外国人雇用の助成金制度は、就業規則の多言語化や就労環境整備といった要件が複雑に感じられ、多忙な人事担当者や経営者にとって当然の悩みでしょう。
外国人雇用でもっとも活用実績が多く、最大80万円(または最大72万円)の支給が見込まれる助成金は、主に人材確保等支援助成金と特定求職者雇用開発助成金の2種類です。
今回は、この主要な2制度に加え、採用後の定着やスキルアップに役立つ全5種類の助成金を徹底解説。また、雇用労務責任者の役割やハローワークでの手続き方法、不支給を避けるための注意点まで紹介します。
外国人雇用に最適な助成金を把握し、確実に申請する道筋を立てましょう。
外国人雇用でもっとも使える助成金は「人材確保等支援助成金」と「特定求職者雇用開発助成金」
外国人雇用助成金は種類が多く、手続きが煩雑で二の足を踏んでいませんか。まずは、最大72万円〜80万円を受け取れる可能性のある主要な2つの助成金を知りましょう。
外国人雇用に関する助成金は多岐にわたりますが、特に活用実績が多く、雇用安定と企業活動の双方に直結する制度が「人材確保等支援助成金」と「特定求職者雇用開発助成金」の2つです。
「72万円」という額は、主に特定求職者雇用開発助成金(特定の就職困難者を雇い入れた場合に、中小企業の場合で最大72万円など)の枠組みで提示される金額です。
一方、採用後の定着・就労環境整備に重きを置く場合は、人材確保等支援助成金が最大「80万円」の支給額になる可能性があります。
まずは、定着、訓練、試行雇用など自社の採用目的に合う制度を特定することが、確実に助成金を受給するための第一歩です。

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【一覧表】外国人雇用で使える助成金5選
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外国人雇用で使える助成金は多岐にわたりますが、採用戦略や就労環境整備の目的に合わせて活用すべき主要な5つの制度を厳選しました。まずはこれらについて、全体像を把握しましょう。
以下の比較表は、外国人雇用に関する主要な助成金5種類について、目的や支給額の目安、受給要件を整理したものです。
| 助成金 | 主な目的 | 支給額目安(中小企業) | 主な要件・対象 |
|---|---|---|---|
| 人材確保等支援助成金 | 定着促進(環境整備) | 20万円〜80万円 | ・環境整備計画の作成と実施 ・一定期間後の離職率目標達成(例:多言語化、通訳費など) |
| 特定求職者雇用開発 | 就職困難者の継続雇用 | 60万円〜240万円(2年間) | ・ハローワーク等の紹介 ・特定就職困難者を雇用(例:就労制限のない就職困難者) |
| トライアル雇用助成金 | 試行雇用から常用雇用へ | 月額4万円(最大3カ月) | ・ハローワーク等の紹介 ・職業経験不足者を3カ月試行雇用(例:職歴の浅い外国人) |
| キャリアアップ助成金 | 非正規の正社員化・処遇改善 | 57万円(正社員化1人) | ・キャリアアップ計画の認定 ・有期等から正社員へ転換(例:長期就労可能な在留資格者) |
| 人材開発支援助成金 | 専門知識・技能の習得支援 | 訓練経費45%、賃金助成760円/h | ・職業訓練実施計画の認定 ・10時間以上のOFF-JTを実施(例:日本語教育、専門スキル訓練) |
※支給額は中小企業の場合の目安であり、コースや加算措置の有無によって変動します。申請の際は、必ず事前に計画を提出し、最新の要綱を厚生労働省またはハローワークでご確認ください。
人材確保等支援助成金
人材確保等支援助成金は、外国人材を安定的に定着させるための就労環境整備を支援する助成金です。
外国人雇用に際して法令遵守の体制を整えることは、助成金受給だけでなく、企業のリスク管理としても極めて重要です。
受給のためには、計画書作成・提出後に、以下の「就労環境整備措置」のうち複数の措置を実施する必要があります。特に、就業規則の多言語化と雇用労務責任者の選任は、実務上の最重要要件です。
<就業規則の多言語化>
- 外国人労働者が理解できるいずれか1つの言語に就業規則のすべて(または主要部分)を翻訳し、周知すること
- 厚生労働省の資料に基づくと、賃金や労働時間、退職に関する事項は必ず含める必要がある
<雇用労務責任者の選任>
- 外国人労働者の適正な雇用管理を行うための責任者を定め、ハローワークに届け出ること
- 責任者は、外国人材の就労環境に関する相談窓口を兼ねるケースが多い
<相談体制の確立>
- 生活や労務管理に関する相談窓口を設置し、周知すること
これらの整備措置の実施に応じて、最大80万円の支給が見込まれます。申請窓口は、事業所の所在地を管轄する労働局です。
特定求職者雇用開発助成金
特定求職者雇用開発助成金は、ハローワーク等の紹介によって、就職が特に困難な立場にある外国人材(就職困難者)を継続して雇用する場合に活用できる助成金です。
中小企業がもっとも長く対象となる「特例要件(特に就職困難な方)」を満たした場合、1人あたり最長3年間で最大72万円(※その他のコースや期間によって支給額は変動)の助成金が支給されます。
外国人材が「就職困難者」として認められる主な条件には、以下のようなものがあります。
- 重度障害者、高齢者(65歳以上)
- 母子家庭の母、父子家庭の父
- 45歳以上の長期失業者(1年以上失業状態にある方)
企業規模や対象者によって支給額と期間が異なるため、ハローワークで最新の情報を確認することが大切です。
トライアル雇用助成金
トライアル雇用助成金は、採用後のミスマッチが生じるリスクを減らすために、3カ月間の試行雇用を行った場合に活用できる制度です。
採用に慎重な姿勢を取りたい企業や、応募者のスキルを実務で確かめたい場合に最適です。
外国人材のなかでも、特定の職業経験が不足している方や、職種転換を希望する方などをハローワーク等の紹介で雇い入れる場合に、対象者1人につき月額最大4万円(最長3カ月)が支給されます。
この助成金の受給要件は、雇い入れ前に「トライアル雇用計画」を立て、ハローワークへ提出する必要がある点です。
計画なく雇用を開始してしまうと、助成の対象外となるため注意が必要です。
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は、非正規雇用(契約社員やパートなど)の従業員を正規雇用へ転換することを支援する制度で、定着率の向上とキャリアアップ支援に直結します。
有期雇用契約で外国人材を雇い入れたあと、正社員へ登用する際に活用でき、中小企業の場合、1人あたり最大57万円(※加算措置除く)が支給されます。
受給のための具体的なルールとして、正社員化後の賃金が、正社員化前の賃金に比べ、3%以上増額されていることが要件となります。
また、正社員化制度を就業規則等に定め、事前に労働局へ計画書を提出することが必須です。
人材開発支援助成金
人材開発支援助成金は、従業員の職業訓練を支援する制度です。外国人材の日本語教育や専門スキル訓練に充てることで、かかった経費や訓練中の賃金の一部が助成されます。
特に、日本語教育訓練を計画的に実施し、20時間以上の訓練時間を確保した場合に、経費の45%(中小企業の場合、生産性要件を満たせば60%)などの助成が受けられます。
この助成金を活用することで、外国人材のスキルアップを組織として支援でき、結果的に定着にもつながります。
▼外国人雇用に関する助成金の基本条件やメリットについては、こちらでも紹介
外国人の採用に助成金は申請できる?助成金を活用し優秀な外国人を確保しよう!
外国人雇用の助成金申請で不支給を避けるためのポイント
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せっかく準備したのに、助成金が不支給となっては意味がありません。人事担当者や経営者が陥りがちなミスや、知っておくべき制度の注意点を解説します。
申請期限と事前の計画策定の重要性
多くの助成金は、「事前の計画」が必須であり、後払いの形で支給される制度です。
特に人材確保等支援助成金やキャリアアップ助成金などは、就労環境整備や正社員化を行う前に、必ず労働局へ計画書を提出する必要があります。
計画を提出する前に雇用や環境整備に着手してしまうと、遡って申請することができず不支給となるため、スケジュール管理を徹底しましょう。
不支給になる主な理由と対策
手間をかけて申請したにもかかわらず、助成金が不支給になる主な理由は以下の通りです。対策もあわせて確認しておきましょう。
| 不支給の主な理由 | 対策 |
|---|---|
| 計画未提出 | 雇用や就労環境整備の前に、必ず労働局またはハローワークに計画書を提出する |
| 人員整理(会社都合の解雇) | 助成金の申請日より6カ月前から、支給決定までの期間(およびその後一定期間)に、会社都合による解雇(人員整理)を実施しない |
| 環境整備未完了 | 人材確保等支援助成金などでは、就業規則の多言語化や雇用労務責任者の選任など、要件とされた整備措置をすべて完了させる |
| 書類不備 | 申請書類の記載漏れや添付漏れを防ぐため、提出前に社会保険労務士やハローワークに相談し、念入りにチェックする |
| 企業都合による離職 | 雇用安定を目的とする助成金のため、受給期間中に外国人材が企業都合で離職しないよう、定着支援を徹底する |
特に、助成金受給中に安易な人員整理を行うと、過去の受給分が返還になったり、今後3〜5年間の助成金支給が停止されたりといったペナルティを受けるリスクがあるため、経営判断として慎重に対応する必要があります。
▼外国人の中途採用を行う時のメリットや注意点についてはこちら
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助成金だけでなく、外国人材を適法かつ安定的に雇用・定着させるためには、法的なサポートや生活支援が欠かせません。ここでは、人事担当者・経営者なら知っておくべき重要な支援制度と機関を紹介します。
1.義務化された支援「登録支援機関」
「登録支援機関」は、特定技能外国人の受入れ企業(特定技能所属機関)に代わって、特定技能外国人の生活支援や法令遵守のサポートを行う機関です。
特定技能の外国人材を受け入れる場合、就労環境整備の一環として、生活相談や日本語学習機会の提供などの支援が法的に義務付けられています。
自社での支援が難しい場合は、登録支援機関を活用することで、企業の負担を大きく軽減でき、結果的に人材確保等支援助成金の就労環境整備(相談窓口設置など)とも関連付けやすくなります。
2.無料相談ができる「外国人雇用管理アドバイザー制度」
「外国人雇用管理アドバイザー制度」は、ハローワークに配置された社会保険労務士などの専門家が、外国人雇用に関する労務管理や法令遵守について、無料で相談に乗ってくれる制度です。
助成金申請前の就業規則確認や、雇用労務責任者の役割設定といった、多言語化や雇用労務に関する相談が可能です。
複雑な助成金要件の解釈や、不支給リスクの確認にも活用できます。
3.外国人雇用に関する情報は「国際研修協力機構」
外国人雇用に関する法改正や最新情報は、厚生労働省以外にも、専門機関から提供されています。
「国際研修協力機構(JITCO)」は、技能実習生を受け入れている企業にとっての情報源として特に重要です。
技能実習制度に関する情報提供や、実習実施者へのサポートを行っており、外国人雇用に携わる人事担当者・経営者であれば、常に動向をチェックしておきたい機関のひとつです。
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ここでは、外国人雇用で助成金を活用する際に、企業が抱きがちな疑問についてお答えします。
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今回は、外国人雇用で使える主要な助成金5選から、具体的な支給額(最大80万円、72万円)の根拠、そして不支給を避けるための申請上の注意点までを詳しく解説しました。
助成金は、単なるコスト削減ではなく、就業規則の多言語化や雇用労務責任者の選任といった就労環境整備を進め、外国人材の定着率向上のための投資として活用することで、最大の効果を発揮します。
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