エコツーリズムとは?日本の事例や今後の課題をわかりやすく解説

観光シーズンになると多くの人が押し寄せるのは、有名観光地の宿命ともいえる光景でしょう。観光による経済効果は大きく、積極的に観光客誘致を進める自治体も多いです。エコツーリズムとは、そうした従来の旅行のあり方とは違った過ごし方を提案するものです。当記事では、エコツーリズムとは何か、事例、今後の課題などについてわかりやすく紹介しています。観光業に携わる人も、旅行好きの人も、一度じっくりと考えてほしい問題です。

目次

    エコツーリズムとは

    エコツーリズムの団体客

    iStock/MesquitaFMS

     

    エコツーリズムとは、エコロジーとツーリズムを組み合わせた造語。エコロジーは生態学や自然環境保護運動などと訳され、ツーリズムは旅行です。

     

    環境省によると、エコツーリズムの定義は以下の通り。

     

    エコツーリズムとは、地域ぐるみで自然環境や歴史文化など、地域固有の魅力を観光客に伝えることにより、その価値や大切さが理解され、保全につながっていくことを目指していく仕組みです(出典:環境省「エコツーリズムとは」

     

    • ・自然環境の保全
    • ・観光振興
    • ・地域振興
    • ・環境教育の場としての活用

     

    基本理念はこの4つです。

     

    エコツーリズムの目的

    自然の中でツアーガイド

    iStock/Joel-Carillet

     

    エコツーリズムの目的は、大きく3つに分けられます。一つひとつわかりやすく説明しましょう。

     

    伝える

    その土地にある自然や歴史、文化といった資源を、観光客はもちろん地域の人にもよく知ってもらう、伝えていく。エコツーリズムにはこうしたねらいがあります。

     

    どんなに素晴らしい景観も文化も、知ってもらえなければ話題にもなりませんし、足を運んでもらうこともできませんよね。それらを伝える手段の一つとして、ツーリズム(旅行)を用いています。

     

    その土地を深く理解してもらう

    知ってもらうことに成功したら、次はより理解を深めてもらいます。同じ旅をするのでも、ただ有名な観光地に行って写真を撮って買い物して終わり!よりも、その土地が持つ歴史や背景に触れてみる方が楽しいと思いませんか?

     

    理解を深めることで、旅行は楽しくなりますし、さらにその場所が好きになるはずです。愛着が湧けば山や川といった自然、動植物に対する意識も変わり、「もっと大切にしよう」という気持ちが芽生えるでしょう。

     

    地域振興による好循環

    自然保全への理解を深めることを主目的としつつ、旅行業としてしっかり成立させること。これもエコツーリズムの大切なねらいの1つです。

     

    観光により地域が活気づけば、大きな経済効果が見込めます。これにより、さらなる自然保全が推進できる……この好循環を生む仕組みこそが、エコツーリズムなのです。

     

    エコツーリズムの発祥、歴史

    森林の中に男性と女性

    iStock/PamelaJoeMcFarlane

     

    エコツーリズムが初めて登場したのは、1980年代と言われています。戦後、世界各地で工業の発展による自然破壊が急速に進んだことが、発祥の背景です。

     

    1980年代には旅行客による発展途上国の自然破壊が問題視され、状況を改善するべく、1980年代後半に「エコツーリズム」が本格的に提唱されるようになりました。

     

    日本でエコツーリズムが注目されるようになったのは、1990年代頃から。自然豊かな土地のエコツアー(エコツーリズムに則った観光旅行)を企画する民間業者が増えてきた頃です。

     

    その後さまざまな動きが活発化していき、2009年には、地域で取り組むエコツーリズムに関する総合的な枠組みを定めた「エコツーリズム推進法」が成立しました。

     

    日本のエコツーリズムの事例

    屋久島

    iStock/Matsuringo

     

    日本国内においてエコツーリズムを語るとき、よく引き合いに出されるのが鹿児島県の屋久島と青森県から秋田県にかけて広がる白神山地です。屋久島と白神山地はどちらも1993年に世界遺産に登録され、そこから観光客数が急増しました。2つの事例について簡単に紹介します。

     

    屋久島

    屋久島では本格的にエコツーリズム活動を開始。ツアーガイドと一緒に森歩きや登山、沢登り、リバー・シーカヤックなどを楽しみながら、屋久島の自然を学べます。約100名のツアーガイドがいるようです。

     

    近年では、外国人利用客が増加傾向にあり、多言語対応などの対策も進められています。

     

    しかし、観光客の増加に伴い、し尿処理や、ごみの増加、山岳遭難事故が発生することなど、利用マナーの向上が課題に挙げられることも少なくありません。

     

    白神山地

    屋久島と同じ時期に世界遺産に登録された白神山地は対策が後手に回りました。世界遺産を期に観光客が増加したにもかかわらず、ガイドツアー実施の依頼には個人ベースでの対応をしばらく続けていたというのです。

     

    2002年からは認定ガイドによるツアーが実施され始めましたが、開始時点での認定ガイドの人数は10名。当時、白神山地に訪れていたのは年間4,000人です。

     

    2023年現在、利用者は減少していると言われています。

     

    青森・秋田県境に位置するため、管轄区域が多く、適切な利用に対する意見が錯綜することが課題となっているようです。

     

    このように、日本でのエコツーリズムはまだまだ対策が十分とは言えない状況にあります。

     

    出典:環境省「エコツーリズムに関する国内外の取組みについて」

     

    エコツーリズムが抱える課題

    森の中でツアー

    iStock/Deagreez

     

    自然保全への意識が高まる昨今、エコツーリズムの重要性はますます増しています。しかしその一方で、根深い課題があるのも事実です。

     

    自然保護と経済成長のギャップ

    エコツーリズムの目的は、自然を保護しながら観光業として成立させること。しかし観光客が増えれば自然に負荷がかかり、少なからず生態系に影響を与えてしまいます。

     

    逆に制限を強めると訪れる人が減り、事業として成り立たなくなります。このバランスの見極めは、今後も引き続き課題と言えるでしょう。

     

    ガイド不足

    古来からの自然がそのまま残る場所をツアーとして提供するには、経験豊富なツアーガイドの存在が欠かせませんが、このガイドの高齢化や後継者不足が問題視されています。

     

    また若くても未熟で知識不足なガイドでは、十分な案内ができません。自然に負荷をかけるかもしれませんし、観光客が満足できるクオリティに満たないかもしれませんよね。

     

    そうしたガイド不足問題についても、今後の動向が注目されています。

     

    エコツーリズムとは、自然と向き合う仕組みの1つ

    白神山地

    iStock/yankane

     

    エコツーリズムは、地球の自然保護・生態系保全の観点から、今後永続的に行わなくてはいけない取り組みです。「国が決めた仕組み」だと簡単にとらえるのでなく、地域に住む人も観光に訪れる人も一人ひとりが真摯に考え、ルールとマナーを守って自然と向き合わなくてはなりません。

     

    観光客が増えれば自然に負担がかかる。確かにそうした葛藤はありますが、観光による収入がその土地をうるおしているのも事実です。

     

    エコツーリズムに則った観光(エコツアー)も充実しています。こうしたツアーなどを上手に使い、自然に触れ歴史を知る知的好奇心を満たす旅行を楽しんでみませんか。

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