リファラル採用とはどんな制度?
リファラル採用の「リファラル」とは、英語で「referral(紹介・推薦)」という意味を持ち、従業員からの応募者を紹介・推薦をしてもらい採用活動を進める、近年日本でも注目されている新しい採用制度です。
欧米では既にリファラル採用の導入が進んでおり、とある企業の調査によるとアメリカでは約7割の企業がリファラル採用を導入していると回答をしたというほど、普及が進んでいます。
デメリットが少ないうえ、従業員のエンゲージメントも高まることから、外資系企業・大手企業・ベンチャー企業を中心に日本でも徐々にリファラル採用の制度導入が進んできました。
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リファラル採用制度が日本で増えている理由
日本でリファラル採用制度を導入する企業が増えたことには、下記のような背景があると考えられています。
- ・人手不足による人材採用難
- ・転職市場の活性化
- ・離職率の上昇
また、特に近年では、20~30代の若年層が「仕事に対するやりがい」や、「自身の成長」を重要視する傾向が高まっており、やりがいや成長を感じられない企業であれば、早期退職を決めるという人も増えています。
このような背景も相まって、転職市場はますます激化の一途を辿る中、志の高い人材を確保したいという企業の想いとマッチし、リファラル採用制度の導入が増えていると考えられています。
ホテル&旅館業界の就職・転職についての記事
リファラル採用制度のメリット
ここ最近採用市場で耳にすることが増えたリファラル採用制度ですが、企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。リファラル採用制度の5つのメリットをご紹介します。
採用コストの削減
従来の採用活動であれば、正社員を1人採用するには、場合は最低でも10万円ほど、高額であれば100万円以上の採用コストが発生していたという企業もあるでしょう。
リファラル採用制度であれば、企業が紹介者(従業員)に報酬を支払うこと一般的ですが、その報酬額も数千円~数万円程度が多く、企業によっては採用コストを0にすることも可能です。したがって、従来の採用活動よりも採用コストを大幅に削減することが可能です。
採用活動の工数削減
リファラル採用制度は、採用コストのみならず、採用活動の工数削減にも期待が持てます。
従来の採用活動であれば、求職者へのリーチを広げるため就職・転職サイトの複数登録や、人材派遣会社・人材紹介会社を経由した紹介など、広く採用活動を行っていたという企業もあるはずです。
しかし、リファラル採用制度を導入し従業員理解が深めることができれば、母集団を形成はリファラル採用でまかなうことができるため、他採用活動にかける時間を削減することができるはずです。
また、リファラル採用制度のみ、選考ステップを短縮するなど通常とは異なったフローで採用活動を行う企業であれば、そもそもの採用活動の工数削減に一役買ってくれることでしょう。
企業とマッチングしやすい応募者の増加
リファラル採用制度は、自社で勤めている従業員が声掛けを行うことによって成り立っています。
従業員は自身の中で「この人なら自社との相性が良いだろう」という判断のもと、友人や知人へ声をかけることが多いでしょうから、声掛けの時点である程度の判別がされているはずです。
求職者としても、その企業で働く従業員の生の声を聞き、納得したうえで選考に進むため、不特定多数の応募者を募るこれまでの採用活動よりも、企業と求職者のマッチングが高まることに期待が持てます。
これは、採用活動の効率化のみならず、採用した人材の早期退職を防ぐことにも繋がることでしょう。
採用市場外の人材と接点が持てる
リファラル採用制度は、求職中の顕在層のみならず、潜在層に対してもリーチをすることができます。言い換えれば、転職市場に現れていない層に対し、事前にアプローチをかけることが可能なのです。
優秀な人材であれば、求職活動もさくっと終えてしまうことでしょうから、先回りして企業をアピールすることができるリファラル採用制度は、優秀な人材の確保にも一役買ってくれることでしょう。
企業によっては、潜在層へのアプローチを増やすために、選考前に軽めの「カジュアル面談・会食」や「イベント」などを行い、まずは企業を知ってもらうことを目的にリファラルの採用活動を行っているという企業もあるようですよ。
社員のエンゲージメントの強化
いくら会社から「リファラル採用をします!」と言われても、自社に不満がある従業員であれば友人や知人に紹介することが後ろめたいと感じてしまうものですよね。従業員満足度(ES)が低ければ、紹介者が増えないため、リファラル採用の成功は難しいかも知れません。
そんな背景もあり、リファラル採用制度を導入している多くの企業は、ESを重視している傾向があります。リファラル採用の制度化を進めるまでに、ESを高める取り組みも行うことで、従業員のエンゲージメントは自ずと高まっていくことでしょう。
加えて、求職者は応募の時点から、応募企業内に「仲間」がいる状態となります。悩みごとや相談などを気軽に出来る仲間が社内にいることで、採用する人材のエンゲージメントも高まることでしょう。
リファラル採用制度のデメリット
採用活動に多くのメリットをもたらすため、デメリットがほとんど無いと考える企業も多いリファラル採用制度ですが、主に「人」に関するデメリットがあるということも押さえておきましょう。リファラル採用制度の4つのデメリットをご紹介します。
人材が偏りやすい
類は友を呼ぶという言葉もあるように、リファラル採用制度では、従業員自身の考え方や生き方に共感をしてくれるような人材に声掛けをすることが多いでしょう。
もちろん、企業として同じ方向性に向かう人材を採用できるに越したことはありませんが、リファラル採用ばかりに頼ってしまうと、思想をはじめ、職種や業種などの人材が偏ってしまう可能性があり、企業にとっての良い刺激が減ってしまうかも知れません。
そのため、リファラル採用一辺倒での採用活動には、注意が必要です。
リファラル採用の浸透に時間がかかる
いきなり「明日からリファラル採用を始めます!」と会社から言い渡されても、従業員は混乱してしまうものです。そのため、どのような目的があり、どのような企業成長をしていこうと考えているのかなどを、従業員に順を追って理解してもらう必要があるでしょう。
従業員の理解が進まない企業であれば、制度が名前だけとなってしまうということも考えられます。裏を返せば、日常的に経営者層から想いが伝達されている企業であれば、リファラル採用の浸透にさほど時間がかからないかも知れませんね。
採用に時間がかかる
潜在層にもアプローチが可能なことはリファラル採用制度のメリットですが、顕在層へのアプローチよりも時間がかかるというのは明らかでしょう。
従業員が、親しい友人や知人への紹介を行う場合であれば特に、就職・転職時期をズラすことを検討させるほどの猛プッシュをするわけにもいきませんよね。
また、紹介者数などのノルマを高く設定してしまえば、従業員は「とにかく誰でも良いから選考に進めなくては」と焦り、自社にそぐわない人材へアプローチをかけることもあるかも知れません。
結果として、無駄な採用活動の時間が生じてしまう可能性も大いに考えられます。
不採用時の人間関係のフォローが必要
たとえリファラル採用であっても、自社にそぐわない人材は採用をすることはありません。紹介された人材によっては、不採用を知らせなければならないということもあるでしょう。
応募者は、知人や友人である従業員の紹介で選考がスタートするため、「選考も有利なのでは?」と思い込んでしまいやすいので、不採用であることで従業員と応募者間の人間関係にヒビが入ってしまうことも無いとも言い切れません。
リファラル採用採用は、ヘッドハンティング制度ではありませんということを理解してもらったうえで、採用活動を進める必要があるでしょう。下記の記事も参考にしてみてくださいね。
リファラル採用での応募者を不採用にする際の伝え方と注意するべきポイントとは?
リファラル採用を制度化するために必要なこと
リファラル採用のメリット・デメリットをご紹介しましたが、比較したうえで「実際にリファラル採用を導入したい!」という気持ちになった採用担当者もいるはずです。
では、リファラル採用を制度化するために必要なこととはどんなものになるのでしょうか。みていきましょう。
ESの向上
前項「リファラル採用の浸透に時間がかかる」というデメリットでもご紹介した通り、ESが低くては紹介者は一向に増えません。
ですので、従業員に自信を持って自社のことを薦めてもらうためにも、リファラル採用の制度化と並行して、ESを高める取り組みを行うことをおすすめします。
無理にリファラル採用を進めた結果、従業員の不満が増し、かえって退職者を増やしてしまうということにも繋がりかねませんので、企業にとって人は財産であるということは忘れずに、リファラル採用の制度化を進めてくださいね。
自社での仕組みづくり
リファラル採用の制度化への土台作りが整ったら、採用活動の仕組みを設計しましょう。
イベントは開催するのか、開催するのであればどれぐらいの頻度でどの場所で行うのか、選考にはいくつのステップを踏むのか、1人の採用につきいくらの報酬を従業員に支払うのか、などを決定し、従業員に周知していく必要があります。
制度設計が上手くできなければ、従業員も戸惑ってしまい、リファラル採用制度が定着・浸透しませんので、注意しましょう。
採用コストの確保
リファラル採用の制度化を進めるにあたり、採用人数目標とあわせ、採用コストと人的コストを確保することを忘れないでください。
特にリファラル採用は、採用コストのみで言えば通常の採用活動よりも少なく済む場合が多いはずですが、巻き込む人数が多くなるため、人的コストは通常の採用活動よりも多くかかることが予想されます。
リファラル採用のみの採用担当を設け、制度設計をし、従業員周知を定期的に行うなど、リファラル採用に特化したチームを編成するための人的コストを確保できなければ、形骸化して終わってしまいますので、人的コストをしっかりと確保しておくことをおすすめします。
リファラル採用制度を従業員に浸透させるには?
リファラル採用は始めるよりも、続けることの方が圧倒的に難しく、体力が続かず失敗に終わるという企業も多いようです。
では、リファラル採用制度を従業員に浸透させ、採用活動を成功させるためには、どのようなことを行っていく必要があるのでしょうか。リファラル採用制度を従業員に浸透させるために必要な4つのポイントをご紹介します。
定期的に情報を発信する
リファラル採用制度を従業員に浸透するために最も重要なのが、定期的な情報発信です。まずは、自社内でリファラル採用を重要視しているということを、従業員に周知させる必要があります。
半期や四半期での全社総会などでの周知はもちろんのこと、チームでのミーティング時などに話題に上げてもらえるよう、採用担当から各部署への周知活動を行うのが成功の鍵になります。
社内チャットツールで全従業員が見ることができる専用のグループを設け、日ごとに紹介をくれた従業員を公表しているという企業もあるようですので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
報酬を上げる
報酬額に対して負荷が大きく、費用対効果が悪いという点から採用活動を後回しにしているという従業員もいるはずです。無報酬でリファラル採用制度を導入しているという企業であれば、このようなことが起こる可能性が大いにあります。
ある人材紹介企業の調査によると、リファラル採用制度の相場は、1名の採用者につき3万円以内が約3割、3~10万円が約5割という結果も出ているようなので、必要に応じ報酬を上げることも検討してみてください。
また、短期的に紹介者数を増やしたいという場合であれば、賞レースのように一定期間内の報酬を増やすというゲーム要素を取り入れ、採用活動を強化してもよいかも知れませんね。
評価制度に取り入れる
「別にお金が欲しいわけではない」、「他の業務に追われていてリファラル採用に力をかけられない」という従業員が多ければば、評価制度にリファラル採用の紹介者数や内定者数を取り入れてもよいかも知れません。
しかし、リファラル採用にかかる評価基準があまりにも高くなってしまっては、通常業務に支障をきたす従業員が発生する可能性もありますので、あくまで付加価値という形での評価制度への取り入れをおすすめします。
従業員のエンゲージメントを高める
従業員のエンゲージメントを高めることも、リファラル採用制度を浸透させる近道となります。
周りに1名でもリファラル採用を成功させた従業員がいれば、意識は大きく変わるものです。また、あまり興味のなかった従業員でも、自身の紹介から採用が決まればがらりと意識が変わるという方もいるかも知れません。
採用担当者の空回りでリファラル採用を終わらせないためにも、まずははじめからエンゲージメントが高い従業員を巻き込み、成功事例を共有してもらうことを目標に、リファラル採用の浸透を進めてくださいね。
宿泊業界はリファラル採用制度に適している?
ホテル・旅館などの宿泊業界全体で見れば、リファラル採用は残念ながら採用制度として相性はよくないのかも知れません。と言うのも、リファラル採用は社全体のエンゲージメントが高く、中長期的に採用活動を行う体力がある企業が成功しやすい採用制度であるからです。
しかし、全てのホテル・旅館でリファラル採用が不向きとは限りません。
どのホテル・旅館にもエンゲージメントが高い従業員はいるでしょうから、まずは先頭を切って走ってくれる従業員を選び、採用に注力する時間を設けることで、新しい採用活動の道が開けるかも知れません。
従業員が求職者と会食・カジュアル面談をする時間も勤務時間としたり、紹介者と宿泊してもらうなどの別途福利厚生的な要素があれば、従業員のモチベーションが上がる可能性もありますので、自ホテル・自旅館に合わせたリファラル採用を模索してみるのもよいでしょう。
労働形態的になかなかリファラル採用の導入が難しそうという場合は、他の採用活動と上手く組み合わせ、一歩ずつ導入を進めてみてくださいね。
リファラル採用を制度化して人材を確保をしよう!
リファラル採用は採用コスト・採用工数の削減が見込めるため、日本でも導入する企業が増えています。上手く仕組みづくりができれば、自社の採用活動が大きく好転することもありますので、ESの向上と同時に、ぜひ取り入れてみてくださいね。
ただし、従業員も紹介できる人材には限りがあるはずですので、安定的に人材が確保できるという採用制度ではないということも踏まえ、採用活動と上手に組み合わせて、採用活動を進める必要があります。
ホテル・旅館などの宿泊業界であれば、当サイト「おもてなしHR」の人材紹介サービスもきっとお役に立つことができるはずですので、ぜひ気軽に問い合わせてみてくださいね。