ホテル業界への転職や就職を考えるとき、気になるのが転勤があるかどうかでしょう。全国展開のホテルをはじめ、異動や転勤が発生するケースはたしかにありますが、すべての職場で頻繁に起こるわけではありません。この記事では、ホテル勤務で転勤が発生しやすいタイミングや理由、転勤のメリット・デメリットに加え、近年注目されている「転勤なし」の働き方についても詳しく解説します。
ホテル勤務に転勤はある?まずは基本をチェック
ホテル業界で働く場合、必ずしも転勤が前提というわけではありません。
業界全体で見ると、同じホテルで長く勤務しているスタッフも多く、転勤のない働き方をしている人も少なくありません。
ただし、全国展開している大手のホテルチェーンやビジネスホテルでは、転勤の可能性が比較的高い傾向があります。
たとえば、運営会社が全国に複数の拠点を持っている場合、人員調整や新規開業対応などを目的とした異動が発生しやすくなるからです。
また、同じホテル業界でも「どの企業に所属しているか」「どのエリアで働いているか」「どんな職種に就いているか」によって、転勤の可能性は大きく異なります。
特にフロントや接客などの一般職よりも、マネジメント職や本部配属などの総合職に就いている場合のほうが、異動を伴うキャリアパスが多い傾向です。
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ホテル勤務で転勤が発生しやすいタイミングとは
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ホテル業界では、日常的に頻繁な転勤があるわけではありませんが、特定のタイミングや事情によって転勤が発生するケースがあります。ここでは代表的な2つのパターンを紹介します。
新規開業に伴う異動
新しいホテルをオープンする際には、経験豊富なスタッフが必要とされます。
特に、すでに会社の理念や業務フローを理解している社員は、開業初期の混乱を抑え、スムーズな立ち上げを担う存在として期待されるようです。
このような理由から、信頼のおける社員が「立ち上げ要員」として、他地域の新規開業ホテルへ異動を命じられることがあります。
現地で新たに採用されたスタッフへの指導や、オペレーションの標準化など、幅広い業務を担当することになるため、転勤とはいえ重要な役割を任されるケースです。
その分、責任も大きくなりますが、開業に関わる貴重な経験が得られるため、キャリアにとってプラスになると捉える人も少なくありません。
昇進・役職者としての異動
もうひとつ転勤が発生しやすいのが、昇進やポスト異動のタイミングです。
特に支配人や部門責任者といった役職は各施設に1人〜数人しか配置されていないため、空きが出た場合に本社や他施設から人材が配置されることがあります。
この場合も、適任者として声がかかることは「評価されている証」といえるでしょう。
マネジメント職としてのステップアップの機会になる一方で、異動先でのチームづくりや業務改革など、新たな挑戦が待っている可能性もあります。
こうした異動は、企業側としても「信頼している人材に任せたい」という前向きな意思の表れであることが多く、転勤というより抜擢と受け取られる場合もあります。
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ホテル勤務における転勤のメリット・デメリット
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ホテル業界で転勤が発生する理由には、昇進や新規開業などポジティブな背景も多くあります。
ただし、どんなに前向きな転勤であっても、生活や感情に変化が伴うのは事実です。ここでは、転勤によって生まれるメリットとデメリットを整理してみましょう。
メリット:キャリアアップやスキルの幅が広がる
転勤は、新しい土地や環境で経験を積む貴重なチャンスでもあります。
これまでとは異なる施設で働くことで、新たな業務フローやスタッフとの連携方法を学べるだけでなく、トラブル対応や判断力など、実践的なスキルも磨かれていくからです。
また、役職付きの転勤であれば、マネジメント経験を積める絶好の機会。支配人や部門責任者としての経験は、今後のキャリアにおいて大きな武器になるでしょう。
さらに、新しい人間関係や地域との関わりが生まれることで、視野が広がるというメリットもあります。
自分では想像していなかった働き方や価値観に触れることで、成長を感じられる人も多いようです。
デメリット:引っ越し負担や人間関係リセットなど
転勤には少なからず負担が伴います。引っ越し作業や住まい探し、生活環境の再構築には時間も費用もかかります。
特に家族がいる場合は、配偶者の仕事や子どもの転校といった問題も出てくるでしょう。
また、これまで築いてきた人間関係を一度リセットしなければならない点も、大きなストレスになることがあります。
特にホテル業界は、お客様との信頼関係やチームワークが重要な職場です。新しい職場でゼロから関係性を築いていくのは、精神的にも負担になるかもしれません。
場合によっては、慣れ親しんだ地域を離れることへの喪失感や孤独感が、転勤をつらく感じさせることもあるでしょう。
ホテル業界でも進む転勤なしの働き方
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これまでホテル業界といえば、全国展開している企業も多く、転勤がつきものというイメージを持たれがちでした。
ところが2020年以降では、転勤そのものを見直す動きが広がっており、「転勤なしの働き方」を選べるホテルも増えてきています。
なぜ今、転勤なしの流れが広がっているのか
転勤制度の見直しが進んでいる背景には、社会全体の価値観の変化があります。
働き方改革の影響により、企業は従業員一人ひとりのライフスタイルや家庭環境に配慮した柔軟な働き方を模索するようになりました。
また、長く働き続けてもらうためには、生活の安定が不可欠です。
そのため、「希望しない転勤が原因で人材が離れてしまう」というリスクを避けるために、転勤を減らしたり廃止したりする企業が増えています。
実際、厚生労働省が発表した資料によれば、すでに転勤制度の廃止や見直しを行っている企業も一定数存在し、特に若年層を中心に「転勤がないこと」が就職・転職時の重視ポイントになりつつあります。
ホテル業界でも同様に、地域密着型の施設や人材定着を重視する企業では、「転勤なし」「勤務地限定」といった制度が導入されるケースが増えてきているのです。
「転勤なし」求人はどう見つける?
転勤のない職場を探すには、いくつかのチェックポイントがあります。
まず、求人票に「勤務地限定」「転勤なし」といった記載があるかどうかを確認しましょう。明記されている場合は、その条件での採用である可能性が高いです。
また、求人票に記載がなくても、面接や説明会の場で「異動の可能性」「勤務地の希望がどの程度考慮されるのか」などを具体的に確認することが大切です。
企業によっては「原則なし」「将来的に可能性あり」など、柔軟な表現になっていることもあるため、丁寧にヒアリングすることが安心につながります。
勤務先のホテルで転勤を命じられたときの選択肢と向き合い方
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突然、転勤を命じられたら、どんな人でも少なからず戸惑いがあるものです。
特に地元での暮らしに愛着があったり、家族との生活が大きく関わっていたりする場合、簡単には割り切れないこともあるでしょう。
ここでは、そんなときにどのような視点を持てばよいか、「受け入れる場合」と「難しい場合」それぞれの考え方を紹介します。
前向きに捉えるには?
転勤には、たしかに不安がつきものです。しかし一方で、未知の環境で新たな経験を積むことができるという前向きな側面もあります。
たとえば、異なる地域でのお客様対応、スタッフとの新しい人間関係、業務の進め方の違いに触れることは、自分の視野を広げてくれるきっかけになります。
マネジメントや指導といった新たな役割が任されることもあり、自分でも気づかなかった強みや適性が見えてくるかもしれません。
転勤をチャンスと捉え、「この経験が将来のキャリアにどう活きるか」を考えてみると、不安が少しやわらぎ、前向きな気持ちになれるでしょう。
どうしても難しいときは?
どんなに前向きに捉えようとしても、どうしても転勤を受け入れられない状況もあります。
家庭の事情や健康面、ライフプランの優先順位によっては、「今回は難しい」と感じるのも自然なことです。
そのような場合は、まず上司や人事に正直に相談してみましょう。企業によっては、異動時期の見直しや他の選択肢を提示してくれるケースもあります。
また、育児や介護など、客観的に正当と認められる理由があれば、転勤を断れる可能性もゼロではありません。
それでも状況が改善されず、自分の価値観や働き方と大きくズレを感じるようであれば、転職という選択肢も視野に入れることを検討してよいでしょう。
出典:勤務地などを限定した「多様な正社員」の円滑な導入・運用に向けて/厚生労働省ホテル勤務の転勤事情を理解して、自分に合った働き方を選ぼう
ホテル業界で働くうえで、すべての職場で転勤があるわけではありません。
ただし、全国展開の企業やマネジメント職を目指す場合は、一定のタイミングで転勤が発生することもあります。
新規開業や役職への昇進など、転勤は信頼の証として前向きに受け止められる一方、生活や人間関係への影響もあるため、慎重な判断が求められます。
最近では、「転勤なし」や「勤務地限定」といった働き方も広がりつつあり、希望に応じて職場を選べる時代になってきました。
無理に我慢する必要はありません。自分の大切にしたい働き方を見つめ直し、納得できるキャリアを選びましょう。
また、「転勤があるかどうか」を明確にしたうえで就職・転職先を選びたい方には、宿泊業界専門の求人サービス「おもてなしHR」の活用もおすすめです。
転勤の有無が明記されている求人も多数掲載されており、不安な点があればキャリアアドバイザーに直接相談することも可能です。
自分に合った働き方を見つけるために、ぜひ活用してみてくださいね。
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