【カスハラ対応】カスハラとは何なのか
カスハラとは「カスタマーハラスメント」を省略した言葉。顧客(カスタマー)が企業に対して行う理不尽な要求や暴力・暴言、脅迫といった行動がカスハラに該当します。どのような企業でもカスハラの被害に遭うリスクはありますが、直接お客様に接する接客業の職場では、特に起こりやすい問題ではないでしょうか。
また、接客業の職場では「クレーム」が起こることもありかもしれません。「カスハラ」と似たもののように思われますが、正当なクレームとカスハラはまったくの別物。判断のポイントは以下の通りです。
【正当なクレーム】
- 商品や対応に落ち度があったなど、明確な理由がある
- 事実を伝えている
- 暴力、暴言などで従業員の尊厳を傷つけることはしない
- 過剰な要求をしない
- 提案や案内に対して協力的な姿勢が見られる
【カスハラ】
- 企業側の責任ではないことを責める
- 事実と異なる発言をする
- 暴力、暴言などで従業員の尊厳を傷つける
- 過剰な要求をする
- 提案や案内に聞く耳を持たず、自分の主張を続ける
正当なクレームかカスハラかの判断を誤りやすいのは、お客様が感情的になっている場合でしょう。怒りの感情が見える場合でもクレームとしては正当だったり、物静かな態度でもカスハラだったりすることがあるのです。
発言や要求の内容に注意深く耳を傾けることが、適切なカスハラ対応への第一歩といえるでしょう。
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【カスハラ対応】被害を受けたときの4つのステップ
接客業の従業員には、可能な限りお客様に寄り添い、希望をかなえようとする姿勢が求められます。しかし、カスハラを行う悪質な顧客に同じ対応をしていては、被害が大きくなるばかりでしょう。
カスハラを黙認していると、ストレスを理由とする退職者が増えたり、店舗や施設の雰囲気が悪化して客足が遠のいたりするリスクがあります。
では、カスハラの被害を受けた際には、どのように動くことが適切なのでしょうか。4つのステップで見ていきましょう。
ステップ1:記録・証拠集め
まずはカスハラ被害の証拠をしっかりと集めましょう。
ハラスメントの内容、日時、場所などを具体的に記録することがポイントです。メール、音声データ、写真などがあれば、確実に保存してください。目撃者がいる場合は証言を依頼してもよいでしょう。こうした証拠を集めることは、社内で対策を検討したり、出入り禁止の処置を取ったりすることに役立つはずです。
また、被害が深刻な場合などには、警察に相談することや損害賠償請求をすることもあるでしょう。しかし「こんな被害に遭いました」と説明するだけでは事実かどうか分かりません。そこで証拠を提出できるように、しっかり残しておくことが重要なのですね。
ステップ2:上司や相談窓口へ相談
勤務先にカスハラ被害の相談窓口がある場合は、積極的に活用してください。企業によっては二次対応などの体制が整っており、責任者などが対応を引き継いでくれることもあります。
また、上司に相談することも重要です。特に「どう対応したらよいのか分からない」という場合は早い段階で上司の指示を仰ぎましょう。
証拠となる記録を提示した上で、冷静かつ客観的に話すことを心がけることが大切です。
ステップ3:社内での解決を目指す
カスハラが起こった場合、まずは社内で解決に向かって尽力する場合が多いのではないでしょうか。
この場合、カスハラを行った顧客や対応にあたった従業員、その従業員の上司などを交えて話し合ったり、調査を行ったりすることが一般的です。
カスハラの被害に遭った当事者は、社内での対応がスムーズに進むように協力しましょう。カスハラの内容などを整理し、説明できるように準備しておくとよいでしょう。
ステップ4:外部機関への相談・申告
社内での解決が困難な場合は、外部機関へ相談したり、受けた被害を申告したりといった対応が必要になることもあります。
例えば、暴力や脅迫といった犯罪行為に該当する場合は警察に被害届を出す、営業に支障をきたした場合は損害賠償を請求する、といったことが挙げられます。
穏便な解決を図る場合は、法人向けのカウンセラーやハラスメント相談サービスといった第三者相談機関を活用し、今後の対応を相談するケースもあるでしょう。
そして勤務先にカスハラの被害を伝えても適切な対応をしてもらえない場合は、行政の窓口へ相談してください。従業員が安全に働けるように配慮することは、企業の義務です。それを怠っていると判断されれば、勤務先に対して適切な指導をしてもらえる可能性があります。
参考:カスハラ(カスタマーハラスメント)を受けたら/神奈川県 かながわ労働センター
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【カスハラ対応】カスハラの証拠となるもの
社内での解決をめざす上でも、外部機関に相談・申告する上でも、証拠をしっかり残しておくことは非常に重要といえるでしょう。
では、カスハラの証拠となるものとして、代表的な例を見ていきましょう。
嫌がらせの内容を記録したメモ
メモは必ず残しておくべき証拠といえるでしょう。正確な情報を残すためには、被害を受けてから間を置かずにメモすることが重要です。最低限、以下の内容を記録してください。
- カスハラを受けた日付と時刻
- カスハラを受けた場所
- カスハラを行った顧客の情報
- カスハラの被害を受けた従業員の情報
- カスハラの詳細な内容と行った対応
メール、チャットログ、音声データ
顧客とのやりとりが、メールやチャット、電話などであった場合、やりとりの内容が消えないように対策しましょう。
メールであれば専用のフォルダを作って保管したり、チャットであればスクリーンショットを撮ったりといった方法があります。電話の場合や、対面での会話を録音していた場合は、新たな音声を上書きしないように注意が必要です。録音データをパソコンに保存するなど、バックアップを取っておくとよいでしょう。
写真、動画
写真や動画を撮ることは、カスハラの証拠を残す手段として非常に有効です。
顧客が従業員を殴っている様子が監視カメラに写っていれば「カスハラを行った」という事実を否定できなくなるでしょう。
また、顧客の暴力によって従業員がケガをしたり、備品を壊されたりした場合も、必ず写真を撮りましょう。被害届を出す際に、証拠として提出できるはずです。
目撃者からの証言
目撃者からの証言も「カスハラの被害を受けた」という事実を裏付ける材料になり得ます。
目撃者がいる場合は、証言を依頼しましょう。また、接客業の現場であれば、他の従業員が近くで見ていた可能性があります。カスハラが起きた日時に働いていた従業員に声をかけ、見聞きしたことを尋ねてみてください。
適切なカスハラ対応で被害の拡大を防ごう
カスハラの被害に我慢は禁物です。メンタルが強い方などは「これくらい平気」と思うかもしれませんが、悪質な顧客を放置していると、更なる被害を受けかねません。
カスハラに対して正しい方法で立ち向かう姿勢は、自分だけでなく職場でいっしょに働く仲間を守るためにも必要なのではないでしょうか。
今回の記事で解説したように、適切な相手に相談したり証拠を集めたりといった対応で、カスハラ被害の拡大を防いでくださいね。