飲食業界の人手不足は、コロナ禍を経てピーク時より改善の兆しが見え始めたものの、依然として高い水準が続いています。
2025年の飲食店倒産は900件と2年連続で過去最多を更新し、業界の淘汰が進む一方で、DXの浸透や賃上げの動きも加速中です。
こうした変化は、求職者にとって「より良い条件の職場を選べる時代」が来ていることを意味します。
本記事では、飲食店の人手不足の現状と原因をデータに基づいて整理したうえで、この状況を求職者がどう活かせるのか、飲食経験を武器にしたキャリアの広げ方まで解説します。
飲食店の人手不足の現状とデータ|割合・倒産件数
飲食店の人手不足はどの程度深刻なのでしょうか。帝国データバンクや厚生労働省の最新データをもとに、人手不足の割合・有効求人倍率・倒産件数の3つの切り口から現状を確認します。
非正社員の不足割合は低下傾向も全業種の約2倍
帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年1月)」によると、飲食店における非正社員の人手不足割合は以下のとおりです。
飲食店の非正社員 人手不足状況
飲食店
割合
58.6%
全業種
平均
28.8%
ピーク時
(2023年)
82%超
2023年のピーク時には82%を超えていた飲食店の非正社員不足は、3年連続で改善を続け、ついに6割を下回りました。
改善の背景には、セルフオーダーや配膳ロボットといったDX(デジタルトランスフォーメーション)の浸透や、スポットワークの普及による生産性向上があるとされています。
とはいえ、全業種平均(28.8%)と比較すると依然として約2倍の水準です。
非正社員の業種別トップは「人材派遣・紹介」に交代し、飲食店の順位は低下傾向にありますが、少子高齢化による労働人口の減少も相まって、構造的な人手不足はなお続いています。
また、正社員に目を向けると全業種で52.3%と4年連続で半数超が続いており、非正社員ほどの改善ペースには至っていません。
飲食業界の人材不足は、パートやアルバイトといった非正社員だけでなく、正社員レベルでも根深い課題として残っています。
有効求人倍率は平均の約2倍!圧倒的な「売り手市場」
厚生労働省の「一般職業紹介状況(令和8年3月分及び令和7年度分)」とe-Statの職業別データによると、2025年度(令和7年度)の飲食関連職種の有効求人倍率は次のとおりです。
有効求人倍率の比較(2025年度)
全職種平均
1.20倍
飲食物調理従事者
2.38倍
接客・給仕職業従事者
2.50倍
全職種平均の有効求人倍率が1.20倍(前年度比▲0.05pt)であるのに対し、「飲食物調理従事者」は2.38倍、「接客・給仕職業従事者」は2.50倍と、いずれも全職種平均の約2倍の水準です。
求人倍率が2倍を超えるということは、求職者1人に対して2件以上の求人がある状態を意味します。
つまり、飲食業界においては企業側が「選ばれる側」に回っており、求職者が複数の候補から自分に合った職場を選べるという、明確な売り手市場が形成されています。
なお、宿泊業・飲食サービス業の新規求人数は前年同月比で減少傾向も見られますが、これは人手不足が解消されたわけではなく、DX導入による省人化で店舗が求人の「出し方」を変えていることが背景にあると考えられます。
人手不足の構造自体が変わったのではなく、少ない人数でも回せる体制を整えた店舗が増えたということです。
いずれにしても、飲食関連職種の求人倍率は高止まりしており、求職者にとって「求人が豊富で、選べる立場にある」状況は当面続く見通しです。
倒産が過去最多を更新する一方で進む待遇改善の動き
帝国データバンクの調査によると、2025年の飲食店関連の倒産件数は以下のとおりです。
【深刻化する倒産状況】
飲食店の倒産件数
(2025年)
900件
2年連続で過去最多
人手不足倒産
(全業種・2025年)
427件
3年連続で過去最多
2025年の飲食店倒産は900件で、2024年の894件を上回り、2年連続で過去最多を更新しました。
人手不足を直接の原因とする倒産も全業種で427件に達し、3年連続で過去最多です。
物価高や原材料高騰に加え、人件費の上昇が経営を圧迫している構図が鮮明になっています。
ただし、この淘汰はネガティブな側面だけではありません。
経営が立ち行かなくなる店がある一方で、賃上げやDX投資に積極的に取り組み、働きやすい環境づくりを進めている企業が生き残るという構図になりつつあるからです。
求職者の視点で見れば、これは「良い職場を見極める目がますます重要になっている」ということでもあります。
業界全体が淘汰と再編のさなかにあるからこそ、対策に前向きな企業を選ぶことで、安定したキャリアを築けるチャンスが広がっています。
飲食店が人手不足に陥る4つの原因
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飲食店の人手不足が解消されない背景には、業界特有の構造的な原因が複数あります。ここからは、データをもとに主要な4つの原因を整理します。
1.低賃金と長時間労働がマイナスイメージを招いている
厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」によると、「宿泊業・飲食サービス業」の賃金水準は以下のとおりです。
賃金水準の格差(最高と最低)
全産業でもっとも高い業種
(電気・ガス・熱供給・水道業)
月額 44万4,000円
▼ 差額:約 16万7,000円 ▼
宿泊業・飲食サービス業の平均賃金
月額 27万7,200円
全産業最低
前年(26万9,500円)からは2.9%増加しており、賃上げの動きは確実に進んでいます。
しかし、全産業16業種のなかではいまだにもっとも低い水準であり、トップ業種との差は約16万7,000円にも上ります。
賃金の低さに加えて、長時間労働、不規則なシフト、休日の少なさが重なることで、「飲食=ブラック」「飲食=きつい」というマイナスイメージが定着し、求職者から敬遠される一因となっています。
もっとも、前年比2.9%増というペースはほかの低賃金業種と比較しても高い水準です。
働き方改革の浸透や最低賃金の引き上げも後押しとなり、業界全体で待遇改善の流れが加速していることは押さえておくべきポイントです。
2.離職率の高さが慢性的な人材不足を招いている
厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」のデータは以下のとおりです。
宿泊業・飲食サービス業の3年以内離職率
大卒
55.4%
全産業トップ
高卒
64.7%
全産業トップ
大卒で半数以上、高卒では約3人に2人が3年以内に離職しているという数字は、飲食業界の離職率がいかに高いかを物語っています。
前年(令和3年3月卒:大卒56.6%、高卒65.1%)からはやや改善したものの、いずれも全産業のなかでトップという状況に変わりはありません。
この高い離職率は、「人が辞める→残ったスタッフの負担が増える→さらに辞める人が出る」という悪循環を生みます。
慢性的な人材不足の根本には、入職率の問題だけでなく、この定着率の低さがあるのです。
3.コロナ禍での人材流出が業界構造を変えている
コロナ禍は飲食業界の人材構造を根本から変えました。
厚生労働省「令和3年雇用動向調査」によると、宿泊業・飲食サービス業の離職者数は産業別トップの約127万人に達し、入職者数を上回る大幅な流出超過となりました。
営業自粛や時短営業が長期化するなかで、一度離職した人材の多くは物流やIT、事務職など比較的安定した業種に転職し、そのまま定着しています。
コロナが収束しインバウンド需要が回復した2026年現在でも、流出した人材は戻ってきていないのが実情です。
つまり、需要(来客数)は回復したのに供給(人材)が追いついていないというミスマッチが、現在の人手不足をさらに深刻化させている構造です。
生産年齢人口の減少が進む2030年問題も見据えると、この構造的なギャップは簡単には埋まらないと考えられています。
4.クレーム対応やカスハラがストレスを招いている
飲食店は接客業であるため、日常的に顧客と対面するなかで過度なクレームやカスタマーハラスメント(カスハラ)に直面するリスクがあります。
厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査」では、初めて就いた仕事を離職した理由として「人間関係がよくなかった」が上位に入っており、職場内の人間関係に加えて、顧客対応にともなう精神的負担が離職の引き金になっていることがうかがえます。
低賃金や長時間労働といった待遇面の問題と、このような精神的ストレスが重なることで、「飲食は休めない」「飲食は辞めたい」という声につながり、業界からの人材流出を加速させています。
飲食店の人手不足対策・解決策3選
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飲食業界では人手不足に対して、さまざまな対策が進んでいます。ここでは代表的な3つの解決策を紹介しつつ、求職者の視点からそれぞれどう読み解けるかも補足します。
1.DX・ITツール導入による業務効率化
飲食業界でもっとも急速に進んでいる人手不足対策が、DX・ITツールの導入です。
具体的にはセルフオーダー(タッチパネル注文)、モバイルオーダー、配膳ロボット、POSレジ、シフト管理ツール、キャッシュレス決済などが挙げられ、これらの導入によって「少人数でも回せるオペレーション」を構築する店舗が増えています。
帝国データバンクの2026年1月調査でも、飲食店の非正社員不足が3年連続で改善した背景として「DXやスポットワークの普及による生産性向上」が指摘されています。
求職者にとって重要なのは、DXが進んだ店=一人あたりの業務負担が軽減されている店であるという点です。
転職や就職先を選ぶ際には、こうした省人化・業務効率化への取り組み状況を確認することが、働きやすい職場を見つけるひとつの指標になります。
2.賃上げ・福利厚生見直しによる待遇改善
人材確保のために時給・月給を引き上げる動きが、飲食業界全体で加速しています。
帝国データバンクの調査(2025年1月)では、人手不足を感じている企業の68.1%が賃上げを「実施済み」または「実施予定」と回答しており、コロナ前を上回る賃上げ機運が続いています。
68.1%
人手不足企業のうち
賃上げ実施・予定
賃金面だけでなく、評価制度の整備、まかないの提供、研修・教育制度の充実、従業員満足度を重視した福利厚生の見直しなど、多方面での待遇改善に取り組む企業も増えています。
一方で、2026年1月調査では、賃上げに踏み切れない小規模企業を中心に「賃上げ難型」の人手不足倒産が懸念されるとも指摘されています。
つまり、賃上げに積極的な企業とそうでない企業の二極化が鮮明になっているのです。
求職者にとっては、「どの企業が本気で待遇改善に取り組んでいるか」を見極めることがこれまで以上に重要です。
待遇改善に前向きな企業を選べる今こそ、転職や就職活動を有利に進められるタイミングといえるでしょう。
3.外国人材・シニア層の活用による採用対象の拡大
飲食業界では、従来の若年層中心の採用から対象を広げ、外国人労働者やシニア層の活用に乗り出す企業が増えています。
外国人材については、在留資格「特定技能」の制度を活用し、飲食料品製造業や外食業で即戦力として受け入れる事例が拡大中です。
また、シニア層や主婦層など、これまで採用ターゲットに含まれていなかった層に対しても、短時間勤務やフレキシブルなシフトを用意して門戸を広げる動きが見られます。
求職者にとっては、こうした多様な人材が活躍する現場が増えていることは、働き方の柔軟性が高まっている証拠でもあります。
年齢や経験を問わず受け入れる体制が整いつつある点は、安心材料のひとつといえるでしょう。
\豊富な求人から働きやすい職場を!/
宿泊業界の優良求人を紹介してもらう求職者が飲食店の人手不足と売り手市場を活かす方法
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ここまで見てきたように、飲食業界は依然として深刻な人手不足のさなかにあり、求職者にとっては圧倒的な売り手市場です。ここからは、この状況を転職・就職活動でどう活かせるかを具体的に解説します。
豊富な求人を活かして有利に条件交渉を進める
前述のとおり、飲食関連職種の有効求人倍率は全職種平均の約2倍にあたる2.38〜2.50倍です。
この数字が意味するのは、企業が「採りたくても採れない」状態にあるということ。
だからこそ、未経験歓迎の求人が増え、賃金や待遇を引き上げてでも人材を確保したい企業が多くなっています。
「人手不足=ブラック」と捉えがちですが、実態は「人手不足だからこそ、条件が良くなっている」という側面があります。
給与や勤務時間、休日数など、応募前に気になる条件は積極的に確認しましょう。
売り手市場の今だからこそ、求職者は「選ぶ側」として有利に採用活動を進められます。
飲食業で培った汎用性の高いスキルをアピールする
飲食業で身につくスキルは、業界内のキャリアアップだけでなく、他業界への転職でも武器になります。
💡 飲食業で身につく汎用スキル
調理技術 (和洋中・製菓など専門性も含む)
接客・コミュニケーションスキル
チームワーク・リーダーシップ
マルチタスク能力 (複数の業務を同時並行で処理する力)
クレーム対応力・臨機応変な判断力
これらのスキルは、特に同じく人手不足が深刻なホテルや旅館の調理部門・レストラン部門で高く評価されます。
飲食店経験者を「即戦力」として積極的に採用する宿泊施設は多く、調理技術だけでなく接客経験もサービス職での評価対象になります。
転職活動では「飲食しか経験がない」ではなく「飲食で培ったスキルは他でも通用する」という視点で自身の経験を棚卸しすることが、キャリアの選択肢を広げる第一歩です。
企業の「人手不足への対策度」をしっかり見極める
飲食業界では、待遇改善やDX投資に積極的な企業と、そうでない企業の二極化が進んでいます。
前述のとおり、2025年の飲食店倒産は過去最多の900件を記録しており、対策を怠った店舗が淘汰される時代に入っています。
だからこそ、求職者が転職先を選ぶ際には「その企業が人手不足に対してどの程度対策を講じているか」を見極めることが重要です。
🔍 職場選びで確認すべきポイント
-
📍
セルフオーダーやシフト管理ツールなどDXの導入状況
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📍
労働時間の管理体制(勤怠管理ツールの有無、残業時間の実態)
-
📍
研修・教育制度やマニュアルの整備状況
-
📍
直近の離職率や従業員の定着率
-
📍
福利厚生や評価制度の内容
ただし、求人情報だけではこうした職場の実態が見えにくいのも事実です。
業界に精通した転職エージェントを活用すれば、求人票には載らない労働環境の実情や社風まで事前に把握でき、入社後のミスマッチを大幅に減らすことができます。
\飲食スキルは高く評価されます!/
経験を活かせる好条件の求人をチェック飲食経験を活かせるキャリアの選択肢
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「飲食経験しかないから転職が不安」という声はよく聞かれますが、実際には飲食で培ったスキルを活かせるキャリアの選択肢は幅広く存在します。ここでは代表的な3つの方向性を紹介します。
飲食店内でのキャリアアップ
まず考えられるのが、飲食業界の中でのキャリアアップです。
調理スタッフであれば副料理長から料理長へ、ホールスタッフであれば店長やエリアマネージャーへといった昇進ルートが用意されている企業も少なくありません。
前述のとおり、飲食業界全体で賃上げや待遇改善が加速しています。
人手不足だからこそ、経験者が重宝される場面は増えており、同じ業界にとどまりながらポジションや待遇を上げていく道も十分に現実的です。
ただし、キャリアパスの明確さや待遇水準は業態・企業規模によって大きく異なります。
転職活動や昇進交渉の前に、業界内の相場観や自分の市場価値を把握するための情報収集が不可欠です。
ホテル・旅館の調理部門への転職
飲食店で磨いた調理技術は、ホテルや旅館の厨房でそのまま即戦力になります。
和食・洋食・中華・製菓など、飲食店で身につけた専門的な調理スキルは、宿泊業界のキッチンでも直接活かせるものです。
ホテル・旅館ならではのメリットも見逃せません。
✨ ホテル・旅館の調理部門で働くメリット
MERIT 01
社員寮や食事補助など福利厚生が充実している施設が多い
MERIT 02
料理長→総料理長など、キャリアパスが比較的明確
MERIT 03
和洋中・宴会料理・ビュッフェなど多様なジャンルに挑戦できる
MERIT 04
インバウンド需要の回復により、安定した雇用が見込める
帝国データバンクの2026年1月調査では、「旅館・ホテル」の非正社員不足は44.0%と3年連続で改善していますが、正社員の不足は依然として高水準です。
とりわけ調理部門の正社員は専門スキルが求められるため採用が難しく、飲食店での実務経験を持つ人材への需要は高い状態が続いています。
ただし、飲食業界と同様に、ホテル・旅館業界でも待遇改善に積極的な施設とそうでない施設の二極化が進んでいます。
業界特化型の転職エージェントを活用すれば、施設の待遇面や労働環境の実態を事前に把握したうえでマッチングができるため、入社後のミスマッチを減らすことにつながります。
接客経験を活かしてホテルのサービス職への転職
飲食店での接客経験は、調理部門だけでなく、ホテルのサービス職への転職にも直結します。
レストランでのホール経験で培ったホスピタリティやコミュニケーション力は、ホテルのレストランサービスやフロント業務、宴会対応などでそのまま活かせるスキルです。
宿泊業界もまた飲食業界と同様に深刻な人手不足を抱えており、飲食経験者を歓迎する求人が多数あります。
「調理はできないけれど、接客の経験なら長い」という方にとっても、宿泊業界には活躍の場が豊富にあるのです。
調理部門だけに選択肢を絞らず、サービス職まで視野を広げることで、自分に合ったポジションが見つかる可能性はぐっと高まります。
\安定したキャリアを手に入れませんか?/
おもてなしHRに無料登録飲食店の人手不足に関するよくある質問
飲食店での経験をチャンスに!宿泊施設の調理求人に強い「おもてなしHR」
飲食業界の人手不足は、データが示すとおり構造的な問題です。低賃金・長時間労働・高い離職率といった課題は一朝一夕では解消されません。
飲食店で培った調理スキルや接客経験は、ホテル・旅館業界でも高く評価される即戦力です。
同じ飲食経験を活かしながら、福利厚生が充実し、キャリアパスの明確な宿泊業界で新たな一歩を踏み出してみませんか。
「おもてなしHR」は、宿泊業界に特化した転職支援サービスです。
ホテル・旅館の調理部門をはじめ、飲食経験者を歓迎するポジションを豊富にご用意しています。
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