ホテルが返金対応をするとはどんなトラブル・クレームが起きたとき?
日本のホテルは低価格帯であっても、一定のレベルを保ったサービスを提供していることがほとんどです。そのため、返金を要求されるほどの大きなトラブルや重大クレームが起きることは、そう多くはないでしょう。
しかし、宿泊施設の口コミサイトなどには時折「全額返金を要求したいくらいひどかった」という意見があったり、法律相談のホームページに「自分はホテルの支配人だが、こんな理由でお客様が全額返金を要求している」といった相談が寄せられることがあります。
日本のホテルでお客様が返金を要求したくなるのはどのようなトラブルなのでしょうか。またホテル側ではどのように対応するべきなのか、考えていきましょう。
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返金を要求されるのはこんなトラブル
返金を要求される背景には、ホテル側に落ち度がある場合もあれば、お客様の感覚で「気に入らない」という場合もあります。
実際に返金を要求した、あるいは要求したいとお客様が感じるケースの例を見ていきましょう。
客室に害虫が出現
きちんと客室清掃を行っていても、害虫を完全に防ぐことはできないでしょう。しかし、客室にゴキブリやムカデといった害虫が出現した場合、不快にならないお客様はいないですよね。
害虫を退治し、客室を変更してもまた現れるのでは、という不安が残り「こんな思いをさせられたのにお金を払いたくない!」という気持ちになっても無理はありません。
清掃が不十分
洗面台や浴室に髪の毛が落ちている、ベッドの下に埃がたまっているなど、清掃が不十分であることは、返金を要求したくなる理由になり得ます。
ビジネスホテルなど低価格帯のホテルでも、清潔が保たれていることは当たり前。その当たり前ができていないホテルに、お金を払って滞在したくはないでしょう。
よほど不潔な状態でなければ実際に要求をするまでに至ることは少ないかもしれませんが、気持ちよく支払ってはいただけないはずです。
騒音が気になる
隣の部屋の人が騒いでいる、エアコンの音がうるさいといったことは、騒いでいるお客様に注意を促したり、客室の変更で解決できるケースが多いでしょう。
しかし、空いている客室が無かったり、注意を促しても静かにしてもらえず、騒音で眠れない!となれば返金を要求される恐れがあります。
実際に法律相談のホームページでは、騒音による睡眠不足でせっかくの旅行が台無しになった!というクレームを受け、宿泊費の全額に加えて往復の交通費まで要求されたという相談が見受けられました。
料理に関するトラブル
料理に関するトラブル、クレームは生焼けや異物混入、アレルギー食材を使ってしまったなどホテル側のミスも起こり得ますが、味付けが気に入らない、値段に見合っていないなどお客様の感覚に左右される部分も多いのではないでしょうか。
ホテルのレストランで料理を全て食べてしまった後に「美味しくなかったから返金してほしい」と申し出るお客様も稀にいるのだそうです。
従業員の対応について
従業員の対応の対応については、本当にひどい対応でクレームになって当たり前というケースももちろんあるでしょう。その一方で、わずかな不手際を大ごととしてとらえたり、重箱の隅をつつくようなお客様もいます。
従業員の対応による返金の要求があった場合には、お客様と該当の従業員、双方の言い分をよく聞いて判断してくださいね。
予約の手違い
ホテルや予約サイトのミス、あるいはお客様の勘違いによって予約が完了していない、希望日とは別の日で予約を入れてしまったなどの問題は、ホテルマンなら誰でも一度は直面したことがあるのではないかと思います。
こうしたケースで要求を受ける可能性があるのは、クレジットカード決済で自動引き落としされるキャンセル料の返金です。
特にインバウンド客を受け入れているホテルや民泊では、OTAを通して宿泊日のかなり前から予約を入れるお客様の勘違いで予約の手違いが多発。
宿泊施設やOTAの規約ではキャンセル料をいただくことになっていても、返金を求めるお客様が多く、言葉も通じにくいため対応に苦戦しがちです。
また、世界各国に展開している、あるOTAを通した予約では、「1人部屋だと書いてあったのに宿泊したら相部屋だったから返金を要求した」「掲載されている写真と案内された客室が明らかに違ったから返金してもらった」といった口コミが散見されます。
こうしたトラブルによる返金を抑制するためには、利用するOTAをきちんと選ぶことが重要です。
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返金を要求された!ホテルはどう対応する?
お客様から返金の要求を受けた場合、ホテル側はどう対応するべきでしょうか。
サービスや設備が原因でお客様にケガを負わせてしまったなど、明らかにホテル側に落ち度がある場は別として、望ましい対応を考えていきましょう。
追加のサービス提案する
お客様に金銭的な損害を与えたわけではないものの、ホテルの不手際で嫌な思いをさせてしまった場合はいったん、追加のサービスを提案してみてはいかがでしょうか。
ワンランク上の客室への変更や、お詫びのしるしとしてお食事券を提供するなどで誠意を示せば、返金には至らず納得していただける可能性があります。
ただし「次回以降の宿泊で使える割引券」の提案は要注意です。人によっては「こんなホテルもう2度と来ないわよ!」とヒートアップする恐れがあるので、その場で使えるサービスを提案した方が良いでしょう。
ホテルに落ち度がなければお断りする
ホテルの規約に沿って、ホテル側に落ち度がないと判断できる場合にはきっぱりとお断りをしても良いでしょう。その場のクレームを解消するために特別扱いをしては、ルールを作る意味がなく他のお客様に不公平です。
あるホテルでは理不尽な理由でしつこく返金を求めるお客様の対応に苦慮し、致し方なしに警察を呼んだらおとなしく諦めてくれたということです。
状況によっては公的機関の助けを借りることも考えて、適切に対応しましょう。
返金の要望に応じる
返金に応じるだけの理由が無ければきっぱり断るべきだという考えがある一方で、要望があれば返金に応じるべきだという人もいます。
クレーム対応に割く時間や人件費、お客様が返金対応に満足してプロモーターになってくれる可能性を考慮すれば、ホテルにとっても損では無いはず。また、気持ちよく帰ってもらうことを最優先とすれば、全額返金がベストだという意見です。
確かに理不尽であっても、返金に応じたほうが良い結果に収まることはあるのでしょう。柔軟な考えをもって判断したいところですね。
返金に応じるかどうかは慎重に!
返金を求めるお客様に納得してもらうことと、すべてのお客様に公平であることを両立するのは難しいでしょう。
返金に応じるべきかは否かはケースバイケース。お客様の申告によく耳を傾け、対応を慎重に検討してください。