ホテルのレベニューマネジメントとは?基礎知識や手法を解説

東京オリンピック開催期間中のホテルの宿泊料金が高騰している、というニュースが世間を騒がせたように、ホテルの宿泊料金は一定ではありません。季節や休日、イベントなどによって価格が変動するシステム、これをレベニューマネジメントと呼びます。当記事では、ホテル業界におけるレベニューマネジメントの概要と、具体的な手法について解説します。

目次

    レベニューマネジメントとは

    ホテルの看板

    shutterstock/Hadrian

     

    レベニューマネジメント(Revenue Management)とは、「繰越せない在庫」を持つビジネスジャンルにおいて用いられる販売手法のこと。もともとは、1970年代に行われたアメリカ航空業界の規制緩和がきっかけで生まれたものです。航空機の座席と同じように、ホテルの客室も「繰越せない在庫」という共通点があることから、ホテル業界にもレベニューマネジメントが広がっていきました。

     

    ホテル業界におけるレベニューマネジメントとは、具体的には顧客の需要に合わせて宿泊料金を変動させることをいいます。冒頭で、東京オリンピック開催期間中の宿泊料金高騰について触れましたが、これは「高い料金を払ってもオリンピックを見たい」という需要が一定数あるからこそ成立しています。こうした市場の需要をしっかりとつかむことで、ホテル側の収益を拡大する、これがレベニューマネジメントの目指すものです。

     

    レベニューマネジメントの手法

    やり方を説明する男性

    shutterstock_/turgaygundogdu

     

    ここからは、レベニューマネジメントの具体的なやり方を解説します。

     

    顧客の行動を分析、需要を予測する

    顧客の需要・ニーズをいかに正確に把握・予測できるか。これがレベニューマネジメントの成果を左右します。

     

    例えば、連休中に家族旅行の計画を立てているファミリー世帯と、急遽出張が入ったビジネスマンを比較してみましょう。ファミリー世帯は早めに宿泊日を決められるので、複数のホテルをじっくりと比較し、より条件の良い施設を探す余裕があります。利便性や設備の充実度に大きな差がなければ、「早期予約で割引」など特典のあるホテルを選ぼうとするでしょう。一方でビジネスマンの場合、ゆっくり選んでいる余裕はありません。多少高くてもいいから、とにかく泊まるところを確保したいと考えるはずです。

     

    このように、顧客をパターン(セグメント)別に分類し、セグメントごとにどう在庫(客室)を割り振れば収益を拡大できるかを決めていきます。

     

    需要に応じた料金と予約受入数の設定

     

    ホテル側としては、なるべく早期に予約を入れてもらった方が運営が安定します。前出のファミリー層とビジネスマンの例でいえば、早期予約では正規料金よりも割り引いた料金で予約を受け付け、ファミリー層の獲得を狙います。

     

    しかし、割引料金で客室を埋めてしまっては、宿泊日近くになってやってくるビジネスマンをお断りせざるを得ません。ビジネスマンに当たるセグメントは、多少料金が高くても泊まってくれるわけですから、収益拡大のためにはこの分の客室を残しておかねばなりません。レベニューマネジメントでは、それを見越して早期にどれくらいの予約を受け入れるかを判断する必要があります。

     

    実際の収益と予測を比較し、検証する

    実際の現場では、予測通りにうまくいくことはほとんどありません。目標とした収益と実際がどの程度乖離していたかを検証し、目標達成しなかった場合はその理由を考えて次に生かす、PDCAサイクルを回すことが重要です。

     

    設定した料金が低すぎたり、もしくは高すぎたのではないか?キャンセル分を考慮して予約を取っていたか?など、さまざまな点を検証し、改善していく必要があります。

     

    レベニューマネジメントに関する具体例

    お客様対応するホテルマン

    shutterstock/Monkey

     

    顧客満足度とホテル運営の両立

    レベニューマネジメントの話では収益や利益について言及されることが多いですが、同じように顧客満足度も重視されるべきです。これらをどう両立するか、具体例で見てみましょう。

     

    ホテルに客室数が30あるとします。1部屋あたり1万円が正規価格で、30部屋を早い者勝ちで埋めてしまえば、売上は30万円になります。しかし、直前になるといくつかのキャンセルが出るはずなので、空室を埋めるために急遽値下げの必要が出てきます。値下げしてキャンセル分を埋めたとしても、売上は30万円には届きません。顧客としても、「早く予約しても安くない」となり、満足からはほど遠いでしょう。

     

    一方レベニューマネジメントを行い、セグメントごとに価格を設定、販売制限をかけた場合はどうなるでしょう。例えば早期予約を8千円で10部屋分受付け、宿泊日から1カ月前までを1万円で10部屋、それ以降から当日までを1万5000円で10部屋で受け付けると、単純計算で売上が33万円となります。ホテル側としては収益が増え、顧客側からは「早く予約した方がお得感がある」「宿泊日ギリギリでも部屋がとれた」となり、顧客満足度とホテル運営の両立が叶います。

     

    オーバーブック

    レベニューマネジメントでは直前にキャンセルが出ることを見越して、あらかじめ多めに予約を取っておきますが、思ったよりもキャンセルが出ずにオーバーブック(過剰予約)してしまう場合があります。

     

    この場合は他のホテルを案内するリロケーションという対応がとられてトラブルを回避しますが、送迎や上のランクのホテルをとるなどのコストが発生します。しかしそれに懲りてオーバーブックを避けるようにすると、毎日高確率で空室が出ることになり、長期的に見れば機会損失の方が大きくなります。

     

    どれだけ分析しても、完璧に予測を立てることは不可能です。マネージャーとしてレベニューマネジメントを行う場合、広い視野を持つこと、成功しても失敗しても検証・考察・改善を継続していくことが大切になります。

    日本でも広がりつつあるレベニューマネジメント

    笑顔の男性のホテルマン

    shutterstock/stockfour

     

    レベニューマネジメントは、顧客の需要を正確に見極めてそれに応じた価格を設定し、販売を制限する手法です。これによりホテル側の収益を拡大しつつ、顧客満足度の最大化を両立させることが目標となります。

     

    アメリカを中心に行われれてきた手法ですが、近年では日本でも積極的に行うホテルが増えています。レベニューマネジメントは収益に直結する、市場価値の高いスキルです。身につければキャリアアップや転職に有利なので、ぜひ習得を目指してみましょう。

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