医療控除の対象となる温泉施設・温泉宿とは?
古くから健康増進に効果が期待できると言われている温泉。リラックス・リフレッシュの枠を出ず、あくまでもレジャーとして行く場所というイメージが強いのではないでしょうか。
確かに、湯治目的などで温泉を利用したとしても、社会保険や国民健康保険が使えるわけではありません。しかし、一定の条件を満たせば、温泉施設・温泉宿の利用料金は、医療控除の対象になるのです。
あまり一般的には知られていない制度かもしれませんが、温泉施設・温泉宿で働く人なら知っておいて損はないはず。医療控除の仕組みや、控除対象となる温泉施設・温泉宿の条件を見ていきましょう。
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医療費控除の概要を理解しよう
まずは、医療控除の概要をかんたんに見ていきましょう。
医療費控除とは、納税者本人と生計をともにする家族の医療費を多く支払った場合、その年の所得税が軽減されるという制度です。また、所得税をもとに計算される住民税も減額されるので、覚えておきましょう。
保険金などで補填された分を差引いて10万円以上(総所得金額が200万円未満の人は総所得金額の5%以上)の医療費が控除の対象で、控除を受けるには確定申告が必要です。
医療費として認められるのは、診察料や入院費のほか、薬代、通院に掛かったバス・電車の運賃(やむを得ない事情がある場合はタクシー代も可)、治療を受けるために直接必要な器具(松葉杖やコルセットなど)といったもの。
この中に、温泉施設・温泉宿の利用料金を計上できるという話がこの記事のテーマです。
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医療費の対象となるのは「温泉利用型健康増進施設」
税務上の医療費として計上できるのは厚生労働省が「温泉利用型健康増進施設」として認定した温泉施設・温泉宿のみです。温泉なら何でもいい、というわけではないので注意しましょう。
温泉利用型健康増進施設の認定を受けるには、以下の条件を満たしている必要があります。
健康増進のための温泉利用及び運動を安全かつ適切に行うことのできる施設
・主な設備:運動施設/温泉利用施設(例示:全身・部分浴槽、気泡浴槽、サウナ等)
温泉利用型健康増進施設には温泉利用指導者資格を持ったスタッフが配備され、医師が作成した「温泉療養指示書」に従って利用者を指導します。一般的な温泉など、自由に温泉を楽しんでもらう施設とは異なるのですね。
参照:温泉利用型健康増進施設の条件について/厚生労働省ホームページ
温泉利用型健康増進施設の利用で医療費控除を受ける流れを見てみよう
温泉利用型健康増進施設の認定を受けた温泉施設・温泉宿を利用し、医療費控除を受ける際にはどのような手続きが必要なのでしょうか。順を追って解説します。
まず、診断済みの病気や気になる症状について、医師の診察を受けます。そこで医師から温泉「温泉療養指示書」を作成してもらいます。また、先に温泉利用型健康増進施設に指定された温泉施設・温泉宿に相談し、提携病院から専門医を紹介してもらうという方法もあります。
次に、温泉療養指示書を持って温泉利用型健康増進施設を訪れ、温泉利用指導者資格を持ったスタッフの指示のもと、温泉療養を実施。事前面談や予約を要することが一般的でしょう。
終了後に温泉利用型健康増進施設から領収書と「温泉療養証明書」を受け取って保管し、確定申告に使うというのが、一連の流れ。なお、温泉利用型健康増進施設の利用が医療費として認められるためには、およそ1カ月以内に7日以上の利用が必要です。
医療費控除対象の温泉施設・温泉宿で働く人は対応方法を確認しましょう
温泉療養指示書の持参や事前の面談・予約やが必要だったり、領収書の他に温泉療養証明書を発行したりと、一般的な温泉施設・温泉宿のオペレーションとは異なる部分が多々ありました。
温泉利用型健康増進施設なら、従業員に手順をきちんと周知しているはず。お客様の税金にかかわる部分なので、しっかり確認した上で、正しく対応してくださいね。
また、温泉利用型健康増進施設ではない温泉施設・温泉宿で働くみなさんも「こういう制度がある」という程度に覚えておきましょう!