採用内定の取り消しはすべきか?できるのか?
2020年の世界経済に大きな悪影響を及ぼしている新型コロナウイルスですが、その影響の大きさから、内定取り消しを余儀なくされてしまった企業もあるようです。
採用内定の取り消しは、2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災時にも多く行われたように、企業の経営状況により大きく左右されます。本記事をご覧になっている方の中にも、採用内定の取り消しを検討をしている企業担当者もいるのではないでしょうか。
しかし、採用内定の取り消しは簡単に行われるべきことではありません。内定者の生活がかかっているからです。
採用内定の取り消しはできるのか、また内定を取り消す場合には何に注意しなければならないのかを解説します。
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企業が採用内定の取り消しをするケース
一般的に、企業が採用内定の取り消しをするのは、大きく2つのケースに分かれます。内定者に問題がある場合、企業に問題がある場合のそれぞれのケースをみていきましょう。
内定者に問題が生じた場合
企業の経営状況に関わらず、内定者に何かしらの問題があった場合には、内定取り消しを余儀なくされます。下記がその一例です。
- ・単位不足などにより学校の卒業ができなかった
- ・内定までに必要な書類・資格の提示がなされなかった
- ・経歴詐称が発覚した
- ・SNSの不適切な投稿が発覚した
- ・妊娠などの急激な体調悪化がわかった
特に新卒採用時、内定者が学生から社会人に移り変わる時期である、大学生の内定から就職までの期間に、内定取り消しが行われることが多いようです。
企業が経営難になった場合
内定者に問題が無い場合でも、企業は内定取り消しを行う場合があります。今回の新型コロナウイルスによる経営難などがその一例です。
- ・急激な業績悪化で経営難に陥った
- ・業績悪化で事業縮小を余儀なくされた
企業側も新入社員の受け入れを行いたかったことでしょう。しかし、そこに手が回らないほどの経営難である場合は致し方場合もあります。
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採用内定の取り消しは簡単ではない
内定者に問題が生じた場合は、企業は然るべき対応を取れば問題ありません。しかし、内定者に問題がない場合の内定取り消しは簡単ではないということを覚えておきましょう。
なぜ、採用内定の取り消しのハードルが高いのかを解説します。
採用内定の取り消し=解雇
採用内定を行った時点で、企業と内定者間で労働契約が結ばれています。詳細に説明をすると、企業が「採用通知」を出し、求職者から「内定承諾書」の返送を受け、「内定通知書」を送った時点で、両者間で契約が結ばれるのです。
これは、業務開始時期とは関係がありません。内定取り消しを行った場合、法的には「解雇」という扱いになるのです。企業が労働者を解雇するには、それなりの要件が必要ということはご想像の通りです。
どのような要件であれば、内定取り消しが正当であると判断をされるのかを、次項でご紹介します。
整理解雇の4要件(4要素)とは?
解雇は、普通解雇・整理解雇・懲戒解雇の3種類に分かれます。企業の経営不振による人員削減は「整理解雇」に値しますが、整理解雇が認められるには4つの決められた要件を満たしていなければなりません。その要件は下記の通りです。
「整理解雇の4要件(4要素)」
1.人員削減の必要性2.人員削減の手段として整理解雇を選択することの必要性3.被解雇者選定の妥当性4.手続の妥当性
これら全ての要件を満たしていないものは、解約権の濫用にあたる「不当解雇」として、罰せられる可能性があります。
過去の凡例を見ても内定者の「不当解雇をされた」という訴えが認められ、企業が敗訴している事例が多くあるようですので、簡単に内定の取り消しはできるものではないということを今一度認識しましょう。
企業名を公表される可能性も
不当解雇として敗訴した場合には、内定の取り消しや損害賠償請求がなされます。これに加え、企業名を公表されるという可能性もあるため、内定取り消しはリスクが高いものと言えるでしょう。
下記は、内定取り消しのを行った企業のうち、企業名公表の対象となる厚生労働省の5つの定めです。
- ・2年度以上連続の内定取り消しを行った企業
- ・同一年度内10名以上の内定取り消しを行った企業
- ・事業活動の縮小を余儀なくされたと認められないままに内定を取り消した企業
- ・内定取り消しの理由について新卒内定者に十分な説明を行わなかった場合
- ・内定取り消しの対象となった内定者の就職先確保に向けた支援を行わなかった場合
一度企業名が公表されてしまえば、過去の履歴から消すことは不可能です。そのため、適切かつ正当な内定取り消しを行えなければ、経営難を大々的に公表すると同時に、来年度以降の採用にも良くない影響を引き起こすことになるでしょう。
採用内定取り消しの注意点
前述の通り、採用内定の取り消しは、経営破綻ほどの相当な妥当性が見られなければ原則行うことはできません。
とは言え、どうしても採用内定の取り消しを行わなければならないほどの経営不振に陥っているという企業もあるはずです。そのような企業が、採用内定の取り消しを行う時の注意点はどのようなものがあるのでしょうか。みていきましょう。
本当に「内定」であるかを確認する
初歩的なことですが、内定者が本当に「内定者」であるのかを改めて確認を取りましょう。口頭・メールだけで、採用選考の合格を言い渡したということはありませんか。また、採用通知後に求職者から内定承諾書の返送はもらいましたか。
求職者と書面の取り交わしが無ければ、法的な縛りはありません。心苦しくなることでしょうが、内定は求職者の「内定通知書」の受け取りが無ければ法的効力を持ちませんので、まずは求職者が法に守られる立場かどうかを確認してください。
あわせて、企業が内定取り消しを認められるかという妥当性の判断も、この時点で行っておくようにしましょう。
新卒の場合はハローワークの事前通知が義務
新卒採用の場合、ハローワークに事前に通知する必要があるということは新卒の内定取り消しの注意点と言えるでしょう。これは、職業安定法で定められている事項ですので、守らなくてはなりません。
補償・損害賠償の提示をし話し合いを行う
ハローワークへの通知後は、内定者への通知を行う必要があります。内定者への通知後には、内定者の次就業先確保への協力を行うこと、補償の要求に誠意を持って対応することが求められます。
また、厚生労働省の見解では、基本的に解雇予告は解雇日の30日前に行わなければなりません。予告がない場合には、不足日数分の解雇予告手当が発生するということも覚えておきましょう。
双方の納得が行く形で治められるよう、努力をしてくださいね。
独断はやめ弁護士などの専門家に相談を
ここまでご紹介したように、1人の力で採用内定の取り消しを行うのは難儀です。方法を誤れば、内定者から内定取り消しにかかる訴訟や損害賠償請求をされる可能性もありますので、少しでも不安を抱えるのであれば専門家に相談をするのが得策でしょう。
これは、内定者に問題がある場合・会社都合である場合、どちらにも共通して言えることです。まずは自社の法務などに相談を行い、必要に応じ労働管理局や弁護士などに相談をすることで、リスクを最小限に抑えることができるはずです。
一方的な採用内定の取り消しはリスクが大きい!
企業からの一方的な採用内定の取り消しは、原則不可能です。採用内定の取り消しを検討している企業があれば、事由の妥当性を厳しく判断されるということを忘れないようにしてくださいね。
また、どうしても採用内定を取り消さなければならないという企業がある場合には、内定者の就労支援を行う義務も生じます。そんな時には、私たち「おもてなしHR」がお役に立てることもあるかもしれません。
ホテル・旅館などの宿泊業に特化した求人サイトをはじめ、就職・転職支援も行っておりますので、サービス業などで関連性の高い業界で内定取り消しを余儀なくされた企業があれば、「おもてなしHR」へぜひご相談くださいね。