「退職所得」の源泉徴収票とは?「給与所得」との違いや見方・作成方法を解説!

退職所得の源泉徴収票とは、退職手当にかかる所得税についての詳細が書かれた書類のことです。雇用主は、退職手当を支払った従業員に対して源泉徴収票を発行することが義務付けられていますが、発行に期限はあるのでしょうか。給与所得の源泉徴収票の違いや、源泉徴収票の見方や作成方法とあわせてご紹介します。

目次

    源泉徴収票とは?

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    改めて、源泉徴収票がどのような書類なのかを確認していきましょう。

     

    源泉徴収票とは、所得税に関する書類です。従業員の給料から所得税の天引き・納税を行っている雇用主は、年に1度、従業員に対して源泉徴収票を発行する義務があります。これは、従業員の雇用形態を問いません。

     

    源泉徴収票には従業員に支払った年収・賞与・退職金の金額や、これらにかかる所得税額が記載されます。転職時や確定申告の際にも必要になる書類ですので、該当する従業員には漏れなく発行しましょう。

     

    源泉徴収票は「退職所得」と「給与所得」の2種類

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    雇用主が従業員に発行する源泉徴収票は、「退職所得」の源泉徴収票と「給与所得」の源泉徴収票の2種類に分けられます。それぞれの違いについてご紹介します。

     

    「給与所得」の源泉徴収票とは

    給与所得の源泉徴収票とは、従業員の1年間の賃金に対する所得税について書かれた書類です。源泉徴収票に記載されるのは、給与・賞与に対する所得税額が主です。あわせて、扶養家族の人数や生命保険料などの控除に関する情報も記載されます。

     

    源泉徴収票に記載する所得税額の算出は、1月1日から12月31日までの給与が対象。よって、11月~12月に行われる年末調整の後に発行し、12月の給与とあわせて配布するのが一般的のようです。

     

    また、給与所得の源泉徴収票は退職した従業員にも発行する必要があります。この場合は、1月1日から退職日までの情報が記載されます。発行は、退職後1カ月以内が原則とされていますので覚えておきましょう。

     

    「退職所得」の源泉徴収票とは

    退職所得の源泉徴収票とは、従業員の退職手当・退職金に対する所得税について書かれた書類です。

     

    従業員に退職手当を支払う必要がなければ、発行する機会はないでしょう。しかし裏を返せば、該当者には退職所得・給与所得、この両方の源泉徴収票をあわせて発行・送付する必要があると言えます。

     

    退職所得の源泉徴収票は原則、退職後1カ月以内に発行しなければならない決まりがありますので、従業員の退職後はなるべく早めに用意するよう心がけましょう。

     

    なお、源泉徴収票には「公的年金等の源泉徴収票」という種類もありますが、これは雇用主から発行するものではありません。国民年金・厚生年金など、一定以上の年金額を受け取っている方に対し、日本年金機構から発行される書類と覚えておきましょう。

     

    「退職所得」の源泉徴収票の見方

    退職所得の源泉徴収票は、項目が8つに分けられています。まずは、8つの項目に記載されている内容と見方を押さえておきましょう。

     

    1.支払を受ける者

    「支払を受ける者」には、納税者である従業員情報が記載されます。記載内容は、個人番号・住所又は居所・役職名・氏名などです。

     

    2.区分

    区分は、下記の3つに分かれています。

    • ・上段:
    • 所得税法第201条第1項第1号並びに地方税法第50条の6第1項第1号及び第328条の6第1項第1号適用分

     

    • ・中段:
    • 所得税法第201条第1項第2号並びに地方税法第50条の6第1項第2号及び第328条の6第1項第2号適用分

     

    • ・下段:
    • 所得税法第201条第3項並びに地方税法第50条の6第2項及び第328条の6第2項適用分

    上段・中段・下段の区分によって、従業員の納付税額が異なります。退職者がどの区分に当てはまるのかをしっかりと確認したうえで、作成にあたりましょう。

     

    3.支払金額

    「支払金額」には、退職手当・退職金の合計額が記載されます。退職の際に会社が従業員に支払う総額、と覚えておきましょう。

     

    4.源泉徴収税額

    「源泉徴収税額」には、退職所得に対して課せられる所得税の金額が記載されます。

     

    退職所得は退職手当と異なり、課税対象となる金額のことを指します。退職所得の計算方法は、退職手当から後述する「6.退職所得控除額」を差し引き、50%を掛けた金額です。退職手当の総額に課税される訳ではないことを覚えておきましょう。

     

    5.特別徴収税額

    「特別徴収税額」には、住民税の金額が記載されます。退職手当には、所得税の他に「市町村民税」「道府県民税」などの住民税が課せられるのです。

     

    住民税の税率は、課税退職所得金額に対して一律10%。税率の内訳は、市町村民税が6%、道府県民税が4%です。

     

    6.退職所得控除額

    退職手当は、勤続年数に応じて所得税の控除額が定められています。控除額の計算式は、勤続年数20年以下・20年超を基準に2つに分けられ、勤続年数が長ければ長いほど控除される額が大きくなります。

     

    算出された退職所得の控除額の合計が、「退職所得控除額」に記載されます。

     

    7.その他退職者情報

    「1.支払を受ける者」とは別に、勤続年数・就職年月日・退職年月日を記載する欄も設けられています。

     

    8.支払者情報

    「支払者情報」には、退職手当・退職金を支払った雇用主の情報が記載されます。記載内容は、個人番号又は法人番号・住所又は所在地・氏名又は名称です。

     

    「給与所得」の源泉徴収票の見方

    退職所得の源泉徴収票よりも発行する機会が多い、給与所得の源泉徴収票についても見方を押さえておきましょう。給与所得の源泉徴収票に記載される9つの項目についてご紹介します。

     

    1.支払を受ける者

    「支払を受ける者」には、住所又は居所・受給者番号・個人番号・役職名・氏名などの従業員情報が記載されます。退職所得の源泉徴収票と同様です。

     

    2.種別

    「種別」は、従業員に支払った課税対象となるお金の種別が記載されます。

     

    在籍中の従業員の区分で最も多いのは、「給与・賞与」でしょう。他には、俸給・歳費・財形給付金・財形基金給付金などがあります。

     

    3.支払金額

    「支払金額」は、「2.種別」に記載されているお金の合計額です。

     

    種別が「給与・賞与」であれば、1月1日から12月31日までの1年間で、会社が支払った給与とボーナスをあわせた総支給額が記載されます。いわゆる“額面”のお金です。

     

    4.給与所得控除後の金額

    「給与所得控除後の金額」には、税制上の「所得」が記載されます。給与所得には、年収に応じて非課税になる控除額が定められており、この控除額を「3.支払金額」から差し引いたものが給与所得控除後の金額です。

     

    なお、給与所得控除の金額は2020年から10万円引き下げられていますので、2020年以前の計算を混同させないよう注意が必要です。

     

    5.所得控除の額の合計額

    「所得控除の額の合計額」は、扶養家族の人数や、障害者、ひとり親世帯であるかどうかなどによって定められた控除額の合計です。厚生年金・健康保険・失業保険などの社会保険や、従業員個人で加入している生命保険や地震保険などにも控除が適応されます。

     

    また2020年からは、給与所得控除と同様に基礎控除額も変更されています。合計所得が2,400万円以下の従業員は、基礎控除額が38万円から48万円に改正されていますので注意しましょう。なお、48万円の基礎控除額のみ源泉徴収票に記載不要とされています。

     

    このように、所得控除の額の合計額には混乱しやすい要素がたくさんあります。控除対象が多いうえ控除額もバラつきがあるため、作成時には漏れやミスに注意してくださいね。

     

    6.源泉徴収税額

    「源泉徴収税額」には、最終的に支払う住民税の納税額が記載されます。

     

    計算は、「4.給与所得控除後の金額」から、「5.所得控除の額の合計額」を差し引いて課税所得が明らかにし、課税対象の所得に年収に応じた税率をかけて算出します。

     

    2013年1月1日から2037年12月31日までの所得に対しては、通常の税率に加え、東日本大震災の特別措置法によって定められた「復興特別所得税」の2.1%も加算されます。

     

    7.控除対象となる家族・控除額の情報

    源泉徴収票・中段の大部分を占めるのが、「5.所得控除の額の合計額」に関連する情報です。下記のように、扶養者の有無などの項目が用意されています。

    • ・控除対象配偶者の有無
    • ・配偶者特別控除の額
    • ・控除対象扶養親族の数(特定・老人・その他)
    • ・16歳未満扶養親族の数
    • ・障害者の数(本人を除く)
    • ・非居住者である親族の数

    8.その他支払いによる控除額

    下記のような「5.所得控除の額の合計額」の内訳も記載されています。

    • ・社会保険料等の金額
    • ・生命保険料等の控除額
    • ・地震保険料の控除額
    • ・住宅借入金等特別控除の額

    9.その他所得控除についての詳細情報

    「8.その他支払いによる控除額」の下には摘要欄が設けられ、その下にはさらに詳細な情報を記載する欄が設けられています。生命保険料や住宅借入金等特別控除の額の内訳、控除対象扶養親族の情報などが記載される場所です。

     

    変更された基礎控除額の欄も設けられていますが、控除額が48万円の場合はここは記入不要とされているので、混乱しないよう注意しましょう。

     

    「退職所得」の源泉徴収票の作成方法は?

    iStock.com/itakayuki

     

    給与所得の源泉徴収票、退職所得の源泉徴収票ともに、作成する方法は大きく分けて下記の4種類です。

    • ・Excelなどの表計算ソフト
    • ・給与計算をしている人事労務向けのソフト
    • ・e-Tax
    • ・税理士などへの委託

    国税庁のテンプレートを基に作られたExcelのフォーマットは、インターネット上で無料で公開されています。使用の際は最新の税制が適用されているかどうか、また計算式が正しく組まれているかを確認する必要があります。

     

    上記のフォーマットを使用することが不安なら、国税庁が運営しているe-Taxのソフトを使用するのが賢明です。

     

    給与計算などを行うために人事労務向けのソフトを導入している企業であれば、源泉徴収票の作成機能がついているかを確認してみてください。おおよそのソフトで、機能が備わっているはずですよ。

     

    参照:源泉所得税関係の手続きについて / 国税庁

     

    参照:源泉徴収票等作成ソフト / 国税庁

    「退職所得」の源泉徴収票はすぐに手続きを

    退職所得の源泉徴収票は、退職金をはじめとした退職手当を支払った従業員に対し、雇用主からの発行が義務付けられている書類です。原則、退職後1カ月以内に提出することが定められています。

     

    退職手当の総額や所得税・住民税の納税額が記載され、退職した従業員にとっても国にとっても重要な書類である退職所得の源泉徴収票。従業員の退職後にすぐ着手するのはもちろんのこと、ミスなく作成できるよう前もって準備を整えておくのがおすすめです。

     

     

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