ホテルのインバウンド:取り組むべきポイントや注意点

インバウンドという言葉が聞かれるようになって久しいですが、まだまだ日本国内のホテルはインバウンド対策が十分ではないと言われています。しかしこうした状況の中で「インバウンド対策、なんとかしなくちゃ」「外国人のお客様に満足いただけるサービスって?」と頭を抱えているホテル関係者も少なくないようです。当記事では、今後ますます増え続けると予想されるインバウンド客に対して、ホテル側としてどのように対策すれば満足いただけるか。注意点などはないのか、といった点について解説します。

訪日外国人観光客が増え続けている

雷門前に人が大勢いる

iStock/bennymarty

観光局の「訪日外客数, 出国日本人数の推移」によると、2012年から訪日外国人観光客(インバウンド客)数が増加し続けており、2018年には3000万人を突破。日本政府は、東京オリンピックが開催される2020年には4000万人を目指すとしています。

そうした状況にあるため、インバウンド対策は日本国内のホテルにとって目下の急務と言えます。しかし一方で、対策はまだ十分とは言えないのも実情です。

出典:観光庁「訪日外客数, 出国日本人数の推移」

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ホテルが取り組むべきインバウンド対策

無料Wi-Fiがある客室

iStock/ymgerman

では今、ホテルが取り組むべきインバウンド対策にはどのようなものがあるのでしょうか。外国人観光客からのニーズが高い項目を挙げてみました。

無料Wi-Fiの整備

観光庁による「訪日外国人の消費動向(2017年)」によると、日本滞在中にあると便利な情報のうち最も多かったのが「交通手段」(47.2%)で、次が「無料Wi-Fi」(45.2%)でした。また同調査によると、日本滞在中に得た旅行情報源で役に立ったもののうち、最も多く回答されたのが「インターネット(スマートフォン)」で全体の約7割。

旅行で日本を訪れた外国人観光客の多くが、スマートフォンやタブレットを使ってインターネットを活用しています。客室内に無料Wi-Fiを整備することで、日本のホテルの利便性が大幅に向上するはずです。

※出典:観光庁「訪日外国人の消費動向(2017年)」

多言語対応

観光地などを中心に、さまざまなシーンで多言語対応が進んでいます。ホテルにおいては、フロントに多言語表記の案内板やリーフレットを設置する、マルチリンガルのスタッフを常駐させる、複数の外国語に対応できる電話応対サービスやチャットサービスなどの導入を検討するといった対策が考えられます。

また、食事を楽しみに訪れる観光客が多いことから、レストランで提供するメニューの詳しい説明が見られると喜ばれます。スマートフォンでQRコードを読み込むと、さまざまな言語で料理の詳しい説明が見られるサービスもあります。便利なツールも活用しつつ、インバウンド対策を進めていきましょう。

世界共通基準のUSBコンセントの設置

国によってコンセントの形状や電圧が違うので、海外のホテルでスマートフォンやタブレットを充電しようと思ったら、通常は変換プラグや変圧器が必要になりますよね。

しかしホテルにUSB充電に対応するコンセントを設置しておくと、そういった機器が必要なくスムーズに充電ができるので、海外からのお客様に喜ばれます。

荷物の一時預かり

国では、訪日外国人観光客が大きな荷物を持ち運ぶ不便を解消するための対策として、「手ぶら観光」を推奨しています。具体的には、空港や駅にある宅配カウンターで荷物を一時預かりし、ホテルなど次の目的地まで配送するもの。旅行の利便性や快適性の向上、消費拡大などを目的としています。

その一方、ホテル側の事情としては、海外のお客様が持ち込む大きな荷物を保管するスペースを十分に取れない施設が多いです。その結果、お預かりした荷物の管理が煩雑になり、紛失や盗難のリスクも高まります。荷物を預かる専用のスペースを設けるなどの対策が必要でしょう。

出典:国土交通省「手ぶら観光」とは

多彩な朝食メニューを用意

朝食をバイキング形式で提供するホテルも多いでしょう。レストランでのインバウンド対策としては、例えばベジタリアン向けに肉や魚を使わないメニューをいくつか用意しておくことなどが挙げられます。他にも、宗教上の理由で食べられない食材があるという方もいますよね。そうした各々の事情に対して、柔軟に対応する「おもてなし」の姿勢が大切です。

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ホテルがインバウンド対策を行う際の注意点

トイレの注意書きはよく読んで

iStock/Phurinee

インバウンド対策を行う際、注意すべきポイントについても押さえておきましょう。

文化の違いを意識する

日本と海外とでは文化や常識が異なるため、日本人にとっては当たり前のことでも、外国人のお客様にとってはそうでないことが溢れています。例えばトイレの使い方1つ取ってみても、使用済みのトイレットペーパーをゴミ箱に捨てるといったケースが実際に見られるのです。これは、自国にはトイレットペーパーを水に流すという文化がないため。

こうした状況を改善するため、近年観光地のトイレには、トイレの使い方に関する案内が貼られていることが多いです。複数の外国語で表記されるのはもちろん、ぱっと見てわかりやすいようイラストも使用されています。このように文化の違いを意識・理解することで、ちょっとした行き違いを防ぐことにつながるでしょう。

インバウンド客のニーズをしっかり調査する

前出の「訪日外国人の消費動向(2017年)」によると、訪日前に最も期待していたことの回答で最も多かったのが「日本食を食べること」でした。しかしだからといって、ホテル内のレストランで高価な食事を提供すれば良いかといえば、そうとは限りません。

同調査で「繁華街の街歩き」を期待していたと回答した人が多かったように、お目当ての店があるかもしれませんし、食べ歩きを楽しみにしているかもしれません。そうしたニーズを調査・把握しておかなければ、新しく対策を講じたとしても、必ずしも満足にはつながらないのです。

ニーズを見極めたインバウンド対策を

旅の計画を立てる外国人カップル

iStock/Phurinee

訪日外国人観光客の増加に伴い、ホテルの需要は伸びています。しかしインバウンド対策はいまだ十分とは言えない状況にあり、できる範囲から対策を進めることが大切です。

その際に注意すべきなのが、お客様の目線になって考えること。日本人の文化や価値観、言語などとは異なるため、1つの視点から見ていたのでは実際のニーズとの間にズレが生じる可能性があります。

よく調査し、必要に応じてネイティブの意見を取り入れたインバウンド対策を講じましょう。そうすれば、今後ますます増加が見込まれる外国人のお客様にも満足していただけるサービスが提供できるはずです。

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