています。
まず、交通機関の不便さに驚きました。電車やバスの本数が少なく、乗り遅れると長い時は1時間以上待たされることも珍しくありません。車がないと生活は難しいでしょう。
また、人間関係が密すぎることにも息苦しさを覚えます。
顔と名前だけでなく、乗っている車の車種まで把握されているので、外出先で声をかけられたり、出かけた次の日に「昨日〇〇にいたでしょ」なんて聞かれることもしばしば……。
そして何より困ったのが、冬場の雪かきです。東京ではあまり降らなかったので気に留めていなかったのですが、東北地方へ移住したため、初めて冬を迎えた時は仰天しました。
肉体的にもきついのですが、雪かきをしてもしても新しい雪が積る様子にうんざりしてしまいます。
他にも暮らし辛さを感じる点が多々あり、最近では東京に帰ることも真剣に考えるようになりました。
(40代前半/女性)
移住へ向けた作業を本格的に始める前にやっておくこと
東京から地方への就職及び移住をする際、もっとも重視すべき点は「移住先で暮らしていけそうか」という部分に尽きるでしょう。
いくら地方で実現させたい目標があっても、その土地で暮らすのに大きな苦痛を感じてしまうようでは、早々に東京へ帰ることになりかねません。
後悔が残る移住になってしまわないためにも、これからご紹介する3点について、移住に踏み切る前にしっかりと検討しておきましょう。
移住したい地方と自身のライフスタイルに大きなズレがないかチェック
誰しも、理想的な生活スタイルというものがあるはず。そのすべてを実現できるような地方があるとは限らない上に、100%実現不可というパターンも十分あり得ます。
特に注意が必要なのが、人とコミュニケーションを取るのが苦手な人。地方に行けば行くほど、地域の繋がりは密接なものになります。
積極的に関わりを持とうとする人や、逆に東京からの移住者に良い印象を持たない人など、地方にはさまざまな相手がいます。
いずれにしても、ご近所さんが良い人でもあまり良くない人でも、東京より確実に濃い関わり方が求められるでしょう。
そのため、人々と上手な距離感で付き合う自身がまったく無い方は、移住についてもう一度考え直した方がいいかもしれません。
また、文化的な趣味に熱を傾けている人も注意が必要です。
映画館、美術館、ライブハウス、劇場などが一切存在しない地方も多く、一番近い施設に行くために何時間もかけて移動する必要があるため、多大な負担がかかってしまいます。
これらはあくまで一例なので、地方での暮らしを具体的にシミュレートし、その環境で自分が生きて行けるのかを、慎重に考えてみてください。
地方へ移住する動機について改めて考える
地方へ移住したいという気持ちは、決して否定されるべきものではありません。ただし、思い切りだけで事を進めてしまうと、失敗する確率がアップするのもまた事実です。
大切なのは、地方に移住しなければならない理由を明確にすること。
ただ漠然と「東京は疲れたから別の場所に行こうかな」くらいの気持ちでいると、やっぱり東京に残っているべきだったと後悔する結果を招くかもしれません。
そうならないためにも、地方へ移住する理由を明確にし、本当に移住に踏み切るべきなのかを検討してみましょう。
やりたい仕事が地方にあるか調べる
「暮らし」の部分だけにフォーカスして移住について考えた結果、仕事に関する情報が不足し、「いざ移住したらやりたい仕事がない……」という状況に立たされた人も。
もし移住したい地方が固まりかけたら、求人情報や企業について調査し、自分にできそうな仕事がありそうか確認しておくと安心ですよ。
東京から地方に就職する人へ向けた支援サービスを紹介
最後に、東京から地方に就職する人へ向けた支援サービスをご紹介していきます。
起業支援金
起業支援金とは、都道府県が地域の課題解決へと繋がる社会的事業を起業する方に対し、交付金を支給する事業です。
起業のための伴走支援と事業費への助成を通じて効果的な起業を促進し、地方創生を実現することを目的としています。
事業分野は幅広く想定されており、
・子育て支援
・地域産品を活用する飲食店
・買い物弱者支援
・まちづくり推進
など、地域の課題に応じた事業の起業が対象となります。
都道府県が選定した執行団体が、計画の審査や事業立ち上げへの支援を行うとともに、起業に必要な経費の2分の1に相当する額を交付します。
なお、地方へ移住して社会的事業を起業した場合には、移住支援金と起業支援金の両方が受けられるケースがあるようです。
金額は最大200万円支給されますので、地方での起業をお考えの方は、ご自身が対象になっていないかチェックをしておきましょう。
データ参照:起業支援金・移住支援金 – 地方創生|内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局 内閣府地方創生推進事務局
移住支援金
移住支援金とは、東京23区在住者、または通勤者が東京圏外(東京圏内の条件不利地域を含む)に移住する際、
・移住支援事業を実施する都道府県が指定した中小企業等に就業した方
・起業支援金の交付が決定された方
に対し、都道府県や市町村が共同で交付金を支給する事業を指します。
なお、「東京圏」と「東京圏内の条件不利地域」の区分は以下の通りです。
<東京圏>
東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県
<東京圏内の条件不利地域>
東京都
檜原村、奥多摩町、大島町、利島村、新島村、神津島村、三宅村、御蔵島村、八丈町、青ケ島村、小笠原村
埼玉県
秩父市、飯能市、本庄市、ときがわ町、横瀬町、皆野町、小鹿野町、東秩父村、神川町
千葉県
館山市、勝浦市、鴨川市、富津市、いすみ市、南房総市、東庄町、長南町、大多喜町、御宿町、鋸南町
神奈川県
山北町、真鶴町、清川村
移住支援金の支給額は都道府県によって異なりますが、100万円以内(単身の場合は60万円以内)の額と定められています。
データ参照:起業支援金・移住支援金 – 地方創生|内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局 内閣府地方創生推進事務局
移住支援金とは?地方へ移住する際に支援金が支給されるケースも!
東京から地方への就職は難しくない!
距離が離れているということもあり、東京から地方への就職に不安を覚えている人も少なくありません。
しかし、就活の軸次第では、就職先を見つけることはそこまで困難ではないでしょう。
むしろ、移住後の生活について、自身に合うか合わないかをじっくり検討することが大切です。地方の特性と自分の性格がミスマッチを起こさないか、慎重に考えてみてくださいね。
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