外国人雇用と社会保険のすべてを徹底解説|加入義務、扶養、在留資格ごとの手続き

日本で働く外国人の方にとって、社会保険はご自身の権利と義務に関わる重要なテーマです。

特に、就職や転職を控えている方のなかには、社会保険料や手続きについて多くの疑問を抱えている方もいるかもしれません。

基本的に、外国人の方も一定の雇用条件こようじょうけんを満たせば、日本国民と同様に社会保険加入しゃかいほけんかにゅうが義務となっています。

この記事では、外国人の被保険者ひほけんしゃとなるための要件や在留資格との関係、そして転職・離職時の手続きまで、外国人雇用での社会保険に関するすべてを分かりやすく解説します。

制度を正しく理解して、安心して転職活動に臨みましょう。

社会保険は外国人でも加入が「義務」

日本で働く外国人にとって、社会保険の仕組みを理解することは、自らの権利と責任を果たすうえで不可欠なことです。

原則として、外国人も雇用条件こようじょうけんを満たせば、日本国民と同様に社会保険に加入する義務があります。

この加入義務は、病気やケガの際に医療費いりょうひの自己負担を抑える健康保険や、老後の生活を保障する厚生年金といった、あなたが日本で安心して生活を送るための制度を利用するために設けられています。

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日本の社会保険4種類と被保険者となるための加入要件

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日本の社会保険は大きく分けて4種類あります。この4つの保険は、病気や失業、老後の生活を支えるセーフティーネットです。

ここでは、それぞれの社会保険の種類と被保険者ひほけんしゃとなるための加入要件を解説します。

以下の表は、各保険の概要がいようと加入条件をまとめたものです。

社会保険の種類 概要(何に使える?) 加入条件
健康保険 (医療費の保障) 病気やケガをしたときの医療費が自己負担3割になる 労働時間と給与が会社の正社員の4分の3以上ある人 ※2024年10月からは従業員数51人以上の企業で週20時間以上、月額賃金8.8万円以上の人も対象
厚生年金保険 (老後の生活の保障) 老後、働けなくなったときに年金がもらえる。病気やケガで障害しょうがいが残ったとき、または死亡したときにも手当が出る 健康保険と同じ条件
雇用保険 (失業や育児の保障) 会社を辞めたとき、次の仕事が見つかるまでの生活費(失業手当しつぎょうてあて)がもらえる 1週間の労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用が見込まれる人
労災保険 (仕事中のケガの保障) 仕事中や通勤中の事故・ケガ・病気について、治療費ちりょうひ休業補償きゅうぎょうほしょうが全額支給される 雇用されるすべての労働者が対象。労働時間や雇用期間に関係なく加入

4つの社会保険が守ってくれる内容と種類

まずは上記の4つの社会保険の内容について、詳しく見ていきましょう。

1.健康保険:病気やケガの治療費が3割負担になる

健康保険は、病気やケガで病院に行ったとき、医療費の自己負担じこふたんを原則3割に抑えてくれる制度です。

高額こうがく治療費ちりょうひがかかった場合でも、自己負担じこふたんの上限が定められているため、安心して医療を受けることができます。

2.厚生年金:老後の生活費を保障する

厚生年金保険は、現役世代げんえきせだいが保険料を出し合い、老後の生活を年金として受け取る仕組みです。

老齢年金ろうれいねんきんだけでなく、万が一、病気やケガで障害しょうがいが残ったときの「障害年金しょうがいねんきん」、被保険者が亡くなったときの「遺族年金いぞくねんきん」もあり、自分自身と家族の生活を支えます。

3.雇用保険:失業しつぎょう時、育児・介護休業きゅうぎょう時の賃金を保障する

雇用保険は、失業しつぎょうして次の仕事を探している間に生活費(失業手当しつぎょうてあて)を支給する制度です。

また、育児や介護のために休業きゅうぎょうするときにも、生活を支えるための給付きゅうふがあります。これは、再就職さいしゅうしょくを支援し、労働者の生活安定を目的としています。

4.労災保険:仕事中の事故やケガを全額保障する

労災保険(労働者災害補償保険ろうどうしゃさいがいほしょうほけん)は、仕事中や通勤中に発生した事故やケガ、病気に対して、治療費や休業中きゅうぎょうちゅうの賃金などを全額保障ぜんがくほしょうする制度です。

この保険は、雇用形態や労働時間に関係なく、雇用されているすべての労働者に適用てきようされます。保険料は全額会社が負担するため、給与から引かれることはありません。

▼これらの社会保険の内容についてはこちら
困った時に頼れる制度を紹介!社会保険や休業手当、雇用保険の内容を把握しよう

社会保険への加入義務を判定する3つの基準

では、外国人が社会保険に加入する義務が生じるのは、雇用条件や在留資格のどのような条件を満たしたときなのでしょうか。

外国人雇用における社会保険の加入義務は、主に以下の3つの基準で決まります。

1.会社との雇用契約があるか

正社員だけでなく、契約社員、パート・アルバイトといった雇用形態こようけいたいでも、会社と雇用契約を結び、給与が支払われていれば、社会保険の対象となる可能性があります。

2.労働時間(正社員の4分の3以上など)の具体的な基準

前述ぜんじゅつの表にあるように、健康保険と厚生年金については、労働時間や労働日数が正社員の4分の3以上であることがひとつの大きな基準となります。

短時間雇用たんじかんこようの方も、企業の規模や賃金額によって被保険者ひほけんしゃとなる義務が発生する場合があるため、確認が必要です。

3.在留資格の種類(短期滞在者は対象外など)

外国人にとって、特に重要となるのが在留資格です。

「短期滞在」ビザの場合は働くことができないため、社会保険にも加入しません。

一方で、「特定技能」や「技術・人文知識・国際業務」のように、日本での就労を目的とした在留資格を持つ方は、雇用条件こようじょうけんを満たせば必ず社会保険に加入する義務があります。

▼日本の在留資格についてさらに詳しく知りたい方はこちら
ホテルで働くための就労ビザガイド|自分に合った取得ルートと就職までの流れ

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外国人が知っておきたい健康保険と厚生年金の仕組みと手続き

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給与から引かれる保険料の大部分を占めるのが、健康保険と厚生年金です。

ここでは、どのように保険料が計算され、手続きが完了するのか、外国人労働者の方が特に知っておきたい仕組みを解説します。

毎月の給与から引かれる保険料の計算方法

毎月支払う健康保険料や厚生年金保険料は、「標準報酬月額ひょうじゅんほうしゅうげつがく」というもので計算されます。

標準報酬月額ひょうじゅんほうしゅうげつがくとは、給与(基本給や各種手当かくしゅてあてなど)を一定の幅で区切った区切りのことです。

原則として、社会保険料は会社と被保険者ひほけんしゃ折半せっぱん(2分の1ずつ)して負担することが法律で定められています。

自分の負担分は、毎月の給与から自動的に差し引かれて会社から支払われます。

給与明細を見たときに「控除こうじょ」の欄に記載されている社会保険料は、自分の将来のために、会社といっしょに積み立てているお金なのです。

社会保険への加入に必要な3つの書類と提出先

外国人雇用において社会保険の加入手続きは、原則として会社が行いますが、そのために会社に提出を求められる主な書類があります。

以下の3点を確認しておきましょう。

資格取得届しかくしゅとくとどけ 社会保険に加入するための基本的な書類。会社が作成し提出する
在留資格関連書類ざいりゅうしかくかんれんしょるい 在留カードの写しやパスポートなど。外国人であることを証明し、雇用契約こようけいやく適法てきほうであることを示すために必要
個人番号こじんばんごう(マイナンバー)> 日本で生活するうえで各種手続きに必要となる番号

これらの書類をもとに、会社が管轄かんかつの年金事務所などに提出することで、社会保険加入手続きが完了します。

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転職・離職時の社会保険手続きで失敗しないための注意点

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転職を考えている方が社会保険の手続きでつまずくと、新しい仕事に集中できないこともあるかもしれません。

特に外国人は、在留資格にも関わるため、離職時と転職時の手続きの切り替えをスムーズに行うことが非常に重要です。

ここでは、自分のキャリアを中断させないための具体的な注意点を解説します。

【離職時】退職後の手続きは3パターン

会社を辞めたとき、次の仕事が見つかるまでの期間やその後のキャリアによって、社会保険の手続きは以下の3パターンに分かれます。

転職先がすぐに決まっている場合(切り替え)

新しい会社に入社するときに、会社が健康保険と厚生年金の切り替え手続きをします。

自分で行うことは、新しい会社に必要書類を提出することだけ。雇用保険も新しい会社に引き継がれます。

▼転職活動の進め方や保険証の返却へんきゃくについてはこちら
転職の手続きをスムーズに!保険証の返却へんきゃくについてご紹介

転職活動中の場合(国民健康保険と国民年金に切り替え)

会社を退職し、次の会社が決まるまでの間は、自分で手続きを行うことになります。

健康保険は「国民健康保険こくみんけんこうほけん」に、厚生年金は「国民年金」に切り替える義務があります。お住まいの市区町村しくちょうそんの窓口で手続きをしましょう。

▼転職活動中の保険の手続きについてはこちら
転職まで1ヶ月あく場合の健康保険と年金の扱いについて解説!

帰国する場合(資格喪失しかくそうしつ

帰国が決定したときは、健康保険・厚生年金ともに資格喪失しかくそうしつの手続きが必要です。

特に、厚生年金については、後述こうじゅつ年金脱退一時金ねんきんだったいいちじきんの申請に繋がるため、忘れずに手続きを行いましょう。

【帰国時】申請すれば戻ってくる年金脱退一時金

「これまで年金として支払ってきたお金は、日本を離れたら無駄になるのではないか」と不安に思う外国人の方も多いようです。

結論から言うと、一定の条件を満たせば、支払った一部のお金が「脱退一時金だったいいちじきん」として戻ってくる制度があります。

脱退一時金だったいいちじきんとは、厚生年金保険または国民年金の被保険者ひほけんしゃであった外国人が、日本を出国するときに請求できるお金です。

健康保険と厚生年金の被保険者ひほけんしゃ期間が6カ月以上あることなどが加入条件となっています。

手続きの流れとしては、帰国後2年以内に、必要な書類を年金事務所ねんきんじむしょなどに送付して請求します。

この制度があることを知っておくことで、将来の不安を大きく軽減できるでしょう。

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外国人労働者の雇用や社会保険に関するよくある質問

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ここからは、日本で働く外国人の皆さんが社会保険に関して抱きやすい、特に多い疑問にQ&A形式で答えます。

給料明細の「控除」って何ですか?社会保険料以外に何が引かれていますか?

社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険)以外に、所得税しょとくぜい住民税じゅうみんぜいという「税金」が主に引かれています。給与から差し引かれる社会保険料や税金は、あなたが日本で安心して生活するためのサービス(医療、年金、行政サービスなど)を支える大切な財源ざいげんとなっています。

外国にいる家族を日本の社会保険の「扶養」にできますか?

原則として可能です。ただし、扶養ふように入れることができる家族の範囲や、収入の条件、日本語の書類など、満たすべき要件が細かく定められています。たとえば、海外に住む配偶者はいぐうしゃや子どもを健康保険の扶養ふように入れる場合、その家族が「主としてあなたの送金によって生活している」ことを証明するため、送金の証明書などを会社経由で提出することが必要です。

パートやアルバイトでも雇用保険や労災保険に入る義務がありますか?

労災保険は、アルバイトやパートを含むすべての労働者に加入義務があります。雇用保険の加入要件は正社員と基本的に同じです。外国人雇用の場合も、在留資格や国籍に関係なく、労働時間が基準となります。「外国人だから」「パートだから」という理由で、会社が加入させないことは法律違反となる可能性が高いです。詳しく知りたい方はこちら

日本で社会保険に加入していた期間は、母国での年金に影響しますか?

影響する場合があります。日本と母国の間で「社会保障協定しゃかいほしょうきょうてい」が結ばれている場合、両国での年金加入期間を通算つうさんできる場合があります。日本での年金加入期間を母国の年金制度に反映はんえいできる可能性があるため、母国が社会保障協定しゃかいほしょうきょうていを結んでいるかどうかを外務省のウェブサイトなどで確認してみることをおすすめします。

転職先が決まるまで、社会保険はどうなりますか?

すぐに「国民健康保険」と「国民年金」に切り替える義務があります。手続きをしないまま病院にかかると、医療費の全額を自分で支払うことになったり、国民年金未加入こくみんねんきんみかにゅうの期間が老後の年金受給額ねんきんじゅきゅうがくにも影響したりするかもしれません。これらのことを念頭ねんとうに、手続きを遅らせないようにしましょう。

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今回は、外国人雇用における社会保険の種類、加入要件、そして転職・離職時の具体的な手続きについて解説しました。

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