ワークライフインテグレーションとは?
ワークライフバランスという言葉は日本でも定着していますが、ワークライフインテグレーションは耳なじみが無いという方も多いのではないでしょうか。近年、注目が集まっているワークライフインテグレーションとは、どのようなものなのかをご紹介します。
ワークライフインテグレーションは新しい発想法
ワークライフインテグレーションとは、「仕事(work)」と「私生活(life)」を別物と捉えず、「統合(integration)」することで双方をより充実させるという考え方のことです。取り組み自体を指す場合もあります。
これまでの社会では、仕事と家庭のいずれかを選択しなくてはならないという風習がありました。しかし、ワークライフインテグレーションは、どちらも同じだけ大切なものであると捉え、時と場合によって柔軟に判断されるものであると考えられています。
ワークライフバランスとの違い
類似した言葉である「ワークライフバランス」との最大の違いは、「仕事と私生活を切り分け」て考えられているかどうかという点です。
ワークライフバランスは、仕事と私生活に明確な線引きがあります。切り分けた中で、双方のバランスを上手く保ちながら生活を送ることを目指すのが、ワークライフバランスなのです。
一方、ワークライフインテグレーションは仕事と私生活を切り分けた考え方をしません。「仕事の充実は、私生活の充実に繋がる」という考え方、もちろん逆も然りで「私生活の充実は、仕事の充実に繋がる」というような考え方に基づいて提唱されています。
ワークライフインテグレーションが広がった背景
日本でワークライフインテグレーションが広がったのは、2019年4月の働き方改革関連法の施行により、労働スタイルの多様化が求められるようになったことが影響していると考えられています。
2007年、政府がワークライフバランスについての憲章を策定、推進が始まったことを皮切りに、働き方に対する考え方が多様化されました。
しかし、ワークライフバランスの考え方は仕事と私生活は干渉されないことが前提であり、いずれかに比重がかかることは避けられないものです。未だに長時間労働やサービス残業が横行するという現状がある中で、私生活をも充実させるというのは困難を極めました。
そこで注目が集まったのが、ワークライフインテグレーションだったのです。
仕事と私生活は、人生を構成するうえではどちらも非常に重要なものです。人生100年時代が叫ばれる中、どちらか一方の選択を強いるのではなく、双方ともに共存させるべきと考える方が増え、相乗効果が期待できるワークライフインテグレーションに注目が集まったとも考えられています。
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ワークライフインテグレーションのメリット
仕事と私生活を統合して考えるワークライフインテグレーションを取り入れることで、どのようなメリットを享受することができるのでしょうか。ワークライフインテグレーションの4つのメリットをご紹介します。
仕事と私生活を両立できる
前述の通り、ワークライフインテグレーションでは仕事と私生活を切り分ける考え方はしません。どちらか一方を選択する必要はないため、必然的に仕事と私生活の関わりが深まり、双方に良い影響を与え続けることになります。
いずれかに比重がかかるワークライフバランスでは叶わなかった双方の両立がしやすくなるということが、ワークライフインテグレーションのメリットと言えるでしょう。
生産性の向上に期待が持てる
ワークライフインテグレーションの考え方を用いれば、仕事も私生活も行く先は同じものと捉えることになります。そのため、「遊ぶように働く」ということの実現に近づくのです。
強制的な労働環境から解放されれば、生産性が上がることにも期待が持てます。また、しっかりと私生活の時間を確保したいと考える方であれば、時間の使い方、捻出の仕方にも意識が向きます。ムダ・ムラ・ムリを取り除こうとすることもまた、生産性向上に直結するでしょう。
向上心・幸福度が高まる
ワークライフインテグレーションの考え方に切り替えることができれば、「働かされている」という意識から、「自分のために働いている」という意識に切り替えることができます。
このような考え方ができれば、向上心や幸福度が上がることにも繋がるはずです。
ダイバーシティの実現に近づく
ワークライフインテグレーションの取り組みを進める企業は、多様性があるサスティナブルな働き方を取り入れるように動いています。
時短勤務やリモートワークなどもその一例です。様々な人が働きやすい環境を整えることで、ダイバーシティの実現に一歩ずつ近づくことができるでしょう。
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ワークライフインテグレーションのデメリット
想像をするだけで、素敵な未来が思い浮かぶようなワークライフインテグレーションですが、メリットばかりではありません。より理解を深めるために、ワークライフインテグレーションのデメリットもあわせて押さえておきましょう。
高い自己管理能力が必要になる
ワークライフインテグレーションは、管理職の管理が行き届かない、あるいはあえて管理を強めないという姿勢が取られることが多いものです。よって、コーディネートは個人の自己管理能力により決定されます。
マネジメント力が低い従業員であれば、人によっては、これまで以上の長時間労働に陥ってしまう可能性がある、仕事と私生活の境界の無いワークライフインテグレーションには不向きとも言えるでしょう。
このように、個人の力量に左右されることが大きいことはデメリットと言えます。
従業員の評価制度の設計が難しくなる
一律ではなく、多様な働き方を良しとするワークライフインテグレーションでは、評価制度の設計難易度が上がることは避けられません。
平等な評価がなされないようになってしまっては、かえって従業員のモチベーションを低下させかねません。企業は、働き方に左右されない、平等感のある制度設計を再設計する必要があるでしょう。
ワークライフインテグレーションの取り組み事例
実際にワークライフインテグレーションへの取り組みを進めているという企業は、どのようなことを行っているのでしょうか。ワークライフインテグレーションの取り組み事例をご紹介しますので、自社への導入の際にはぜひ参考にしてみてください。
仕事・私生活の両立支援制度の導入
創業から100年以上となる大手電子機器メーカーでは、持続的な成長を続けることを目標に掲げており、ワークライフインテグレーションにも積極的な姿勢を見せています。
実際に設けられている制度は、「在宅勤務制度」をはじめ、元従業員を再雇用を進める「リエントリー制度」、育児や介護への専念が必要になった場合に一時的に管理職が役職を離れることができる「役割フレックス制度」など様々です。
従業員の人生に寄り添った制度設計がなされていることもあり、利用する従業員も少なくないようです。
ダイバーシティに関する研修の開催
ワークライフインテグレーションは考え方を浸透させることが重要、という考え方を持つとある製薬メーカーでは、制度の導入と同時に従業員が仕事と私生活について考えることができる機会を多く設けているようです。
具体的には、ジェンダーダイバーシティ、無意識の偏見であるコンシャス・バイアスなどに関する研修・ワークショップを定期的に開催し、現代までに蔓延ってきた職場優先という風潮や、性別による固定的な役割分担意識の是正を目指しています。
リフレッシュルームの設置
ベンチャー企業を中心に耳にすることが多くなったのは、職場内へのリフレッシュルーム設置をきっかけに、ワークライフインテグレーションへの考え方を浸透させる動きです。
仮眠室を設け15~30分程度の仮眠を認めるとしている企業、勤務中であっても職場内のジムでのトレーニングを推奨している企業など形は企業によって様々ですが、リフレッシュを行ったことで従業員のパフォーマンスが上がったという報告がいくつもなされています。
業務時間内のリフレッシュ時間を「サボり」と捉えてしまうことは、これからの時代には適していない考え方なのかもしれません。
ワークライフインテグレーション導入のポイント
企業がワークライフインテグレーションを導入する際には、どのようなことに気を付けるべきなのでしょうか。ワークライフインテグレーション導入の4つのポイントをご紹介します。
制度の理解促進を行う
ワークライフインテグレーションは、仕事と私生活を切り分けないという考え方であるため、自己管理能力が低い方は過労をしてしまう、あるいは私生活を大切にするという考えに偏り、かえって仕事の効率が下がってしまうという危険性も孕んでいます。
しかし、これではワークライフインテグレーションを導入した意味が無くなってしまいます。制度が設けられた背景や、制度を使うことにより期待できる効果などをしっかりと従業員に理解してもらわなければ、制度の形骸化・誤用に繋がりますので、注意してくださいね。
セキュリティやツールなどの基盤強化を行う
多様な働き方の中で昨今注目を集めているのは、働く場所や時間が拘束されないというリモートワークでしょう。
リモートワーク制度の導入に必要不可欠なのは、セキュリティの強化です。必然的に社内ネットワークへのアクセスが増えるようになるため、従業員1人1人のリテラシーを高める、強固なセキュリティ環境を構築するなどの対策を取らなければ、思わぬ損害に繋がりかねません。
また、ビデオ会議などを行う場合には、ツールの導入や適切な使用方法を展開するなどの事前準備も必要となります。総じて、基盤強化を行う必要があるということを覚えておきましょう。
評価基準の再設計
時短勤務、フレックス制度、リモートワーク制度など、様々な制度が導入されれば、働き方も従業員1人1人で異なることになります。
つまり、これまでのような月曜から金曜の平日出勤、9~17時までの勤務というような枠を大きく外れる従業員が増えるため、これまで同様の評価基準では平等な評価を下すことは不可能です。
ワークライフインテグレーションを進めるため制度を導入するのであれば、新制度を考慮した評価基準を再設計する必要があるでしょう。平等性が保たれないとわかればせっかく制度があったとしても利用者は増えませんので、企業全体で基準の再設計を行うようにしましょう。
従業員を管理しすぎない
多様な働き方を推奨するために制度設計がなされたにも関わらず、これまで同様、管理職が従業員を徹底的に管理をしてしまえばワークライフインテグレーションの実現は難しくなります。
一切管理をしないという訳にもいきませんが、従業員をがんじがらめにしてしまっては元も子もありませんので、管理職以上の従業員は、自社ならではの管理方法を確立できるように努めなければなりません。
ワークライフインテグレーションを宿泊業で取り入れるためには
ワークライフインテグレーションをホテル・旅館などの宿泊業で取り入れるために必要なのは、これまでの慣習に対する考え方の刷新が最も重要です。
お客様第一での仕事が当たり前であるため、長時間労働は避けられない、土日祝日は休みが取れないなどという固定概念を無くそうと動き出しているホテル・旅館も徐々に増えてきました。
ITを用いて省人化を行う、休館日を設ける、中抜けシフトを撤廃するなどの取り組みは、ワークライフインテグレーションの実現に向かう取り組みと言えるでしょう。
覆すことができない慣習ももちろんあるはずですが、思考し策を講じなければ何も始まりません。他業界などの導入例を参考に、少しずつワークライフインテグレーションの考え方を広げることで、より魅力的な業界へと変貌していくことでしょう。
ワークライフインテグレーションはシナジーを生む!
ワークライフインテグレーションは、仕事と私生活の両立を目指す、ワークライフバランスを発展させた考え方です。
これまでの働き方から大きく舵を切る必要があるため、導入は容易ではありませんが、導入が進めば個の能力アップ、ひいては企業全体の生産性の向上にも繋がります。多様性のある従業員を受け入れ、これからの時代を生き抜くために重要な考え方ということをぜひ覚えておいてくださいね。
また、ホテル・旅館などの宿泊業では、他業界からの転職者の受け入れ、雇用形態にとらわれない採用を進めることで、ワークライフインテグレーションの理解促進を進めることができるかもしれません。
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