旅館に滞在しているお客様にさまざまなサービスを提供する仲居。名前はよく耳にしたことがあっても、具体的にどのような仕事をしているかまでは詳しく知らない人もいるかもしれません。この記事では、仲居の仕事内容や一日の流れ、やりがい、大変なところなどを詳しく解説します。仲居として実際に働く前に、まずは仕事内容をしっかりと理解しておきましょう。
仲居の主な仕事内容
仲居は、旅館に滞在しているお客様にさまざまなサービスを提供する仕事です。ここでは、仲居の主な仕事内容を詳しく紹介します。
お出迎え・お見送り
お客様が到着すると、仲居は玄関で笑顔でご挨拶をし、荷物を預かるなどの対応を行います。旅館によっては、お客様の車を玄関先で誘導したり、荷物を運ぶサポートをしたりすることもあるようです。
特に格式の高い旅館では、正座でのお迎えや、丁寧なお辞儀など、礼儀作法を重視した接客が求められることもあります。
お見送りも同じで、お客様に「またこの旅館に来たい」と思っていただけるように、笑顔で感謝の気持ちを伝えながら手を振って見送ります。
客室への案内
チェックイン後、お客様をお部屋までご案内し、旅館の設備や過ごし方について説明します。
たとえば、浴衣の着方や温泉の利用方法、館内の施設案内など、お客様が快適に過ごせるようにサポートするのも仲居の役割です。
お部屋に到着すると、すぐにお茶とお菓子を提供し、一息ついてもらいます。この際、軽い会話を交えながら、お客様のご要望を聞き取ることも大切です。
旅の目的や好みに合わせて、観光スポットやおすすめの過ごし方を提案することで、より満足度の高い滞在につなげられるでしょう。
食事の提供・配膳
仲居は、お客様のもとへ料理を運び、一品ずつ丁寧に配膳します。特に懐石料理などのコースでは、提供するタイミングが重要となるため、調理場との連携が欠かせないでしょう。
また、料理の説明をすることもあり、「こちらは地元の名産〇〇を使ったお料理です」といった紹介を交えることで、お客様の満足度を高めることができます。
食事中のドリンクの注文を取ったり、お客様の会話を邪魔しないように配慮しながら接客を行ったりします。
布団の準備・片付け
お客様が夕食を楽しんでいる間に、仲居は客室に戻り、布団の準備を行います。布団を敷く際には、部屋の広さやお客様の人数に合わせて配置を考え、寝心地のよい環境を整えます。
旅館によっては、枕元にお茶やおしぼりを用意するなどの細かな気遣いをすることも大切です。
朝は起床後に布団を片付け、客室を整えます。スムーズに作業を進めるためには、チームワークが必要です。
特にチェックアウトの時間が近い場合は、ほかのスタッフと連携しながら手際よく作業を進めます。
館内での接客・雑務
仲居の仕事は客室対応だけではありません。館内でお客様に出会った際には、笑顔で挨拶をしたり、温泉や売店の場所を案内したりすることもあります。
また、タクシーの手配や観光案内を頼まれることもあるため、状況に応じて臨機応変な対応が求められるでしょう。
さらに、売店でのお土産販売の手伝いや、宴会の準備・片付けを担当することもあります。
このように、仲居は旅館全体の運営を支える存在でもあるため、接客以外の業務にも積極的に取り組むことが求められるようです。
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仲居の仕事|一日の流れ
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仲居の仕事は、旅館によって異なります。とある旅館の勤務時間を参考に、一日の流れを確認しておきましょう。
なお、以下は8:00~22:00の間で実働7.5時間の中抜け・休憩60分のスケジュールを想定しています。
時間帯 | 主な業務内容 | 詳細 |
8:00~10:30 | 朝食の提供・片付け | お客様の朝食を配膳し、食後の片付けを行う |
10:30~11:30 | チェックアウト対応・お見送り | 荷物の運搬補助や玄関でのご挨拶 |
11:30~12:30 | 客室の布団片付け・アメニティ補充 | チェックアウト後の客室を整える |
12:30~16:00 | 中抜け(休憩) | 休憩・仮眠・自由時間など |
16:00~17:00 | チェックイン対応 | お客様のお出迎え・荷物の運搬補助 |
17:00~18:00 | 客室への案内・館内説明 | 館内の施設案内・お茶出し |
18:00~20:30 | 夕食の提供・追加注文対応 | 食事の配膳、お料理の説明、ドリンク提供など |
20:30~22:00 | 片付け・布団敷き | 食後の片付け、布団敷き、翌朝の準備 |
仲居の仕事は、お客様の滞在スケジュールに合わせて動きます。
そのため、朝食・チェックアウト対応から始まり、夕方のチェックインや夕食の提供まで、朝から夜まで長時間拘束されることも多いです。
しかし、途中に「中抜け(休憩)」を挟むことで実働時間は7.5時間に調整されています。この中抜けの間に食事をとったり、仮眠をとったりして後半の勤務に備えます。
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仲居の仕事に必要なスキル
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仲居の仕事では、お客様に快適な時間を提供するために、さまざまなスキルが求められます。仲居として身につけておきたいスキルは以下のとおりです。
- 接客マナー
- 礼儀作法
- 着物の着付け
- 体力
- 気配り力
- 臨機応変な対応力
- コミュニケーション力
- 語学力
これらのスキルを磨くことで、より質の高い接客ができるようになります。なお、以下の記事では仲居に必要なスキルについて詳しく解説していますので、参考にしてくださいね。
仲居の仕事のやりがい
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仲居の仕事は体力が必要だったり、忙しい時間帯があったりしますが、その分大きなやりがいを感じられる仕事といえます。仲居の仕事のやりがいは以下のようなものがあります。
- お客様から直接感謝の言葉をもらえる
- お客様の思い出作りに貢献できる
- チームワークで旅館を支える達成感がある
- 旅館ならではの接客スキルが身につく
- 日本の伝統文化やおもてなしを体験できる
- 日々の業務の中で成長を実感できる
仲居の仕事はお客様の笑顔を間近で感じられる、やりがいにあふれた仕事といえそうです。努力した分だけ、自分の成長や喜びにつながるのが魅力といえるでしょう。
なお、以下の記事では仲居の仕事のやりがいについて詳しく解説していますので、参考にしてくださいね。
仲居の仕事の大変なところ
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仲居の仕事はやりがいがある一方で、大変な場面もあります。ここでは、仲居の仕事で特に大変だと感じるポイントを見ておきましょう。
体力仕事が多い
仲居の仕事は、配膳や布団の準備、お客様の荷物運びなど、常に身体を動かす業務が多いのが特徴です。
食事の時間帯はお盆や料理を運ぶために何度も行き来し、宴会場や客室での配膳では重い器を持ち運ぶこともあります。また、布団を敷いたり畳んだりといった作業もこなします。
たとえば、旅館の造りによっては階段の上り下りが多いところもあるので、最初は大変だと感じるかもしれません。
しかし、動きのある仕事だからこそ体力が自然とつき、慣れてくるとスムーズにこなせるようになります。
繁忙期は休みが取りにくい
旅館は観光シーズンに大きく影響を受けるため、お盆や年末年始、ゴールデンウィークといった長期休暇シーズンは特に忙しくなります。
この時期は宿泊客が増え、通常よりも多くの業務をこなさなければなりません。そのため、仲居のシフトもフル稼働となり、まとまった休みを取りにくいこともあります。
また、繁忙期はチェックイン・チェックアウトが集中し、通常よりもバタバタとした環境になりやすいですが、その分チームで協力しながら仕事を進める一体感や達成感を味わえるのもこの仕事の醍醐味です。
忙しい中でもお客様から「素敵な時間を過ごせました」「また来ます」といった言葉をいただけると、疲れも吹き飛ぶようなやりがいを感じられるでしょう。
勤務時間が変則的
仲居の仕事は、お客様の滞在スケジュールに合わせた変則的な勤務体系であることが多いです。
朝食・チェックアウト対応、夕方のチェックイン・夕食の提供など、業務のピークが複数あるため、8:00~22:00の間で働くことが多いですが、実働は7~8時間に調整されています。
特徴的なのは、「中抜け(休憩)」があることです。たとえば、12:30~16:00の間に休憩が確保されており、この時間を利用して仮眠や食事を取ることができます。
また、早番と遅番のシフト制を導入している旅館も多く、一日を通して働き続けることはありません。
生活リズムを整えるのが難しい面もありますが、慣れると効率よく休憩を活用し、メリハリのある働き方ができるようになります。
仲居の給料や年収事情
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厚生労働省が発表した令和5年賃金構造基本統計調査によると、旅館で働く仲居が含まれる「身の回り世話従事者」の1カ月あたりの所定内給与額は23万3,200円、年間賞与は24万4,700円です。これをもとに年収を計算すると、推定年収は約304万円でした。
ただ、この統計は仲居以外の職種も含まれているため、厳密に「仲居だけの年収」とは言えない点にも留意しておきましょう。
なお、以下の記事では仲居の年齢別の平均給与や年間賞与について解説しているので、詳しく知りたい方は参考にしてくださいね。
仕事内容を理解してから仲居の仕事に挑戦してみよう
仲居は、旅館に滞在しているお客様にさまざまなサービスを提供します。
接客マナーや礼儀作法、体力が必要な場面もありますが、その分やりがいも大きく、日本の伝統文化に触れながら働けるという魅力があります。
勤務時間が変則的で長時間の拘束になることもありますが、中抜け(休憩)があるため、実働時間はしっかり調整されています。
ただ、旅館ごとにシフトの仕組みが異なるため、自分に合った働き方ができる環境を選ぶことが大切です。
仲居の仕事に興味がある方は、まずは仕事内容や働き方を理解し、無理なく続けられる職場を探してみましょう。
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