失業手当を受給するには条件がある
失業した人が安定した生活を送り、一日も早く再就職するための支援として給付される失業手当。新しい仕事が見つかるまでの経済的な支えとなる制度で「失業保険」と呼ばれることもあります。
退職したらもらえる手当というイメージを持たれていますが、一定の条件を満たしていなければ受給できません。
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失業手当の受給条件
失業手当を受給するためには、受給条件を満たしている必要があります。失業手当の受給条件について紹介します。
失業状態であること
失業状態とは、単に仕事をしていない状態を表しているわけではありません。就業する意思や就職できる能力があるにもかかわらず、なんらかの理由で就職できなかったり、求職活動ができなかったりする状態を指しています。
- ・家業に専念する
- ・学業に専念する
- ・自営業を始める
- ・海外に留学する
- ・就職先が決まっている
- ・日雇いを希望している
- ・働く予定がない
上記のような場合は自らの意思で求職活動を行わないものですので、失業手当を受給するうえでは、失業状態とは認定されません。そのため、他の条件を満たしていたとしても、失業手当を受給することはできません。
退職日以前の2年間に雇用保険加入期間が通算12カ月以上あること
失業手当を受給するためには、雇用保険に一定期間加入している必要があります。雇用保険に加入するための基本的な条件は以下の3つ。
- ・勤務開始から最低31日以上働く見込みがある
- ・週の所定労働時間が20時間以上
- ・学生ではない(例外あり)
条件に該当していれば雇用保険に加入することになり、退職日以前の2年間に雇用保険の加入期間が通算12カ月以上あれば、失業手当を受給することが可能です。
会社都合による退職や特定理由離職者に該当する場合は、退職日以前の1年間雇用保険の加入期間が6カ月以上あれば受給資格を得ることができます。
雇用保険の加入期間は、条件を満たしていれば退職日以前の2年間で合算することができます。転職を複数回している場合など、過去にも雇用保険に加入していた期間があれば、合算の対象になります。
A社目が3年、B社目が2年、C社目が半年であれば、加入期間は8年半になります。C社のみで見れば加入期間は半年ですが、通算すると条件に該当するため、失業手当の受給対象に該当します。
ただし、会社間の空白期間が1年以上ある場合は合算対象にはなりません。さらに、過去に失業手当の手続きをしたことがあれば、それ以前の加入期間は合算されません。
ハローワークに求職の申し込みをしている
失業状態であるかどうかの判断は、ハローワークによって行われます。
失業手当を受け取ることができるのは、仕事に就く能力と意思がある人。そのため、退職した企業から離職票を受け取った後に、住所地を管轄するハローワークで求職の申し込みをし、就職する意思を表す必要があります。
就職する意思を表すためには、求職活動実績を作らなければなりません。活動実績は、原則4週間に2回以上。さらに、ハローワークでの就職相談や求人への応募など、ハローワークが求職活動実績と認める活動に該当しなければなりません。
指定回数以上の活動がない場合、ハローワークに認められない活動の場合は実績として承認されず、失業手当を受給することができません。
失業手当に必要な活動実績については以下の記事で紹介しています。併せてご参照ください。
ホテル&旅館業界の就職・転職についての記事
退職理由で変わる失業手当の受給条件
失業手当の受給には、退職理由が大きく関わっています。自己都合か会社都合か、自己都合であってもやむを得ない理由があったのか。退職理由によって、支給が開始される時期が変わる「給付制限期間」と退職理由について説明します。
失業手当の給付制限期間
受給資格が決定してから一定期間、失業手当が支給されない期間があります。この一定期間が給付制限期間です。
失業手当は、申請後すぐに支給されるものではありません。ハローワークに求職の申し込みをした日を「受給資格決定日」とし、受給資格決定日から通算7日間は待機期間とされています。
待機期間の期間満了までは失業手当が支給されることはありません。
さらに、正当な理由がない自己都合による退職の場合には、待機期間後から2カ月または3カ月の給付制限期間が設けられています。
会社都合による退職の場合には、待機期間後すぐに支給が開始されますが、自己都合による退職の場合は、給付制限期間後に支給が開始されます。さらに、給付制限期間中の求職活動によって就職が決定した場合には、失業手当は支給されません。
自己都合とは
自己都合による退職とは、一般的な退職や懲戒解雇による退職のこと。退職の要因が、主に労働者にある退職のことを指します。
転職を理由にした退職や、結婚や子育てなどの家庭の都合を理由にした場合の退職、さらに業績悪化を予測して前もって退職した場合も、自己都合に該当します。
会社都合とは
会社都合とは、事業者からの働きかけによる退職や、正当性のある理由で辞めざるを得ないと判断した場合の退職のこと。退職の要因が、主に会社にある退職のことを指します。
倒産による退職や整理解雇による退職、さらに労働条件が雇用契約書の内容と著しく異なっていることによる退職が該当します。
会社都合による退職の場合は「特定受給資格者」として認められ、給付制限期間を待つことなく失業手当が支給されます。
特定理由離職者とは
自己都合とされる退職の中には、やむを得ない理由で退職を選択しなければならないということもあります。
要因が労働者にある自己都合の退職であっても、正当な理由があると判断された場合には「特定理由離職者」として認められます。
- ・労働契約の期間が満了し、労働契約の更新がないことが理由の場合
- ・体力の不足や心身の障害、視覚・聴力・触覚の減退が理由の場合
- ・両親の死亡や疾病など、家庭の状況が急変した場合
- ・事業所の移転により通勤が困難な場合
- ・配偶者の転勤や出向、再就職に伴う別居の回避が理由の場合
上記のような理由で自己都合による退職をした場合は、特定理由離職者に該当するため、会社都合による退職と同様に、給付制限期間はありません。
参考:ハローワークインターネットサービス/特定受給資格及び特定理由離職者の範囲の概要
新型コロナの影響で失業した場合の受給条件は?
ここ数年、新型コロナの影響で失業したという人が増加しています。そのため、2022年5月から、新型コロナの影響による退職を特定理由離職者として追加しました。
- ・新型コロナの影響による休業、労働時間が週20時間を下回った期間が1カ月以上あった、または、下回ることは明らかになった、労働条件として明示されている就労日数がありながらシフトを減らされた
- ・契約更新時に就業前に定めた労働条件から、就労日数を減らした労働条件を提示されたため、更新を希望しなかった
- ・高齢者がいる、基本疾患があるなど、感染拡大防止のために退職した
上記のようなケースで退職した場合には特定理由離職者に該当するため、給付制限期間を待つことなく失業手当の給付が開始されます。
参考:ハローワークインターネットサービス/基本手当を受給している皆様へ
失業手当をもらう前に受給条件を確認しよう!
失業手当は1日も早く再就職するために支援するための手当。新しい職に就くまでの経済的な支えになるものです。手続きをする前に、受給条件を確認してみましょう。自己都合と思ってたものが、特定理由離職者に該当することもあるかもしれません。
失業手当が受け取れるのはありがたいものですが、1日も早い再就職を考えることも大切です。スピーディーな転職活動には、転職エージェントの活用もおすすめですよ。