エコツーリズムとグリーンツーリズムの違い
私たちは、自然の恵みに支えられながら生活しています。自然は大切だと分かりながらも、自然について学んだり、自然を守るための具体的な行動を取ったりしたことがある方は少ないかもしれません。
自然環境の破壊は、たびたび問題視されることがあります。自然環境を未来に引き継ぐためにも、改めて自然との向き合い方を考えなければなりません。
自然との向き合い方の1つに、ツーリズム(旅行)があります。これは、余暇を楽しむだけでなく、ツーリズムを通して自然との関わりを学ぶものです。
代表的なツーリズムに、「エコツーリズム」と「グリーンツーリズム」があります。
まずは、その違いについて紹介します。
エコツーリズム
自然環境や歴史文化を対象とし、それらを体験し、学ぶとともに、対象となる地域の自然環境や歴史文化の保全に責任を持つ観光のありかた
エコツーリズムは上記のように定義されています。
環境への負担に配慮しながら、地域の環境や文化などを学ぶことを楽しむものであり、自然環境や文化の保護・保全が優先されるのがエコツーリズムです。
2007年に成立したエコツーリズム推進法では、エコツーリズムを通じた「自然環境の保全」「観光振興」「地域振興」「環境教育の場としての活用」を図り、これらをうまく両立させていくことが基本理念に掲げられています。
自然環境や文化の保全に責任を持つというのが、エコツーリズムなのです。
グリーンツーリズム
緑豊かな農村地域において、その自然、文化、人々との交流を楽しむ、滞在型の余暇活動
グリーンツーリズムは上記のように定義されています。
農山漁村地域の住民との新たな架け橋をつくることを目的としているもので、地域に残る豊かな自然や、地域ならではの文化や食材を楽しむ活動がグリーンツーリズムです。
体験や宿泊施設の利用による消費を増やし、地域全体に利益をもたらすことも目的とされているため、宿泊を前提としていることが一般的です。
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エコツーリズムとグリーンツーリズムの共通点
エコツーリズムは、現地のガイドと一緒に山を散策したり、バードウォッチングをしたりしながら、「自然について学ぶ」ことを目的としています。
一方、グリーンツーリズムは、農山漁村に滞在しながら、農業体験をしたりカヌーやトレッキングをしたり、仕事や遊びを「自然の中で体験する」のが目的です。
「学ぶ」エコツーリズムと、「体験する」グリーンツーリズム。
観光の対象や楽しみ方、自然との向き合い方は異なります。
しかし、自然環境や地域資源を活用しながら、自然や文化の保全と地域振興を目指すという点は共通していると言えるでしょう。
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エコツーリズムとグリーンツーリズムの事例
北海道を舞台にした「エコツ―リズム」と「グリーンツーリズム」の事例を紹介します。
エコツーリズムの事例
2005年に世界自然遺産に登録された北海道東部にある知床半島は、大自然が体感できる観光スポットとして有名です。
シマフクロウやオジロワシ、シレトコスミレ等の希少な動植物が生息し、海鳥、渡り鳥にとっても重要な地域となっています。
世界遺産登録後には、特定の期間や地区に観光利用が集中し、交通渋滞、植生の踏み荒らし、ヒグマなどの野生動物との接し方に課題が生じたことがありました。
そのため、自然に対する考え方や接し方、楽しみ方を学ぶための、さまざまなエコツアーが実施されています。
- ・知床五胡で自然を観察するウォーキングツアー
- ・雪が積もる知床の絶景箇所を巡るスノーシューイングツアー
- ・夜の森を散策するツアー
このような知床半島らしい自然が体感できるツアーで、自然環境の保全と価値の向上を目指しています。
グリーンツーリズムの事例
北海道千歳市は、ブロッコリーや白菜・とうもろこし・じゃがいもなど、さまざまな野菜を生産している農家が多い地域です。
自然とふれあいながら、市民との交流がはかれるプログラムが豊富で、野菜の種まき・苗植え、収穫といった農業体験、市内の飲食店でピザ作りやパン作りなどが体験できます。
自然栽培を行う農園では、寝袋を持ち込んだ場合は無料で宿泊でき、暮らしながら農園での体験ができることも。
農村の人々との交流を通じて農業や農村への理解を深めてもらうだけでなく、地域で協力しながら取り組むことで、地域の活性化も目指しています。
エコツーリズムとグリーンツーリズムで自然を守る
自然環境の保全を重視している「エコツーリズム」と、農山漁村での交流を重視している「グリーンツーリズム」。
それぞれ違いはありますが、保全を目的としながら自然と向き合う時間を持つという、自然に対する思いには共通するものがあります。
自分にあった自然の楽しみ方で、豊かな自然と地域資源を守っていきましょう。