長時間労働の定義
「一日のうち〇時間以上働いたら長時間労働」というような、明確な定義はありません。なぜなら、心身に負担を感じる労働時間は人によって大きく異なるから。
ですが、1日8時間、1週間で40時間という法定労働時間を過剰に超えて働いた場合、長時間労働だとみなされるケースが多いようです。
労働中、大抵の人は一定以上の神経の張り、いわゆるストレスを感じている状態ですので、それが必要以上に長く続いてしまうと、やがては健康に大きな影響を及ぼします。
睡眠不足や疲労に苛まれ、休日だけでは十分に疲れが取れない毎日を送っているうち、病を発症してしまう人も少なくはないそうですよ。
では、どのような原因で長時間労働は起こってしまうのでしょうか。次からご紹介していきます。
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長時間労働が起こる原因
経済産業省が発表した「平成28年度産業経済研究委託事業(働き方改革に関する企業の実態調査)報告書」によると、
「自社の長時間労働の原因について、あなたはどのように考えていますか(複数回答可)」
という問いに対し、以下のような回答が寄せられています。上位8件の調査結果をピックアップしました。
・管理職(ミドルマネージャー)の意識・マネジメント不足……44.2%
・人手不足(業務過多)……41.7%
・従業員の意識・取り組み不足……31.6%
・社員の生産性・スキルの低さ……29.6%
・長時間労働を是とする人事制度・職場の風土……28.6%
・経営層の意識……27.2%
・顧客からの要求の多さ……22.8%
・長時間労働は行っていない……18.0%
この結果から、長時間労働の主な原因として、
1.会社・管理職の意識や取り組みが不足していること
2.社員の業務遂行能力に問題があること
3.取引先など社外との関係が長時間労働に繋がっていること
という点が考えられると、多くの企業が認識していることが分かります。
ちなみに、「長時間労働は行っていない」と回答した企業は18.0%でしたので、残りの82.0%の企業は自社が長時間労働を行っているという意識があることが明らかになりました。
このうち、最も回答率が高かったのが、「会社・管理者の意識や取り組み不足」の問題です。
つまり、社員を統率する立場の人間がこの問題に乗り出さない限り、長時間労働の改善はかなり難しいと認識している人が大半を占めているということ。
社員に必要以上の負担を強いることでしか業務を成立させられない会社は、いずれ破綻を迎えるでしょう。そうならないためにも、健全な労働時間を目指す必要がありますよ。
次からは、長時間労働によって起こる問題について、具体的にご紹介をしていきます。
長時間労働がもたらすリスクについて認識をすることで、改善の必然性が見えてくるのではないでしょうか。
データ参照:平成28年度産業経済研究委託事業(働き方改革に関する企業の実態調査)報告書
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長時間労働による問題
長時間労働によって起こる問題のうち、特に代表的なものについてご紹介していきます。社員の健康被害を引き起こさないためにも、労働時間の改善に取り組む必要がありますよ。
自殺者の増加
長時間労働が原因で、自殺を図ってしまう人が後を絶ちません。
朝早くに出勤し、夜遅くに退勤、場合によっては家に仕事を持ち帰り、ほとんど眠らないまま次の日の朝早くにまた出勤……という日々を送るうち、過労やストレスの影響で自殺を思い立ってしまうことが多いのだとか。
多くの場合、自殺を意識するような段階の時点で、すでにうつ状態に陥っている可能性が非常に高いそうです。
肉体だけでなく精神までもが限界まで追い込まれると、次第に思考力も低下していき、「自死」以外の選択肢が見えなくなってしまった、という声もあります。
長時間労働は、それを強いられた人に自殺を意識させる重大なトリガーとなってしまうのです。
過重労働が原因で死に至ることも
膨大な残業による悪影響は、精神の疾患やそれによる自殺だけに留まりません。
時間外・休日労働時間が月45時間を超えると、脳・心臓疾患発症などのリスクが上昇するとも言われています。
また、残業時間が月100時間、あるいは2~6ヶ月平均で80時間を超えると、過労死の危険性はさらにアップしていくのだそう。
蓄積された疲労は、心臓や脳などに大きな負担を与えます。社員が死に至ってしまうほどの労働を課すのは、企業として適切な判断とは決して言えないでしょう。
死には至らないが重大な心身の障害を抱えるケースもある
長時間労働によって必ず人が死んでしまうことはありませんが、たとえ命はあったとしても、後の人生に大きな影響を及ぼすような障害を抱えてしまうこともあります。
肉体的・精神的な疾患の後遺症により、発症前と比べて思うように働けなくなってしまった人も、数多く存在しているはず。
最悪の場合、その後遺症と共に一生を送らなければならなくなる可能性も、ゼロではないということを忘れてはいけませんよ。
過剰な残業の問題をいかに解決すべきか
社員の心身に害を与えてしまう可能性が非常に高い長時間労働ですが、これらを解決するために、どのような形で手を打つべきなのでしょうか。
・人員の補充・業務の分散
・ノー残業デーの導入
・労働時間に対する意識の改善
など、企業によってさまざまな案が打ち出されていることでしょう。
会社によって長時間労働の原因は異なるため、一概に「この方法が正解だ」と言える策はないのかもしれません。
ですが、大切なのはいかにして問題を見つめるかということ、そして現状を改善していく努力を怠らないことに尽きるのではないでしょうか。
また、解決策を導くためには、何よりも正しい知識を身につけることが大切です。
適正な労働時間や、36協定など労働に関する法令を熟知し、社員への周知も怠らないよう努力を重ねましょう。
なお、以下の記事では仕事量が多くなりがちな人の行動について解説しています。併せてご参照ください。
長時間労働は社員だけでなく会社全体にもダメージを与える
長時間労働によりダメージを受けるのは、社員だけとは限りません。
過剰な残業が常態化している企業には次第に人材が集まらなくなり、生産性は低下し、やがては会社が立ち行かなくなる可能性も十分にあるでしょう。
長時間労働の問題から目をそらすばかりでは、いつまでも解決の兆しは見えません。明確な正解が無いからこそ、この問題について真剣に取り組む必要があるのではないでしょうか。
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