日本のホテルで働きたい外国人にとって、「どのビザを取れば働けるのか」「自分の学歴やスキルで申請できるのか」といった悩みはつきものです。
ホテル業界でよく使われる就労ビザには、特定技能(宿泊)と技術・人文知識・国際業務(技人国)の2種類がありますが、それぞれで働ける職種や取得条件が大きく異なります。
この記事では、2つのビザのちがいや申請条件をわかりやすく比較しながら、ホテルで働くための取得ステップや注意点をくわしく解説します。
あわせて、試験合格から就職、在留資格変更までの流れも一緒に確認しておきましょう。
ホテルで使える2つの就労ビザ|特定技能と技人国のちがいを解説
日本のホテルで働くには、「特定技能(宿泊)」または「技術・人文知識・国際業務(技人国)」のいずれかの就労ビザが必要です。
しかし、それぞれのビザにはできる仕事や取得条件が大きく異なるため、まちがった選び方をしてしまうと希望の職種で働けないこともあります。
以下の表では、2つのビザの主なちがいをわかりやすく整理しました。
主なちがい | 特定技能(宿泊) | 技術・人文知識・国際業務(技人国) |
仕事内容 | フロント、客室清掃、配膳などの現場業務 | 通訳、広報、予約対応、外国語対応など |
対象者 | 技能試験と日本語試験に合格した外国人 | 原則として大学卒業者または職歴がある者 |
日本語レベル | JLPT N4またはJFT-Basic A2以上 | JLPT N2以上が望ましい |
学歴要件 | 学歴不問(試験合格が重視される) | 原則:大卒 ※専門卒は職務内容・企業次第で慎重に審査される |
雇用形態 | フルタイム(現場職) | フルタイム(事務職) |
このように、特定技能はお客様と接する仕事をしたい人向け、技人国は語学やパソコンスキルを使う仕事をしたい人に向いています。
つまり、フロントや清掃、レストランでの接客など、お客様と直接関わる仕事をしたい場合は、特定技能(宿泊)の取得が必要です。
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技人国ビザではホテルの現場業務はできない
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技人国(技術・人文知識・国際業務)ビザは、日本の大学や専門学校で学んだ知識を活かせる「専門的・事務的な業務」が対象です。ホテル業界であっても、以下のような現場業務には原則として就けません。
- フロントでのチェックイン対応
- 客室清掃やベッドメイキング
- 配膳や片付け
- 荷物の運搬や備品補充など
一方で、以下のような専門性のある業務にはビザが適用される可能性があります。
- 海外のお客様向けのマーケティング
- 外国語での通訳・翻訳
- 海外予約サイトの運営・分析
- ホテル公式サイトの英語版作成
ただし、これらの業務であっても、現場作業が一部でも含まれる場合はNGになるおそれがあります。
語学を使ったフロント対応も現場業務と見なされるため、注意が必要です。
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特定技能ビザがあればホテルのフロントや清掃の仕事ができる
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特定技能(宿泊)のビザを取得すれば、日本のホテルや旅館で実際にお客様と関わる仕事ができます。ここでは、代表的な4つの仕事内容を紹介します。
チェックイン・アウトなどのフロント業務
ホテルの顔として、お客様の到着から出発までをサポートする仕事です。
日本語での接客が中心となるため、言葉に自信がある方や、もっと会話力を伸ばしたい方におすすめです。
また、人と接することが好きな人にも向いています。
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客室清掃・ベッドメイキングなどの清掃業務
お客様が快適に過ごせるよう、部屋を整えたり清掃したりする仕事です。
直接お客様と話す機会は少ないため、日本語にまだ自信がない方でも始めやすい業務です。
きれい好きな人や、身体を動かす作業が好きな人にぴったりです。
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食事の配膳・片付けなどのレストラン業務
ホテル内のレストランや食堂で、料理の提供や片付けをする仕事です。
「ありがとう」と言ってもらえる機会も多く、人と関わるやりがいを感じられます。
飲食業の経験がある人や、サービスに興味がある人に向いています。
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荷物運びや備品補充などのサポート業務
お客様の荷物を部屋まで運んだり、ホテル内の備品を整えたりと、裏方でホテル全体を支える仕事です。
目立つ役割ではありませんが、スムーズな運営に欠かせない重要な存在です。
コツコツとていねいに働くことが得意な人に向いています。
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特定技能ビザに必要な試験|宿泊分野評価試験と日本語試験を解説
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特定技能(宿泊)のビザを取得するには、宿泊分野特定技能評価試験と日本語試験(JLPTまたはJFT-Basic)の2つの試験に合格する必要があります。
それぞれの試験の内容や特徴を、以下の表で比較してみましょう。
くらべる内容 | 宿泊分野特定技能評価試験 | 日本語試験(JLPT/JFT-Basic) |
目的 | 宿泊業の専門スキルを確認 | 日本語の基礎力を確認 |
合格ライン | 正答率65%以上 | JLPTはN4以上/JFT-Basicは200点以上 |
試験方式 | CBT方式 | JLPTはマークシート/JFT-BasicはCBT方式 |
試験のことを理解したら、それぞれの試験についてより具体的に確認しておきましょう。
宿泊分野特定技能評価試験
宿泊分野特定技能評価試験は、ホテルや旅館で働くために必要な基本的な知識やスキルを確認するための試験です。
筆記ではなくコンピューターを使った「CBT方式」で実施され、国内外で受験できます。
主な出題分野
- フロント業務や接客対応など、宿泊業の実務に関する知識
- 安全・衛生管理に関する基本ルール
- チームワークやクレーム対応などの現場対応力
試験はすべて日本語で行われ、正答率65%以上で合格となります。
受験費用は7,700円(日本国内実施のみ)で、国内では年に数回実施されますが、日程や会場は受験申込サイトでの確認が必要です。
合格率は、2025年5月に実施されたもので70.3%となっているため、しっかり準備すれば合格を目指せるでしょう。
日本語試験|JLPTまたはJFT-Basic
特定技能(宿泊)のビザ申請には、日本語能力の証明として JLPT N4以上 もしくは JFT-Basic A2以上(200点以上) のいずれかの試験に合格している必要があります。
項目 | JLPT | JFT-Basic |
試験頻度 | 年2回(7月・12月) | 地域により異なる |
試験時間 | 115分(N4の場合) | 60分 |
出題内容 | 言語知識、読解、聴解 | 文字と語彙、会話と表現、聴解、読解 |
合格基準(特定技能) | N4以上 | 200点以上 |
すでにJLPT N4以上を持っている場合は、再受験する必要はありません。一方で、すぐに受験したい方や、柔軟な日程で受けたい方にはJFT-Basicが便利です。
申込方法や試験日程は公式サイトで必ず確認し、希望の国や地域で実施されているかもあわせてチェックしましょう。
ホテル就職までの流れ|試験合格後にやるべきこと
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特定技能ビザを取得するには、試験に合格するだけでなく、就職先を決めて在留資格変更の手続きを完了させる必要があります。ここでは、合格後の具体的な4ステップを紹介します。
特定技能に対応したホテル求人を探す
試験に合格したら、「特定技能(宿泊)」ビザで働けるホテルや旅館を探しましょう。
このビザに対応していない職場に応募すると、ビザ変更の申請ができない場合があります。
外国人の採用に慣れているホテルは、ビザの手続きをサポートしてくれることが多く、安心して働くことができます。
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雇用契約を結ぶ(内定)
ホテルから採用の連絡をもらったら、雇用契約を結びます。
契約書には「仕事内容」「給料」「勤務時間」などが書かれています。内容をよく読んで、納得してからサインしましょう。
この契約書は、ビザ変更の申請にも必要な書類になります。
入管に在留資格変更を申請する
今のビザ(たとえば「留学」や「特定活動」など)から、「特定技能(宿泊)」ビザに変更する申請を出入国在留管理局にします。
申請には、ホテル側が用意する書類も必要なので、内定が決まったらすぐに相談しましょう。
申請は本人でもできますし、行政書士にお願いすることもできます。審査には通常2~4週間ほどかかります。
手続きの流れに関しては、以下の記事でくわしく解説しています。
特定技能ビザで就労スタート
ビザの許可が下りたら、いよいよホテルなどの職場で働きはじめることができます。
「特定技能(宿泊)」のビザは、最長5年まで更新が可能です。
仕事を続けながら、日本での転職や将来の永住を目指す外国人もたくさんいます。
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よくある質問|特定技能ビザ・就労に関する疑問を解消
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特定技能ビザでホテルの仕事を目指すとき、わからないことや不安に思うこともあるでしょう。ここでは、よくある質問とその答えをまとめました。
専門学校卒でも特定技能ビザは取得できますか?
技人国ビザではホテルの現場業務はできませんか?
学生の間に試験に合格しておくことはできますか?
特定技能ビザの更新や期間はどうなりますか?
自分に合った就労ビザを知って、ホテルで働く一歩を踏み出そう
日本でホテルの仕事を目指すには、自分の希望する働き方と持っているスキル・学歴に合ったビザを選ぶことが大切です。
たとえば、お客様と接する仕事をしたいなら特定技能(宿泊)、語学や専門知識を活かした事務の仕事なら技人国ビザが向いています。
どちらのビザも、それぞれに合った求人があります。自分に合った仕事を探して、日本でのホテルキャリアの一歩を踏み出しましょう。
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出典:在留資格「技術・人文知識・国際業務」/出入国在留管理庁出典:宿泊業技能試験センター出典:令和5年度宿泊業技能測定試験実施状況報告書/法務庁出典:【2025年5月実施分】宿泊分野特定技能評価試験 受験者・合格者・合格率発表/宿泊業技能試験センター出典:日本語能力試験 JLPT出典:JFT-Basic 国際交流基金日本語基礎テスト